第11話 ダンジョン内を散歩

「さぁ! 誰でもかかってこいッ!」

「あはは!」


 先行するのは、アズーラとメラルダの二人。アズーラは、ダンジョン内に響き渡るほどの大声を上げて楽しそうに笑顔を浮かべていた。そして、ダンジョン内に潜んでいるであろう、モンスター達を呼び寄せ戦いを引き起こそうとしているようだった。


「アズーラ! あまり、やり過ぎないようにね」

「うむ、わかった。気をつけるぞ」


 彼女には、戦いを挑んでくるモンスターには致命的なダメージは与えないようにと前もって注意を促しておく。勝ち負けが決まるか相手が降参したら、とどめを刺さず見逃してあげて解放するようにと言ってあった。


 僕と同じようにアズーラも、モンスターを倒しきらなくても経験値を得られるようになっていたから。相手を倒してしまうよりも、見逃して再戦を待ったほうが何度も繰り返し戦闘が出来るので効率がいい。


 特に相手が強者だった場合なら経験値も沢山得られるので、倒しきって一回きりの戦闘にするよりも、何度も戦闘を繰り返し行えるようにしたほうが、レベルアップが捗るから。


 アズーラが僕と同じ様に敵を倒しきらなくても経験値を得られるようになったのは何故なのか、理由は分からない。


 この世界の常識によると、経験値を得るためには敵を殺しきらないとダメらしい。それは、モンスターの世界でも例外ではないようだった。


 しかし僕の身近にいるモンスター仲間達はみんな、僕と同じように常識を外れて、敵を倒しきらなくても経験値を得られるようになっていた。


 アズーラも僕と出会う以前は、常識として知られている方法ぐらいでしか経験値を得られなかったらしい。後は、地道に鍛え続けるしか経験値は得られなかった。


 ならば僕の身近に居る人間やモンスターが、僕と同じ様になるのだろうか。


 だがしかし、昔に自分の特性について気付いた時に僕は、村の人達にも教えてみたけれども、その時は身近にいる人達が僕と同じ様にはならなかった。戦闘訓練してもごく僅かな経験値しか得られなかった。別の条件があるのだろうか。


 よく仕組みは分からないけれども、とにかくアズーラは僕と同じような特性を身につけた。戦闘を繰り返して、相手にトドメは刺さなかったとしても経験値を得られるようになって、次々とレベルアップしていった。


 一番先頭を進むアズーラの後ろには、メラルダが笑い声を上げて楽しそうに両手を振りながら歩いていた。ダンジョンの中を歩いているとは思えない、微笑ましい光景だった。




「大丈夫? 痛くない?」

「オゴォッ、オゴオゴ、オゴォッ!」


「はい、回復してあげる」

「アォーーーーーー!」


 アズーラが戦った後に傷ついたモンスターを癒やしたり、話をして、ケアする事でメラルダはダンジョンに生息していたモンスター達と、どんどんと仲良くなっていき友達の輪を広げていった。




「あっちに、良さそうな鉱石の匂いがします」

「よくやった、コニー。地図にメモしておこうか。そして、地上に戻る時になったら持って帰ろうな。今持つと、荷物になってしまうから」


「はいッ!」


 ダンジョン内を進んでいく途中で、コニーがしっかりと報告してくれるので、作成中の地図に鉱物の在り処を書き込んでいく。やはりこのダンジョン内には、かなりの量の鉱石が埋まっているようだった。


 発見できたことを褒めるために、頭を撫でると尻尾をぶんぶん振って喜んでいた。見た目通りの犬みたいに素直な気持ちで喜ぶ姿が、とても可愛いと思う。


 そして、次々と発見していくコニーが大活躍だった。後で採掘する時には、もっと活躍するだろうと思う。




「この広さがあれば、オーク系のモンスター達の住処に十分ですね」

「そうだね」


 ラナの提案に、僕は頷いて同意する。

 オーク系は、豚や猪といった獣の特徴を持った人型のモンスター達。群れで行動をするので、数が多くなってくると生活するのにスペースが必要になってくる。


 最近は皆で生活するのに何処か広い場所に移り住みたい、という報告を受けていたので、この場所はちょうど良さそうだった。


 ここに、資材を持ち込んで家を立てたりしてモンスター達が生活する村ができそうだと思った。


「植物系のモンスター達は、地中だとダメそうです」

「太陽の光が当たらないとね」


「魔法を使って、擬似的な太陽光を発生させるという方法もありますが」

「維持が大変そうだ。ちょっと問題があるかな」


 ラナと二人で周りを観察しつつ歩きながら、住処についての目星をつけていく。

 ずっと先までダンジョンが続いているようなので、思っていたより利用できそうな空間があって、本格的に仲間達の移住計画が進んでいきそうな予感。


 前方でアズーラが行っている戦いを眺めながら、メラルダが楽しそうにモンスター達と交流するのを眺めて、あちこち歩き回るコニーから鉱石の在り処について報告を受けつつ、ラナと計画を練りつつダンジョン内を歩いていく。


 どうやら、僕の想像していたようなダンジョン攻略とは違うけれど、順調に先へと進んでいくことが出来ていた。

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