第21話 モンスターの保護
各地で冒険者に虐殺されているというモンスターを、とりあえずダンジョンの中に保護することに決めた。そして街へ行ってみて、なぜ冒険者がモンスターを虐殺して回っているのか理由を探ったほうが良いだろう。
何が起きているのか、知るまではモンスター達を保護する。
モンスターが可愛そうだからと思って保護するなんて、全てを救えるわけでもないし、傲慢で偽善行為なのかもしれない。
助けようとしているモンスター達からは、救うだなんて余計な手助けだと思われるかもしれないし、人間に対する反逆行為だと言われるかも。
だが僕はモンスター達を保護すると決めたので、誰に何を言われてもそうしようと思った。虐殺されていると聞いて、無残に死んでいくのを見過ごすことは出来ない。なんとかして阻止したいと思ったから。
とにかく、まずはメラルダやラナ、コニーに他のモンスターの仲間達にお願いして拠点の近くに生息しているモンスター達を説得して、ダンジョンの中に連れてくる。
モンスターとは話し合って、危険を伝えて移り住んでもらうことに。強制ではなく話し合いを大事にする。
それから、モンスター達を保護している最中に人間と出会った場合には極力戦いを避けるように言う。でも、やむを得ない場合には反撃をするようにと許可を出した。ただ、人間は殺しちゃダメだと言い聞かせる。
僕がみんなに指示を出すと、近隣に住んでいたモンスター達が続々とダンジョンの中へ、移動を始めた。
***
「モンスター達の保護は、順調?」
「えぇ。予定通りに進んでいるわよ、アラン」
側に立つラナに問いかけると、思った通り進められていると良い答えが返ってきたので、僕は安心する。
メラルダとコニーの働きがあって、スムーズに保護を受け入れてくれた。
モンスターの多くが、冒険者を脅威に感じていたらしい。
「あと、どれぐらいで完了するかな?」
「アランが指定していた範囲に住んでいたモンスターは、ほぼ移住が終わったわよ。あと一日程で、全て終わると思う」
「それはよかった。ありがとう」
街の周辺と僕らの居る拠点近く、その辺りに住んでいたモンスター達を保護した。そこから、もっと遠く離れた範囲についてはどうするのか。冒険者が、居なくなったモンスターを探し求めて遠くへ行って、虐殺を止めないようであれば保護する範囲を更に広げようと考えていた。
危険を伝えて、連れてきたモンスター達をダンジョンの中に避難させる。危険な目にあって、なんとか逃げ込んできたモンスターも居たので、一緒にダンジョンの中に招き入れた。
「住む場所は、十分かな?」
「マレーラが請け負ってくれて、オーク種が協力して住処を作ってくれているわ」
先に引っ越しをして、新しい居住地の準備していたマレーラ達。ついでに、ということで新しく入ってくるモンスター達の住処を作るのにも快く協力してくれていた。タイミングも良かった。
「ダンジョンを探索しておいて、本当に良かったよ」
「えぇ、そうね」
ダンジョン内部は異常なほど広くて、最深部に続く道以外に進むと、迷路のように広がる洞窟や空間が地下にずっと続いていて、外で生活をしていたモンスター達が中にどんどん移住してきても、まだまだダンジョン内部の場所に余裕があった。
まさか、ここまでダンジョンドラゴンの残してくれたというダンジョンを活用することになるとは、思っていなかった。本来のダンジョンが造られた目的とは、違った使い方をしているかもしれないのだが、有効活用させてもらおう。
ダンジョンの最深部にいるアズーラからの報告によると、ダンジョン内の環境調整については、だいたい完了しているという。最深部にあるシステムの設定を調整したことによって、モンスターが快適に過ごせるような場所になっていた。
まだ色々と分からない機能もあるそうなので、ダンジョンを安全に使うのならば、念の為に調査が必要という。予想外な出来事によって、思っていたより沢山の住民が増えてきたので、危険が無いように調べておいたほうがいいだろう。
なのでアズーラにお願いをして、最深部に籠もって更に詳しくダンジョンについて調べてもらっていた。
最近ずっと、ダンジョンの事についてはアズーラに任せっぱなしで申し訳ないとは思いつつも、ダンジョンの事について一番に理解しているのが彼女だったので、全て任せてしまう。
アズーラには、モンスター達の保護が完了した後に、頑張って働いてくれたお礼をしないといけないだろうな。
こうして僕たちは、近隣に住んでいたモンスター達をダンジョンの中に移動させて保護は完了した。
森の中が静かになって、立ち入ってくる冒険者たちもモンスターが居なくなった事に困惑しているだろう。
そして次に、なぜ冒険者達がモンスターの虐殺に至ったのだろうか、理由を探る。情報を集めるためにも、僕は再び街へと戻ることにした。
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