第29話 爆発物処理班な幼馴染
数分後。
一時的に控室の人払いをした後、早速捜索を開始した。
「それじゃあ、爆発物とやらを探しましょう」
「どうやって探すんだ?」
尋ねると、彼女は「ふふん」と得意げに鼻を鳴らして帽子のツバを人差し指で持ち上げた。
「この私を誰だと思っているの?」
「……居候?」
「ねえ、クロ。私、王女よ。前々から思っていたのだけれど、お前は私の扱いが雑すぎると思うの」
「けど間違ってないだろ?」
ルーシアはたしかに王女だけれど今は僕のうちで居候しているわけで、概ね居候という肩書きは間違っていない。
しかし、当の本人はこの肩書きが気に食わないみたいで不満げに唇を尖らせている。
「クロはもっとこの私を敬いなさい」
「それは無理だろ」
幼馴染なだけあってルーシアの良いところも悪いところも知り尽くしているのだから、今更敬えと言われても無理な相談というものだ。
そう説明するものの、やっぱりお気に召さないみたいでルーシアは頬を膨らませた。
「むぅ……。まあいいわ。この件は帰ってからじっくり話し合いましょう。ギロチン台の前で」
「……プリンを作るので食卓の前で話し合いませんか」
「いいわ」
許された。
僕の幼馴染は平常運転でなによりである。
閑話休題。
ルーシアは顎に手を当てて控室内をぐるっと見回す。
「ふむ……分かったわ。あそこにあるわ」
彼女は人差し指を控え室の奥にある柱へ向けた。
「僕もなにか仕掛けるならあの柱だと思ってた」
「……負け惜しみ?」
「違う」
違うから、そのドヤ顔をやめろ。張っ倒すぞ。
僕とルーシアは爆発物が仕掛けられていると思われる柱に近寄って周りを調べる。
すると、柱に紙が貼られていた。
「なんだこの紙」
「……スクロールね。魔法の力を封じ込めた紙よ。魔力をスクロールに流すとスクロールに封じ込められた魔法が発動するのよ」
「魔法のことはよく分からないな」
こういう分野に関しては、普段アホっぽいルーシアの頭が数割増でよく見えるからすごい。
「見たところこのスクロールは時間差で魔法が発動する作りになっているわね」
「時間差……?」
「ほら、スクロールに書かれているものを見なさい。迷路みたいになっているでしょう? これは魔法回路といって……」
「悪いが説明されても分からない。簡潔にまとめてくれ」
「……もう魔力が流されていて数十分もすればスクロールに封じ込められた魔法が起動するわ」
「起動するとどうなるんだ?」
「爆発するわ」
「マジか」
「マジよ。このスクロールに封じ込められている魔法は『ダイナマイトン』ね。コンクリートの柱なんて簡単にぶっ壊せるわ」
「なんとかする方法は?」
「ふふん。私を誰だと思っているのかしら?」
「……居候?」
「ねえクロ。さっきから言っているでしょう? 私はルーシア・トワイライト・ロードよ? この程度のスクロールを無力化するなんて簡単よ」
「頼もしいな」
「早速やるわ」
ルーシアはスクロールに手を触れる。
すると、バチバチと小さな電気がスクロールと手の間から迸った。
魔法に詳しくない僕はハラハラした。
なにか手違いでもあって、ドカン――とかならないだろうか。
「なあ、ルーシア……」
「そんな心配そうにしなくても大丈夫よ。あと少しで……あ」
なにが「あ」なのだろう。僕は嫌な予感を覚えた。
直後、スクロールがピカーンと輝いて――僕は咄嗟にルーシアへ飛びかかり、彼女を守るように地面へ押し倒した――!
刹那――ドンッ!
という爆発音が轟いた。
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