閑話02 マレーラの農業体験
「ま、こんな感じかな」
農具のクワを背負ったマレーラは、自分の手で創り上げた畑を満足顔で眺めながらウンウンと頷いた。
ここはダンジョン内にある、これから農地にしていく場所。アズーラと相談して、ダンジョン内で農業をするのに適している場所を相談して決めた。そこにマレーラはクワを入れて、畑を耕した。
まだ農地とする場所の一部分だけしか耕していないが、これからどんどん拡張して大きくしていく予定だった。まずは、ちゃんと作物が育つのかどうか実験するために用意した畑である。
「あとは、作物を植えて育つかどうかね……。よし、やってみよう」
これが無事に成功すれば、ダンジョン内部の食糧問題が一気に解決する。アランに頼まれて張り切るマレーラだった。
オーク種のモンスターである彼女や、彼女の仲間は今までずっと戦いに明け暮れるというような日々を過ごしてきた。
レベルを上げて強くなっていかないと、この世界では生き残れないから。
しかし、アランと出会ってマレーラ達、オーク種の常識は変わった。倒さなくても訓練で鍛えて、強くなれる。
生きることに余裕の出てきたマレーラ達は、ものづくりにハマっていった。
ちょうどダンジョン内部に色々な拠点を作るために労働力が必要になった。そこでオーク種のモンスター達は大活躍した。戦い以外で楽しみを見出していた。
それから、どんどんとダンジョン内のモンスター村作りがマレーラの指揮のもと、進行していった。
モンスターの住処が出来上がって、生活の道具を作り出して、次は農地というわけだった。
「ちゃんと、育つかしら」
マレーラは、丁寧に一つ一つ心を込めて種を植えていく。
アランが街に行って購入してきてくれた種や、近くの森の中から入手してきた種を色々と植えて試してみる。
ダンジョンに備わる機能により、地上じゃなくても植物が育てられるという場所。魔法的な効果が施された特別な土壌により、作物が成長するスピードがもの凄く早くなっている、とアズーラから話を聞いていた。実際にどうなのか、試してみる。
地下の中でも農業をできるなんて。さすが、ダンジョンドラゴンの手によって作られたダンジョンだな、とマレーラ達は驚いた。そして、色々とこの畑で試してみようと考えたのだった。
***
「お、育ってるわね! スゴイ!」
マレーラが何日か畑の世話をしていると、すぐに土の中から芽が出てきた。植えた種が、ちゃんと成長していた。地下の中でも作物を育てるのに問題はない、という事が分かった。
作物を枯らさないように注意しながら、水をやり毎日様子を見る。みるみるうちに成長していく作物を見るのが楽しみになったマレーラ。
マレーラにとって農業するのは初めての経験だったので、分からないことも多く、失敗もあった。だがしかし、諦めずに作物の栽培を続ける。何度も試行錯誤をして、農作業を続けた。
「これで、収穫してもいいのかしら?」
こうして、畑一面に数々の作物がひしめき合うようにして立派に育っていた。栽培に成功した作物が両手いっぱいに、たくさん収穫できた。
自分で作った初めての農作物を収穫した時には、すごく感動したマレーラだった。それから、どんどん農業にのめり込んでいく。
手の空いた仲間達と協力して、栽培と収穫を繰り返していく。毎日、色々と学びを得て農業についての知識を深めていった。
ようやく、納得のいく作物を栽培することに成功したマレーラは、アランに報告をする。
「これが、マレーラの作った?」
「そうです。どうかな?」
アランの目の前には、マレーラが栽培した農作物が並べられていた。いくつか種類がある。
一つ、また一つと手にとって目で見てじっくりと確認するアラン。口にも入れて、しっかり味を確認していった。
「うん。立派に育ってるね。これは、みずみずしくてシャキシャキとした食感に甘みがある。こっちは、うまみがあって美味しいよ。コイツは味わい深くて、料理とかに使えそうだね」
アランから良い評価を得て、マレーラは嬉しかった。自らの手で苦労して作った物だから思い入れもあって、喜びもひとしおだった。
「モンスターの皆にも、食べさせてあげよう」
「えぇ。それが良いと思います。私も嬉しいです」
ダンジョン内に引きこもっていて、マレーラのお陰で食糧問題を解決できる方法に目処がついた。
「ありがとう。マレーラの農業は上手く行っているね。引き続き、お願いするよ」
「はい。任せて下さい!」
アランからの指示を受けて、マレーラは更に畑を大きく拡張していった。農作業を請け負うモンスター達も増えていって、作業スピードがアップする。どんどんと栽培されていく農作物。
さまざまな方法を試し、もっとおいしくて、いろいろな種類をたくさん収穫できるようにマレーラは工夫を重ねていった。
こうしてダンジョン内でも、新鮮な野菜を収穫出来るようになった。そして現在、マレーラ達の栽培した作物がダンジョンの中で流通し、非常に人気となっていた。
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