第39話 今後の対応

「なるほど、そういう事だったのね」

「ワシがダンジョンを起動してしまったから、奴らを呼び寄せたということか」


「いや、仕方がないよ。あの時は、そんな装置があるとは知らなかったし。いつか、この場所も誰かにバレていただろうから問題はないよ。そもそも、起動してとお願いしたのは僕だったからね。責任があるとするなら、アズーラではなく僕の責任だ」


 シェアから聞き出した話について、ラナとアズーラにも伝えた。納得するラナと、表情を暗くするアズーラ。


 ダンジョンを起動した事を後悔するマレーラだったが、後悔する必要なんてないと彼女に伝えておく。その時の僕らは、王都にあるという装置の存在を知らなかったのだから。


 今では、モンスター達にとってダンジョンは必要不可欠な場所になっているので、起動した事を彼女が悔やむ必要はなかった。


 追求していくと責任は、ダンジョンを再起動したアズーラよりも、起動してくれとお願いをした僕の方にこそ、あるのだから。


「それよりも、これからどうしようか?」


 ダンジョンを起動した責任問題については、とりあえず置いておくとして。今後のダンジョンについて、どうしていくのか3人で話し合う。


「人間が再び、ダンジョンを攻略しに来るだろうという事を想定して、すぐに迎撃の準備を進めないといけないわ」

「今回、残念ながら出番は無かったが、ダンジョン内部にはトラップなどの仕掛けもあるから、次回から色々と使えるぞ」


 冒険者達がダンジョンを攻略しに来るだろう、という事を想定して準備を進める。今回の成果としては、戦闘に出たスライム型のモンスター達が、全員レベルを上げていた。強者との戦闘は、経験値を沢山得ることが出来るから。


 ダンジョン内部に生息しているモンスター達は、僕と同じ特性、敵を倒さなくても経験値を得られるようになっていた。戦闘を繰り返すと、どんどん強くなっていく。迎撃を繰り返すたびに、モンスター達が強化していけそうだった。


「万が一の場合に備えて、マレーラのオーク軍団に待機してもらっていたけれども、戦いに出ることなく、無駄になってしまったわね」

「スライム達が上手くコンビネーションして、レベルが相手より劣っていても全員でかかっていったのが大成功だった。犠牲なく、追い返せたのは大きい」


 襲撃してきた勇者パーティーを追い返してみた感想。シェアの話によると、勇者の称号を持つアルフレッドという人物が、この国で最強だと言われている人間らしい。そんな彼を、驚異も感じずにスライム型のモンスターだけで門前払いできた。


 これから、冒険者がダンジョンを攻略しに侵入してきたとしても、それは経験値を得るための戦闘にしかならなそうだった。


「冒険者がダンジョンに侵入してきたら、モンスター達が協力して追い返す、ということで」

「それと、マレーラ達の村作りも進行中よ」


 ダンジョンを防衛する。それと同時に、ダンジョン内部の環境も整えていく。住処はだいたい完成したそうなので、次は畑を作って食糧問題を改善していく。


「後は、ダンジョンの中もしっかり調べておかねばな」


 実は、まだダンジョン内部で探索できていない場所もあるので、探検隊を結成して調査しに行く予定もある。このダンジョンは、まだまだ調べきれていないぐらい広大だった。


 色々と処理していかなければならない、仕事がたくさんあった。




 そして、もう一つ。今のうちに処理しておいた方がよさそうな問題があった。僕はローズマリーを呼び出して、彼女と話し合う。


「おそらくアルフレッド達、勇者パーティーと呼ばれている彼らを、ダンジョンから追い返した事で街の人間は、僕らのダンジョンがある場所を知ることになるだろう」

「そうね」


 ローズマリーにも、ダンジョンの状況についてを詳しく伝えていた。それで、これからどうするか問いかける。


「つまり、君が外に情報を漏洩しないように拠点で軟禁しておく必要がなくなった。ということだけど、どうする。君は街に戻るかい?」


 街から帰る僕の後を尾行して、ダンジョンのある場所を突き止めたローズマリー。その時は、ダンジョンのある場所を街の人間に伝えられると色々と問題があったから彼女を囚えて情報が外に漏れないように軟禁していた。


 それから、しばらく経ってダンジョンの機能の調査も終わり住処づくりも進んで、侵入してくる者達の迎撃を問題なく行える事を今回、確認できたから。そして、もうダンジョンのある場所も街の人間に伝えられただろう。


 ローズマリーを、これ以上は拠点に軟禁しておく必要がなくなった。なので、彼女を解放する。その後、どうするのか彼女の判断に委ねた。


 そしてローズマリーは、こう答えた。

 

「もちろん、”いいえ”よ。いまさら、街に戻る必要はないわ」


 予想していた答えが返ってきた。念の為、確認してみただけで居続けるだろうなと思っていた。とはいえ予想通りで、安心した。


「そうか。改めて、ようこそ」

「これからも、よろしくね」


 僕と彼女は握手を交わして、改めてローズマリーを仲間の1人として迎え入れた。

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