2時間目 1
「はあっ…はあっ………」
大塚は息を切らしながらもその声をなるべく抑えようとしていた。
あの場から死に物狂いで逃げてなるべく離れた教室の中の壁際まで逃げ込んだ。
一緒に連れて来た女、名前は川島。確かバレー部員だった。大塚が無理矢理引きづる様な形で連れて来た為服は埃や血で結構汚れてしまったが。
「……大丈夫か?」と尋ねると彼女も息を切らしながらもか細い声で「うん…」と言った。
いつまでもここにいても安全とは言い切れない。ましてやこっちは床に血を付けながら走って来たのだ。居場所を教えてる様な物だ。はっきり言って状況は絶望的だ。黒板に書いてあった通り、殺人犯がいた。それも非常に凶悪なサイコパスが2人もだ。
「……いいえ、全然大丈夫じゃないわ。もう嫌!どうしてこんな事になったの?私は仕事終わりに飲んで電車の中でうとうとして目が覚めたらここにいて、元クラスメイトの男子が2人窓から落ちて死んで、今度は目の前で友達2人が殺された!うう……美咲…春奈…久しぶりに会えて、あんな状況でも嬉しかったのに…あの子たちが一体何をしたっていうのよ…私たちが一体何をしたって言うのよ!」
「よせ!静かに!」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら喚く川島を何とか静かにさせようと大塚は必死だった。しかし無理からぬ事だった。
「いいか?いつまでもここにはいられない。とにかく脱出しなければならない。下の階に降りれば、窓からだって出られるはずだ。移動するぞ」
「でも…またあいつに会ったら?」
神崎の事だろう。
「出来れば逃げたいが…何か、武器になる物でも無いかな?」
そう言って辺りを見回してみた。すると、1つの机の中に何か入っている事に気が付いた。その席の生徒が置いていったのだろう教科書類と筆入れだ。中を見てみると、各種ペン類と消しゴム、それに定規、スティックのり、シャーペンの替え芯、そしてハサミが入っていた。
大塚にはこんなハサミが今だけはゲームの中で剣を手に入れた様に感じた。ひのきの棒じゃなくて良かった。
他の机も物色してみると、幸いもう1人置き勉してる奴がいて2本目の剣(ハサミ)GET。人ん家に勝手に上がって勝手にタンスの中身取ったり壺を割っていく冒険者みたいな気分だ。
本来なら窃盗罪だが今は非常事態だ。大体置き勉してる奴が悪い(今は感謝)。大塚はハサミを1つ川島に渡した。
時計を見ると現在時刻は1時13分。
2人は意を決して慎重に廊下へ出て下の階に降りる階段へと向かって行った。
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