第10話 ダンジョン前

 アズーラ、メラルダ、コニーとラナという4人の仲間を引き連れて、ダンジョンに踏み込もうとしていた。


 どうやら、これから入ろうと思っているダンジョンはドラゴンが作ったものらしいと、同じドラゴン種であるアズーラから話を聞いていた。


 アズーラの見立てによると、数百年前か、もっと過去に作られて放置されたままの状態だそうだ。制作したドラゴンの姿はなく、戻ってきた様子もないようだった。

ここは、既に捨て去られた場所だろうと彼女は断言する。


「かなり奥の方まで続いているみたいだけど、実は中に居たりしない?」

「気配がないから、大丈夫じゃろう」


 暗闇になっている、奥を覗き込みながら問いかける。進んでドラゴンのモンスターと鉢合わせになったら大変だ。アズーラという強力な仲間がいるし、全力で逃げれば死ぬことはないだろうけれど、戦いになったら危険だろう。


 中にドラゴンは居ないとアズーラが断言しているので、大丈夫だとは思うけれど。仲間に何かあったら嫌なので、念の為に周囲への警戒は怠らないようにしないと。


「アラン様、鉱石が沢山あります!」

「そうだね」


 ダンジョンの中に少しだけ立ち入ってみると、真っ先に有用そうな鉱石を発見したコニーが、壁に向かって指をさし報告してくれた。


 そこは洞窟のようになっていて、人が何人か入っても問題ないくらい大きさのある空間が広がっていた。地面は土砂を踏み固めたかの様に凹凸が少なく、壁は土を削り取られた様に凸凹がなくて、天井も同じ様になっていた。


 人工物にしては全体的に粗さがあるけれど、とても自然にできる様な物に見えないので、アズーラが言ったようにドラゴンが作ったという話は本当なのだろう。


 そして、削られて出来たであろう壁や天井に鉱石が剥き出しになっている。入ってすぐにこれだけの量が見つかるということは、奥に進んでいったら更に大量の素材を採掘できそうだ。


 コニーは鉱石が見えている壁に近寄って、さっそく掘り出そうとしている。今は、探索するのが優先なので彼女を呼び止める。


「コニー、いま掘ると荷物になるから後にしなさい」

「クゥーン……」


「落ち込むことはないよ、ちゃんと報告できて偉いぞ!」

「っ!」


 褒めながら彼女の頭を撫でると、尻尾を振って喜んでいた。やっぱり、落ち込んだ表情を見せられると、ついつい甘やかしてしまう。


「優しいのね。私も撫でてほしいわ」

「ほら、よしよし」


「ありがとう」


 ラナが羨ましそうな目をして言ってきたので、彼女の要望も答える。背の高い彼女の頭に手を伸ばして、よしよしすると満足したようで、微笑んでお礼を言われた。


「ラナは一回、中に入ってみたって言ってたよね」

「そうね。1人で入って怖かったから、まだそんなに奥まで見に行ってないけれど」


「どうだった?」

「色々な種類のモンスターが、入り込んで住処にしてたわ。私達が来るよりも前、元々ここで生活してた住人みたい」


「なるほど。それは、良さそうだね」


 最近、モンスターの仲間がどんどんと増えてきて森の中にある拠点だけでは収まりきらない数になってきた。


 人間が住む街に近寄らせるのは怖いし、ダンジョンをモンスター達の新しい住処に出来ないかどうか、と考えていた。ラナの話を聞くと、予定通りにできそうかも。


「まだ、中にいる彼ら彼女らは人間に慣れてないみたいだったから、アランは危ないかも」

「そうか。教えてくれてありがとう」


 新しいモンスター達の住処にするために、内部の調査をしっかり行う。危険がないかどうか、確かめないと。


「じゃあ、もう一回撫でて褒めて」

「ほら」


 普段はモンスター達をまとめているお姉さん的な彼女も、僕にだけ積極的に甘えてくる。そんなラナの要望にしっかりと応えるために、頭を撫でてあげる。


「私も!」

「いいぞ、こうだな」


 メラルダが声を上げ寄ってきて頭を目の前に差し出してきたので、ついでに彼女も撫でてあげた。



 アズーラとメラルダ、コニーにラナという、見た目がとても綺麗な4人の女性達に囲まれていた。人化して見た目が人間になった3人と、元の姿から美人だった女性というようなモンスター達。


 ここに居る4人以外にも沢山、モンスターの仲間達がいた。


 メスのモンスターは人化して甘えてくる傾向があり、オスのモンスターは強くなる事を求めて元の姿で能力アップする姿形に変化していったり、強力なスキルを覚えるのを優先して、見た目は二の次らしい。


 そういう訳で、僕の周りには見た目が美しい女性が集まっていて慕われているし、凶暴な見た目をしたモンスターも勢揃いしていた。


「中に住んでる皆も、仲良くなれるといいね」

「そうだな」


 このダンジョンの中にも、モンスターが沢山住んでいるらしい。もちろん、倒して追い出す事なんてしない。元々、ここに住んでいたらしいモンスター達を尊重して、新たに入っても迷惑にならないまま、僕たちが住めそうな場所を探すのが目的。


 メラルダは、中に住むモンスター達とも仲良くなるつもりのようで、これから更に仲間となるモンスターの数が増えることになりそうだった。

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