第4話 池の悲劇
今回のターゲットは池の傍。三年生の先輩が告白しようと、いやなんかプロポーズしようと考えているらしい。
(まあ18才超えてるしな。というかこれも破局させんの?)
なんか少子化問題が輪をかけてひどくなりそうだが、これも仕事。
この学校の「池」について説明しておこう。
ウチの学校はそこそこ都会の学校だが、近くに住宅地が無く、なんなら畑中心、学校が持つ土地も広い。というわけで学校は「もっと都会っ子に一次産業、二次産業について知ってもらおう」と考えた。
余っていた土地を三分割し、東に池(海水の生簀もある)、西に畜産用の土地、中心地点に畑と加工場がある、という配置だ。
で、件の池には観賞用の美しい日本庭園のような池もあり、そこで告白するようだ。さっき『クリアブレイン・コンタクト』で見たところ、せっせと部活の合間を縫ってバイトをし、その金でダイヤは付いてはいないが指輪を買い、今日に至るらしい。
(ご苦労なこって。ま、その幻想は俺が壊すけどな)
いやーなかなかにゲスい。我ながら。
(おっとお相手も現われましたね)
確か男性先輩が剣道部、女性先輩が女子バスケ部で、前から接点があってもうカップルになってたんだっけ。
え?なんでそんなに知ってるかって?
それはね、この『恋愛年表』を使ったからさ!これを使うと見た人の恋愛経験をその場で見れる優れもの!クラスで冷やかすときにすんごい有効!
(さーて、今回もお得意の『
「お前の事が、好きなんだ!卒業したら結婚してくれ!」
(どストレートだな。んじゃ相手の返事を罵詈雑言の嵐にしてっと)
うっしきっちり罵詈雑言!さあこれでメンタル寄せ豆腐に
「俺は知ってる!大嫌いの裏返しは大好きだと!」
あああど畜生何なんだよこの防弾ガラスメンタル&クソポジティブゥゥゥゥゥ!
何!?剣道部だから打たれ慣れてるの!?常に面に一発!?
てかあの曲で大嫌いを裏返しても大好きは無いって言ってただろぉぉぉ!!
でえいくっそアレを使うか!?でもアレは本気でヤバい時だけって言われてるし・・
(今この場にある物・・・水?)
水はやめておこう。死ぬ可能性がある。
(・・・魚!!)
いるじゃん、心強い仲間!しかし、どう動かす?
(・・・やってみるか)
両手を合わせて願う。魚よ、我が崇高な使命の為に、手伝ってくれ!
(いけ!『
「だか、ら・・・?」
なんか、池と生簀から、半端ない音が聞こえるんだが・・・
バッシャアアアアアアアアアアン!!!
うおお魚の噴水や!えーと、鯖、鰯、鰈と鯛!
しかもあのカップルに向かって行ってる!
「う、うわああ!」
「ちょ、鯉、鯉が!!」
しかも池の錦鯉までもが洪水となって押し寄せる!
「ははは!荒れ狂え魚達!あのカップルに天誅を!!」
俺の号令に合わせ、魚達はあのカップルの元へ。
「「い、いやああああああああああああああああああああああ!!!!」」
指輪も放り投げて逃げる二人。もう結婚の話どころじゃ無いな。
・・・ところで魚達、俺の為に命を賭してまで・・・
お前らの事、俺は忘れないからな!
※魚達は俺や水産課の生徒達が美味しく頂きました。
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