報道を素直に聞ける時代ではなくなった

 今朝、アップル社のiphoneに関するニュース記事を読んだ。

『iphine14 一番売れている人気機種ベスト10』

 最近発売されたiphone14。私はさして関心も薄かったので1位は何だ、というところだけ拾い読みして記事を離れた。分かっても、さして有益な情報でもなかった。1位はミッドナイト(色のことだろう)、2位はブルー。3位以下、もはやどうでもいい。それ以外にも、何ギガバイトモデルのほうが売れている、とかproと普通のとではどっちが人気、とかいう情報もあった。

 皆さんはそう惑わされないと思うが、ここでひとつ引っ掛け問題になっているのは分かるだろうか。まさかこの記事を読んで「iphone人気やねんな(売れてるんやな)」と思う素直すぎる人はいないだろう。

 たとえば、売り上げの低い駄菓子屋があるとする。でも、そこの店主のおばあちゃんが「ウチの店で一番売れているのはうまい棒です。二番がビックリマンチョコです」と言うとする。これはなにも間違いではない。確かに、その店の売り上げの中ではそういうことなんだろう。でも、その店は客足が乏しく、ほぼ売れてないので別に日本でのうまい棒人気に大きく貢献しているわけではない。

 冒頭のiphoneの記事は、駄菓子屋のおばあちゃんの言い分と同じレベルである。ある情報を意図的に隠している。



●iphone14自体が、それほど売れていない。



 ここは、売る側は隠しておきたい。人気機種ベストとかいう記事を出すことで(確かにウソはついていないが、小細工ではある)、読者が勝手にいいほうに「誤解」してくれることを狙ったもの。記事を出している先は当然、iphoneの側の人間もしくはいいように宣伝することで利益がある人間である。あまり売れてない中でも「これが一番売れています」というのは、言葉のマジックでギリセーフである。



 NHKの朝ドラ『ちむどんどん』に関しても、最終的な視聴率が出た。

 その数字自体は、嘘をつかない限りどの報道会社が報じても同じである。でも、出どころによってまったく表現が違う。NHKの息がかかった側の報道は『ちむどんどん、最終話大団円! 視聴率は~%で、舞いあがれ!につなぐ』と、非常にいい雰囲気で報じられている。成功したと言わんばかりである。しかし、NHKに忖度する必要のない(むしろ批判することで注目を集められる)側の報道は、「ちむどんどん、視聴率惨敗! 共感しにくいシナリオが一因? 次の舞いあがれにも影響必至か」。

 ここまで立場による報じ方の違いを見せつけられると、あきれるというか一種の清々しささえ感じる。



 ひろゆき氏が沖縄の基地反対に関してコメントしたことが、世間をたいへん騒がせている。確かに言い方はアレだが、冷静に指摘点だけを考えたら一考の価値がある。しかし、反対派や自分の頑張っているもの(意味や実効果があるなしはとりあえず問わない)を腐されるのがガマンならない立場の人間が、よせばいいのに情報操作する。それが『ひろゆき大失言! 基地反対への暴言でひろゆき離れ加速』という記事である。それにひろゆき氏は飄々とこう反応している。



●ひろゆき離れが起きているというご指摘ですが、事実だけを申しますとこの騒動が起きて後僕のフォロワーは~万人増えています(苦笑)



 今の時代、寂しいことだが提供される情報、目に飛び込んでくる情報を何も考えずに鵜吞みにしていたら、確実に損をする仕組みになっている。

 本当はこういうことをしなくていい社会がいいのだが、皆が自分の立場を守るのに必死(でないと生きていけない)な社会では、立場の違う人間を責めても建設的ではない。もはや、自衛するしかしょうがない。



①記事を読む前に(難しければあとでもいい)その情報の出どころをまず見る。

 その会社は、その情報をどう報じると得か、を加味して採用するべきところと引っ掛け問題にやられないようにする部分とを嗅ぎ分ける。



②言葉上のマジックを見破る。まるっきりのウソはダメなので、ギリギリの線で「よい印象をつけようと」攻めてくる。あなたがそれに吞まれたいならいいのだが(その有名人や商品のファンで、批判なく受け入れたい場合)、そうでないなら精査する必要がある。同じ事実でも、焦点の当て方や言い方でまるっきり違う印象が与えられるのだから。先ほどのiphoneとちむどんどんの報道の違いを思い出してほしい。



 筆者は毎日、膨大な数のネット記事を読む。それはまるで、工場でベルトコンベアーの上をどんどん流れてくる部品の選別作業をするかのような時間だ。すべて、報道会社や出版社がどっちよりの思想なのか、やり玉に挙がっている有名人を援護するのが得な立場なのか他社なので批判する方が自社に追い風なのか、そんなことも考えて読む。

 もう、誰が見ても誰が読んでも中立で公正な報道、というのはファンタジーなのかもしれない。(建前上の)資本主義社会という体制が変わらないことには、今の状況は続いていくであろう。社会を変えるのがとりあえず難しいなら、我々国民がとりあえず自衛するしかない。おかしな情報操作にうまく乗せられないように!

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