第40話 諦めない勇者
初めて、ここにあるダンジョン内部に侵入してきた勇者アルフレッド達。その勇者アルフレッドが率いるパーティーを、何の問題もなく追い返すことに成功していた。
その日から、ほとんど毎日のようにアルフレッドが2人の仲間を引き連れてきて、ダンジョン内に襲撃しに来ていた。
「仲間を奪った恨みを晴らすまで!」とアルフレッドは言って、何度もダンジョン内部に侵入してくる。実は生きているけれど。
「死んだと思われているようだけど、彼らの前に姿を見せなくていいのかい?」
勇者パーティーの情報をシェアに伝えた。休息をとって回復した彼女。もう帰っても大丈夫だと言ったのに、ダンジョン内に留まっていた。折角だから、彼らと一緒に街へ戻ったらどうかと彼女に問いかけてみると、首を振って拒否した。
「死んだ、と思われているのなら好都合です。あの人達とは、もう二度と顔を合わせなくて済む、というのなら本望です」
そう言って彼女は、かつて仲間だった勇者パーティーのメンバーに、顔を見せようとしなかった。
王都から命じられた任務で、各地にあるダンジョンについて調査をしている時に、よっぽど嫌だったのだろう。本人がそう希望するのなら、無理に顔を合わせる必要もない。もうしばらくは、ダンジョンに居てもいいよと許可を出す。
ということでダンジョンに侵入してこようとする彼らを、モンスター達と協力して迎え撃つ。
ダンジョンの各場所にモンスターを配置して、敵となる彼らの情報をやり取りして僕やラナが指揮して戦う。ダンジョン内部での防衛戦だ。
スライム型のモンスター集団による、数で圧倒をして返り討ちにする。
その他にも、コボルト型のモンスター達による連携した動き。
ラミア軍団の狡猾な戦い方。
オーク軍団による力で圧倒する戦い。
交代交代で、そんな戦いを繰り返し、日に日にレベルを上げていくモンスター達。レベルだけでなく、チームワークも向上していく。そうすると、ダンジョンに侵入をしてくる勇者パーティーは、徐々に奥へと進めなくなっていった。
勇者パーティーが到達できているのは、まだダンジョンの入口付近の地点だけだ。そこから先に進めていないようだった。最深部まで到達し、ダンジョンを停止させるという事は夢のまた夢。
勇者アルフレッドは自分たち、勇者パーティーの力だけでは無理だと悟り、近くの街にある冒険者ギルドに所属している冒険者達も引き連れてきて、ダンジョンの攻略をしようという作戦を立ててきた。
ダンジョンに侵入してくる人数を増やし、多数の冒険者達と協力してダンジョンの攻略に取り掛かった勇者達。
だがしかし、それでも最深部に到達することは無理だった。このダンジョンには、待機しているモンスターがまだ沢山居るので、アルフレッド達が冒険者という戦力を増やしてきたとしても、僕たちも対抗して働かせるモンスターの数を増やしていけるから。まだまだ余裕だった。
しばらくすると、僕らがダンジョンに侵入してくる冒険者を殺す気がない、ということを理解したようだった。勇者パーティーや、冒険者の中にシェア以降の犠牲者が出ていないから。そのシェアも、実は生きている。
それは僕が人間を殺さないようにと、モンスターに命じていたから。ダンジョン内にいるモンスター達は経験値を得るために敵を倒しきるという必要がない。だから、生きて地上に帰した方が僕らにとって都合がいい。
彼らが何度も諦めずに、ダンジョンに繰り返し挑戦してくれるので、戦いが増えて経験値を得る機会も増えていくから。
そんな丁度よい理由があったので、僕は人間を殺さないようにモンスターに指示を出すことが出来た。気絶をしたり怪我を負ったら回復してあげてから、ダンジョンの外にポイッと運び出しておく。
死ぬことはないと知ってから、冒険者達はかなり無理するようになった。捨て身でダンジョンに侵入してきて、モンスターの返り討ちにあっていた。
捨て身で攻めてこられても、ダンジョン内のモンスター達は負けそうになかった。負けるほうが難しいのでは、と言えてしまうぐらい余裕だった。
しかも、決死の攻撃で戦闘は激化していって、冒険者達が次々と怪我をしていく。すると、彼らのレベルがどんどん下がっていってしまう。冒険者達の戦力が下がってよりダンジョンの攻略が難しくなっていく。ダンジョンの攻略を目指す彼らにとって悪循環だった。
それなのに、まだまだ勇者は諦めないようだった。
来る日も来る日も、ダンジョンの最深部に到達する事を目指して先に進むけれど、全て失敗に終わっている。無理をするから怪我を負って、レベルがダウンしていく。ある程度、負け続けたら諦めると思っていたのに。戦闘に負けて、怪我を負いレベルがどんどん下がっているのに大丈夫なのだろうか。
「アランさん、お願いがあります」
勇者パーティーのダンジョン攻略が続いている状況の中で、真剣な表情を浮かべたシェアが、こんなお願いをしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます