金持ちは生きづらい時代になってくる

 前澤友作氏の名前を久しぶりにニュースで聞いた。またおかしなことをはじめたようだ。

 筆者は、今この瞬間限定ではあるがこの日本は「金持ちには住みよい国」であると思う。確かに税金はだいぶ国に持っていかれるが、それを痛がるのは「小金持ち」。

 大金持ちは、税金ぐらいでとやかく言わない。それでも人として生きるにはあふれかえるほどあるんだから。そんな溢れるお金の使い道を考えるしかやることがない(アイデアとカネ出せばあとは本人はそれほどの忙しさではない)ので、カネ持ちの口癖(心の考え事癖)は『もっとおもしれーことねぇかな』である。

 カイジというギャンブル漫画で有名な作品でも、実質日本を支配している帝愛グループ総帥の老人が言っていた。「私はジャンキーだっ。もう普通の人間が面白いと思う程度のことではまったく楽しめなくなった」

 前澤氏も、美人女優とカネの力で寝たり宇宙旅行を実現できたりしたあとは、何を刺激として生きるのかちと興味はある。完全に他人事ですが。



 月旅行に行ったり突飛な考えを実行に移したり(彼のツイッターアカウントのフォロワーになったりリツィートしたりした人間の中から一部選んでカネをばらまくとか)して、それらの行為が一部賞賛を生んだが、筆者にしたら1ミリも賞賛するところなどない。前澤氏のやっていることは、大きな視点で見ればゴミである。ただ、見せ方がうまいため、たまたま100万円とか彼からもらった人間は彼を神と称賛するだろう。宝くじと一緒で、あたる人は少ないが誰かは当たる。その部分で、実は圧倒的多数が損をする宝くじでも未だに人は買い続ける。前澤氏のすることにはそれに似た魔法がかかっている。

 時々、一般人の意見で「金持ちがたくさんお金を使ってくれたら、もうそれ以上言うことはない。彼らはカネを落として経済を回してくれるからありがたい」というのがある。もう格差とかそういうのをどうしようというのはあきらめていて、どうせ世の中このままだから金持ちはせめて気前よくカネを使ってくれ、というのだ。

 頭悪い。金持ちはカネさえ使ってくれたら、経済はマシになるだって? トリクルダウンという考え方が確かにあるが、まだ騙されていると気づきませんか?

 筆者は時々、気持ちよりオカネだということを言いもし認めてきたことがある。心のこもった10円をもらうよりも、心のこもらない1万円のほうがありがたいし、実際役に立つ。それが10万・100万だったらなおのこと嬉しいだろう。(高額なお金の譲渡・相続上の面倒な問題さえなければ)

 でも私は、この前澤氏のしていることは危険だと申し上げる。彼からカネをもらって喜ぶのは、あなたが自分主人公・自分主体で生きることから骨抜きにしかねない、と言っておく。



 最近のニュースによると、彼はあきれるような新ビジネスをたくさん思いつき、カネがヘタにあるので思いついた先から実行に移している。

 MAZ DAOコミュニティーというへんな名前の組織というか集団をつくり、登録者数は22万人以上。この世には22万人のアホがいるということだ。

 アホだと言われて腹の立つ人もいるだろう。何より個人の自由だし、金額だって毎月500円の徴収だから、そんな額大したことでもないという考えだろう。

 タダほど高いもんはないし、安い割にいい話ほど危ないって習いませんでした?



●前澤は、自身の記事やコメントに対していいねなどのリアクションを要求。またSNSでの事業宣伝のシェアも


 → この約束、決して安くないぞ? 下手したら数百万相当の価値のあるものを売り渡すぞ? 下手したら命に係わるぞ?



●月額500円、本気の人のみ来てほしい、お手伝いをしてもらうたびにトークンなど点数化できるポイントを付与、将来的にそのポイントを換金可能にすることでビッグボーナスができる



 吸い上げたいカネは具体額があるのに、具体的にメンバーがどういう貢献をしたらいくら、という決め事がまったくゼロ。これのどこか事業なんだ? 道楽だろ。

 どこの世界に、人にオカネ払わせてものを運営するのに、その利益の還元事項に関して「何も決めてないんです」って会社がある? ナメてないか?

 でも世間の人は「あの前澤さんだから」ってんで、もうキャラで半分ゆるしている。普通は他人の資本を巻き込んでお遊びじゃない何かをするには事業計画書が必要で、損益のシュミレーションすら資料がないんでしょう?

 前澤さん悪い意味で頭いいので、そこは「500円払う人は会社に社員として所属してもらったり、通勤してもらったりすることはない」という言葉で、きちっとした雇用ではなく半分「興味本位の遊び」であることを印象付けることに成功しているので、誰も事業としてきちっとしていないところを突っ込めなくしている。払う側もどうせ500円だし、と500円を最初からなめているので「捨て金でもともと。なにかあればラッキー」くらいの浅い考えだろう。



●コイツは、社会をよくしようなど1ミリも考えていない。

 コイツのやった色々なことは、恩恵を受けた側の眼には「救いの神」のようにも見えるだろうが、ジャンキーな金持ちが道楽をやっているだけだ。

 庶民は、それに振り回されているのだ。皆さんはいわばカイジで、底辺の人間がカネの匂いにしっぽを振り、命を懸けてゲームをするのを見物する側が前田氏なのだ。



 彼の言葉をいくつか抜粋すれば、頭の悪い人が引っ掛かりやすいキャッチーな言葉を多用しているのが分かる。


①普通の会社を作るのは飽きました! 


 冷静に考えよう。普通の会社じゃないって言ってるよ? 何が普通じゃないか調べないと知りませんよ?


②うまくいったら山分け。うまくいかなかったらそれはそれ。


 絶対嘘だと思ったほうがいい。多分、厳密なところは調べられないようにし、どの角度から見られても大丈夫なダミーデータを放つはず。山分けなんかする資本主義社会の組織がどこにある? 皆が喜ぶ言葉をうまく使っただけ。帳簿に「山分け」って書けるなら、税理士も会計士も要りません! 

 それはそれ! なんとあいまいな言葉。甲が乙にどうどう、という契約書を交わすことが必要なこの社会にあってだよ。「山分け」「失敗してもその時はその時」って言葉で納得しちゃっていいのかい?



 夢あるよね。ワクワクするよね! そんな言葉で宣伝は埋め尽くされている。

 これは、彼一人もうけさせるシステムだ。

 ひとりひとりは500円。でも22万人が登録すると、一か所に集めると? そのカネを元手に、大きく儲けられるでしょうな!

 まさに前澤氏の思うつぼ。キャッチーな呼びかけひとつでいくらでもカネがあつまる。その大金を使ってうまくいけば、前澤氏は儲かる。帳簿など、正直につけるわけがない。それで実は大儲けしても、少ない額(たとえば千円とか千五百円とか)を還元しておけば、皆こう思ってくれる。



●まぁ、月500円だもんな。こうして千円きただけでも倍だもんな! リスクも取ってないのにこれが大金になるとかそううまい話なんてないだろうから、こんなものでしょ、と自分で勝手に納得してくれる。



 前澤氏はこの500円のケースだけでなく、少額の出資(一人一万円)とかで大きなことやらない? という話まで出している。

 彼はここから本気出すよ。今までバラまいたのは、皆がバカになってくれ自分というキャラがアンチよりも賛同者のほうがちょっと増えてくれたこのタイミングで全力を出していくためだよ。



●どこに、社員やアルバイトなど一緒にやっていく仲間を募集するのに、「金払え」ってところがある?



 そりゃ、あなたが親友とか身内とかに「共同出資しない?」って声かけられて出すのはまだ分かる。でも赤の他人に「カネ払え」?

 それは会ったこともないけどメディアが伝える前澤友作という虚構を信じて乗るの? 有名人だから? 500円程度だから? それほど損はないって甘く考えている? 前澤氏はやたら「世の中を変えていこう」という言葉を使っているが、筆者の見たところそれは貧しい人が助かり、格差が是正されていき生きやすくなるほうに変えていくのではないらしい。



●そういうのは多分、彼の思う「おもしれぇ」のとは違うようだ。



 自分の賛同者が「ほら、前澤さんの言う通りやれば儲かったろ?」と言ってもらえればよしと見た。自身が成功者としてさらに注目を浴び、そのやることが正しいことを力で証明しようとしている。

 今の日本はステージ4のガン患者だ。遊んだり可能性を試している余裕はない。金持ちのカネのかかった壮大な社会実験(遊び)に付き合う体力は日本にない。



 お金を持つ者は、今の時代、その富をどう使うかが問われる。

 自己責任で好きなように使っていい、という時代ではもうないぞ、これから。

 ハンガーゲームという映画みたく、金持ちは兵器やら軍隊やら持ってて貧乏人がどうやっても戦えない、というふうに日本は多分ならない。安倍元首相のように、やろうと思えば銃撃可能だろう。

 貧乏人でも頭が良ければ色々な可能性を思いつく。この世にはずいぶん飛躍した考え方の人もいるのだということを、恨みを買いやすい金持ちは考えておくといい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る