14 では、この起請文にサインを
「例え、
「おいおいおいっ!そんじゃ何か?俺の娘は、この手紙どおり死んじまってもしかたねーってのかっ?」
先程までの、高天原勤め仕様の言葉遣いは、息をひそめ、
「では貴方は、貴方の娘の為に、それこそ何一つ咎を受けるべきでない一言主が、“
高木の言葉は、八咫烏にグサリを刺さり反論の言葉を奪った。
そうなのだ。一言主は、ただ天照から頼まれた“おつかい”をしただけなのだ。幼い彼に、ホ……が、人体のどこを指す言葉なのかも、よくは解ってはいなかっただろう。
八咫烏は、崩れる様に膝を折り、へたり込んだ。
(ちくしょう。こうしてる間にも葦原中国は時を刻み、娘を育み、妻を衰えさせているってーのに…一体、俺は、何をやってるんだ)
八咫烏は神である為、時間軸は高天原の住人達と同じだ。天孫である瓊瓊杵に寿命が刻まれた事で、その影響下に置かれるかもしれないが、それでも長寿だろう。
しかし、彼の妻の
(こんな結果になるのなら、一秒でも長く娘の側にいれば良かった。妻と一緒に遊んでやれば良かった)
そんな後悔が、八咫烏の脳裏をぐるぐると駆け巡っていた。
「しかし、八咫烏。娘さんには罪が無い。という、貴方の主張も最もな事です。そうですよねぇ。罪を贖うのは娘さんではなく、貴方でなくてはいけません」
高木は、先ほどまでとはうって変わって、八咫烏の発言を肯定した。一言主の擁護をしていた時の厳しい表情をがらりと変えて、今は、穏やかな優しい顔をしている。
「そんな貴方に一つだけ、娘さんを救う方法があります。ああ、もちろん。それが上手くいくかどうかの保証はありません。ですが、まぁ。やってみる価値はあると思いますが、どうでしょう?」
どうでしょう?も、何も、無かった。ほんの僅かでも娘の厄災を除く事ができるのであれば、八咫烏が拒否する理由など、一切、無かった。
「高木様。俺は、何をすりゃぁ、いいんですか?」
怖いのは時間である。いくら、その方法が正しかったとしても、娘の身に祟りが実行された後であったなら、目もあてられないのである。
「まぁまぁ。落ち着いて」
高木は、焦る八咫烏をなだめると、文机と椅子を用意し、木板ではなく一枚の紙を取り出した。
「では、八咫烏。先ずは、この起請文に署名をお願いします」
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