あなたが何を優先するかで奴隷度がわかる

 映画の上映中に、迷惑行為に遭ったことはあるだろうか。

 上映前ならともかく(予告編中でもやめてほしいが)小さくない声量でのおしゃべりや、座席をうしろから蹴られる、映画館の購買以外に食べ物を持ち込んでくる(しかもニオイがきつい)などが挙げられるが、近年特に多いのが『上映中のスマホ操作』である。

 イオンシネマが、それがどれだけ迷惑なことをかを世間に分かってほしくて、実際に営業終了後の館内で実験し、どれだけ映画が見づらいかの検証実験を行った。その結果をツイッター投稿したところ、大きな反響があったという。



 人に迷惑だとかマナーがどうとか、そういう話よりも筆者が気になるのは別の点である。そういう上映中にスマホをいじれてしまう人の脳内に興味がある。



●人間に少しでも知性があれば(小学生程度の知性があれば)、映画の上映中にスマホを操作することは褒められることかやめたほうがいいのか、二択問題に正解できるはずである。

 それでもやる、というのは「人に迷惑をかける可能性のあることが分かっていて、なおあえて実行する」ということであり、ではその内容はそんなに大事なのか? 

 そんな緊急のことが、映画館では客にたくさん起きるのか?



 危篤の親の容態とか(それなら落ち着いて映画になど来ないはず)、会社の存続がかかった取引の結果(それも映画などという気分にならないだろう)、告白した後の異性の返事を今か今かと待っているのか……いずれにしても、何も映画館に来なくていいだろう、という話。

 なおここでは、「そもそも人に迷惑をかけていることが分かっていない、そういう感覚がない」場合は考えない。そんな程度の低い話はここでは扱わない。

 ここで大事なポイントがある。



●あなたが何を一番大事に考えているかで、あなたの人としての成熟度が分かる。



 映画は、気持ちよく見たいもの。

 自分だけではなく他人も同じ空間を共有するのだから、「自分がしてほしいことは人にもそのようにせよ(イエス・キリスト)」で、静かにしているべきだし上映中にスマホを触るべきではない。

 現代人は、残念ながらスマホの尻に敷かれている(操られている)と言っても言い過ぎではないほど、その生活を握られている。とはいえ、せめて上映中くらいはサイレントモードにしてスマホを見ないと決めてほしいものだ。

 普通は、映画上映中というシチュエーションにおいて最も優先されるべきは「スマホは触らないこと」である。でも触るということは「周囲への配慮以上に、あなたがそのいじりたいというエゴを優先させる」判断を下している、ということである。

 おそらくだが、スマホをいじる迷惑人間の大半は、「いじって周りを不快にさせてやろう」という確信犯はほぼいないと思う。悪気はないのだろう。



●悪気はないだろうが、ただかわいそうな人たちである。



 なぜなら、反射的に奴隷と化しているからである。

 悪気なくスマホを見る、というのはもはや反射行動である。無意識の域の話になっているのである。もはや強い「刷り込み」が完了してしまっていて、もう気になったら即「スマホをいじらないではいられない」のだろう。まるで空気でも吸うように。

 あなたが生活上何を無意識に優先させるかで、その人の人としての程度が分かる。

 映画館で上映中スマホを見てしまえるというのは、あなたが「本当に大切なものよりもくだらないものの方に価値を置いてしまっている・優先権を与えてしまっている」ことの証明である。それはもう人間というより、スマホを術者とするゾンビである。たとえ大人でも、自分主体で生きられない半人前である。



 仕事や私生活でストレスを抱えているとか、イラついていて人に迷惑をかけてはいけないという配慮が働いてくれないとか、そんなのも論外である。家で枕を投げるか新聞紙でもビリビリに引き割いて発散すればいいし、それか心療内科に足を運んでもいい。とにかく、そんな状態で映画館に行く判断をするのは絶対的に間違っている。

 外で、あなたが迷惑な人に遭遇した時、腹を立てる前にこう思おう。「ああ、この人は何が大事かの優先順位もまともに付けられない悲しい人なんだなぁ」と。

 その迷惑があなたに実害をもたらすものなら、断固戦ってよい。ただ、そこまでいかないならムッとして終わりではなく「人類全体が、本当に大事なことをこそ大事にできるようになるために、何が欠けているのだろう? そしてその欠けを補う必勝法があるのだろうか?」と考えてみることも大事だ。

 地球は戦争で滅びるかもしれないし、隕石が落ちるとか地震などの災害によって滅びるのか、あるいはウィルスか、それは分からない。でも、何に転ぼうが「外側の要因よりも、人類の内包する精神的要因」を何とかしておくことは優先されていいはず。皆が互いに気持ちよく生きていけるために、ムリなく思いやりを優先させることのできる人が今日という日に一人でも増えることが、世界救済への道である。

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