第14話 移住
ダンジョン内の探索を終えて、新しい居住地として良さそうな場所を発見した。
場所について地上で生活していたモンスター仲間達に教えると、知らせを聞いた皆その場所へ移り住むことにしたと聞いた。僕は、実際に引っ越しを行っているという現場の様子を見に来てみた。
「アランさん」
「ん? やぁ、マレーラ」
引っ越しが行われているという場所に見に行くと、女性に声を掛けられた。彼女の名はマレーラ、オーク種のモンスターが人化した姿で、背がとても高くて、体が引き締まっている綺麗なボディを持つ女性だった。そのくせ種族の特性なのか、ほとんど裸に近いような恰好なので目のやり場に困る。
だから、僕は彼女と会話をする時は見上げて顔だけ見て話すように意識している。
「皆の様子はどうかな?」
「新しい居住地にワクワクしていますよ。そして引っ越しの準備を、皆で一緒に進めています」
彼女の言う通り、オーク種だけでなく植物系や精霊系のモンスター仲間達も協力し働いている様子が見える。特に、オーク種のオスモンスターが率先して働いている。木を切って、大きな丸太をそのまま力強く肩に担いで、ダンジョンの入口がある方向へと運んでいる。
あれを建材にして、これからダンジョン内部に皆の新しい住処を作っていくという予定だった。
「あんなに広い場所を用意していただき、ありがとうございます!」
「ごめんね、今まで場所の用意が遅れてしまって」
ダンジョン内部は、かなり広かった。もともと生活していたモンスター達の住処を奪わないように注意して、それでも自由に使える場所が沢山あったので新しい居住地にはピッタリだった。
僕がモンスター仲間を集めて、人間たちから発見されないよう隠れて生活する拠点にしていた森にモンスターの数がどんどん増えて、生活するための場所が狭くなってきていた。これ以上は、拠点を広げていくと人間に察知されるかもしれない。
拠点に住むモンスターの皆からは、移住出来るような場所は無いかと以前から相談を受けてきていた。
偶然にも、ダンジョンというモンスターの住処にするのにちょうど良さそうな場所が見つかったので、それを伝えることが出来た。もっと早く探索しておくべきだったなと思う。
新たな居住地に出来る場所の発見が遅くなってしまった事について謝ると、彼女は両手を振って、とんでもないと否定する。
「いえいえ、そんな! 謝られるほど私達は待っていませんし、アランさんが新しく見つけてくれた居住地にみんな、大喜びですよ」
「それはよかった」
「ダンジョンの中も住みやすくて、とてもいい場所です」
「アズーラが、しっかりと管理してくれているからね」
もともと、モンスターを住ませるようにドラゴンが作ったというダンジョン。
外敵の侵入を防ぐ危険なトラップだけ停止して、水源や内部環境を最深部で色々と管理が出来るので、住みやすい場所になっている。
調整することで更に住みやすい環境にできるようなので、どんどん皆の意見を取り入れながら理想の住処を作っていきたい。人間にとっても過ごしやすそうな場所なので、ダンジョンの中に場所を探して僕も生活できるような家を作ってみようかな。
湖畔に建てた、あの小屋から引っ越すのも良いかもしれない。
「これから冬に向かって寒くなってくるから、その前に引っ越しを完了させたいね」
「はい。そうですね」
冬の季節も近付いてきていた。
皆、張り切って協力しながら動いているので作業スピードが非常に早い。だから、冬になる前には仲間の皆が生活するのに十分な拠点が出来上がっていそうだ。
去年は、冬を過ごす間はずっと寒くて苦労していたから。今年は、ダンジョンの中で過ごせたら気温で悩まされることは少なくなりそう。
マレーラとモンスター達の拠点の引っ越しについての会話しながら、冬についても考える。冬になると食料確保が難しくなってくるから、拠点には薪や食料を貯蔵しておきたい。ダンジョンの中は快適そうだけど、念の為に用意しておきたかった。特に食料の準備が必要かもしれない。
となると、やっぱり街へ買い出しに行かないといけないか。でも、行きたくないとまだ拒否感を持っていた。
冒険者として活動していた近くの場所以外にも街はあるけれど、山を超えたり距離が遠くて行くのに時間が掛かるし、なにより面倒だった。
この森に仲間達の拠点を作ってしまい、今度はダンジョンという住みやすい場所も見つけたので、今更ここから離れて新しい拠点となる場所を探しに行くのも面倒。
人化したモンスターの誰かにお願いして街に買い出しへ行かせてみる、という方法についても考えたけれどバレた場合が怖い。スキルを使われると、正体を見破られる可能性もあるので彼女たちを街に近づけさせたくなかった。
ということは、やはり僕が一度、街に戻る必要があるだろうな。
街に買い出しに行くだけなので、問題はないと思う。冒険者ギルドには近づかないようにして、集めた素材を商業ギルドに持ち込んで買い取ってもらい換金する。
食料、薪など生活に必要なモノを買い込んで、さっさと用事を済ませて戻ってきたら何も問題は起きないと思う。
コニーや他のモンスター仲間と協力して集めた素材が沢山溜まっているので、換金しておきたい。そのお金で、冬支度を進めよう。
こうして僕は、冒険者として活動していたあの街に、越冬の準備をするために一度戻ってみようと決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます