1時間目 2
教室内は騒然となった。
慌てふためく者。悲鳴を上げる者。泣き出す者。怒り出す者。
大塚も動揺を禁じ得なかった。
「うっせーぞてめーら!」
途端に室内は静まり返った。
怒鳴ったのは高坂だった。
「チッ!ったく…イライラするぜ。てめえら今度ぎゃあぎゃあ騒ぎやがったらぶっ殺すぞ!」
その言葉に誰も反論出来なかった。
「で…でもよう高坂。どうすんだよ?これから」と男の1人が聞いた。こいつは山口。かつて高坂の腰巾着として一緒に悪さしてた奴だ。所謂「虎の威を借りる狐」だった。
「ああ?決まってんだろ。さっさとこんなとこ出るんだよ。いつまでもてめえらとこんなとこに閉じ込められてるなんて冗談じゃねえ」
「出るったってどうやって…うっ!」
山口は高坂に腹を殴られて無理矢理黙らされた。
「うぜえ、喋んなカス」
そう言うと高坂は教室内を歩き回り調べ出した。その間誰も高坂の逆鱗に触れまいと口を閉じ石の様にその場にじっとしていた。
「あん?ここ開くじゃねえか」
そう言って彼が開けたのは教室の右側の壁の下。小さな引き戸が付いた部分だった。
1人ずつだがここから廊下に出られそうだ。
「着いて来てえ奴は勝手にしろ。ただし俺の気に障ったら殺す」
そう言って高坂は小さな穴をくぐって出ていった。
他の者たちもそれに続いて恐る恐るくぐって行った。
「む、無理だ!あんなとこ入れない!」
と、そこで声を上げたのは井上という男だった。所謂大食いキャラだった。彼の姿を見たらその言葉の意味が分かった。太っているのだ。一体どんな食生活を送って来たのか、20代前半にしてその腹は中年のそれだった。
「頼む…みんな、俺を置いていかないでくれ!」
周囲の皆は、彼を気の毒に思ったが、それでも一人、また一人と穴をくぐって行く。
「杉田!大塚!助けてくれよ!」井上は目に涙を浮かべて必死で訴えた。
「……」
しかし、他に出られる場所は無い。窓からなら出来なくもないが、その選択がどれだけ危険かは先ほど藤田が身をもって証明したばかりだ。
時刻は0時25分。黒板に書いてある事がまだ真実とは信じきれないがのんびりしている暇はない。
「…いいよ、もう。みんなは、そっちから行ってくれ」
そう言うと井上は窓に向かって走った。
「お、おいっ!」
2人が止めようとしたが遅かった。
井上は窓の外に出て、そして、すぐにバランスを崩して
落ちた
あまりにもあっけなく、2人目の元クラスメイトが死んだ。
24-1=23
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