第12話 ダンジョン最深部

「あった、ここが最深部のようじゃ」


 前を進んでいたアズーラが行き止まりに到着すると立ち止まって、この場所が一番奥だという事を皆に知らせた。僕らも立ち止まり、辺りを見回す。


 神殿のような神々しさのある場所、祭壇があって周りに柱が立っている。地面までしっかりと舗装されていて、今まで進んできた洞窟のような土の壁とは違っていた。ここが最深部なのか。


「やはり」

「どうしたの? アズーラ」


 祭壇に上がって、手元で何かを操作していたアズーラ。声を上げ、納得したという表情を浮かべているので問いかけてみる。すると彼女はここのダンジョンについて、詳しく説明してくれた。


「見たことがあるような気がするダンジョン内部だな、と思ってたら奴が造った場所だったみたいだ」

「知り合い?」


「ダンジョンドラゴンと呼ばれていて、その名が示す通り各地に数々のダンジョンを造って回っていたと、そこそこ有名ドラゴンだった。ワシは一度も会ったことは無いがな」

「へぇ、そんなドラゴンが居るんだ」


「今、世界中に有るダンジョンの約半分は奴の作品だと言われておるな」

「そんなに沢山!」


「最期は、ダンジョン造りに満足して亡くなったと聞いた。それが500年ほど前の出来事じゃ」

「世界半分の数も造ったのなら、そりゃ満足して死を迎えられそうだなぁ」


 ダンジョンドラゴンと呼ばれていたらしい、そのドラゴンが造ったという場所を

眺めながらアズーラの話を聞いた。芸術家の作品を見るような、美術鑑賞をしているような気持ちになる。


 機会があれば、ダンジョンドラゴンが造ったという他のダンジョンについても見に行けたらいいな。


「それで、どうするのじゃ?」

「どうする、って?」


「このダンジョン、今は停止中のようだが再起動が出来るぞ」

「ダンジョンの再起動?」


「うむ」

「それって、どうなるの?」


 僕は、アズーラにダンジョンに関する説明を受けた。と言っても、彼女もそんなに詳しく知っているという訳ではないらしくて、大雑把な説明だったが簡単に言うと、外部からの侵入者を排除するという機能、内部で快適な生活を出来るようにする機能の二つがあるけれど、今はどちらも停止中だという。


「なら、ダンジョン内で快適な生活ができるって機能だけ起動できる?」

「了解じゃ。危ないトラップは停止のまま、水源管理と植物環境を活性化させる」


 アズーラが手元にある魔法的なウィンドウを操作して、ダンジョンを起動してくれているようだ。しかし僕はふと、気にかかることが思い浮かんで、彼女に起動しようとしている所を止める。


「あ、チョット待って。もともと生活していたモンスターにとっては、内部の環境が変化したりすると困るかも」


「なるほどな。ならば、徐々に変化させていって様子を見るというのはどうじゃ?」

「そんな事も出来るのか。じゃあ、それで様子を見てみよう」


 今までずっと停止状態だったらしいここのダンジョン。そこでモンスターも生活を送っていた。


 だから、徐々にダンジョン内部にある環境を変化させていってモンスターの生活が激変しないように、負荷をかけすぎない程度に調整してダンジョンを起動していく。そういう事も、操作によって可能らしい。


「これで、多分大丈夫じゃ」

「ありがとう、アズーラ」


 アズーラには、引き続きダンジョンの管理を任せる。


「メラルダは、もともとここで生活していたモンスター達に変化が無いか聞き込みに行ってもらえる?」

「うん、わかった! 任せて」


 アズーラが戦ってボコボコにして、メラルダが傷ついた体を回復して進んできた。マッチポンプのような感じで、仲良くなったモンスター仲間がたくさん増えていた。そうやって、もともとダンジョン内にあったコミュニティに上手く入り込んでいったメラルダ。


 そんな彼女に、ダンジョンの変化したことによって問題が起こっないないか観察をお願いする。


「ラナは、ダンジョン内に移住できそうって、さっき話してたモンスター達に説明をしに行ってくれるかな」

「わかったわ。任せて」


 地上にある森の中で暮らしいてた仲間達には、ダンジョン内部に移住するようにとラナに説明しに行ってもらう。彼女が一番、みんなの生活や住処を把握しているようなので、お願いした。


「コニー、僕たち2人はさっき見つけた回収できそうな素材を持ち帰りながら地上に戻ろうか」

「ハイッ!」


 元気よく返事をして、僕に付き従うコニー。

 奥に進んでくる途中で見つけた数々の鉱石。

 ダンジョン内で縄張り争いをしたのか、捕食しようとしたのか、モンスターの死体も転がっていたので素材として有効活用させてもらう。


 モンスターを殺すことは嫌だけど、死体を放置することも嫌だった。


 火葬や埋葬をして弔ってあげたほうがいいかなとも考えたが、モンスターの死体は革や骨など活用できる部分が非常に多くて、求めている人も多いから素材として活用させてもらうことにしていた。


 僕が冒険者だった頃にも、放置されていた死体を回収してギルドに納品していた。


 ダンジョンで回収した鉱石やモンスターの素材等は、街に持って行っていかないといけないな。やっぱり、一度街に行かないとダメか。


 冒険者達には顔を合わせたくないし、持っていくなら商業ギルドか、もしくは職人ギルドだろうか。


 そんな事を考えながら、僕はコニーと一緒に地上へ戻りながらダンジョン内にある有用な素材を次々と回収していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る