大きな背中でいてほしい
テレビの情報番組を見ていたら、今人気の男性俳優がゲスト出演していた。
番組はその俳優の母校である高校を取材していた。当時、その俳優の担任だった先生がインタビューを受けていて、彼との思い出などを語っていた。先生のコメントの最後のほうで、筆者にしたらちょっと残念というか、さみしい発言があった。
●私も、~君に負けないように、恥ずかしくないように頑張っていきます
確かに、社会人としては教え子のほうがビッグになったんだろうよ。スターとして全国的な人気と活躍を得たんだから。教え子が人気芸能人になるなんてことがなければ、この先生がテレビに取材されるなんてことはなかったのも確かだろう。
世間的に大きな成功を収めたら、それは世界の片隅で一般人がコツコツ積み重ねている頑張りより大きい、と暗に認めていることにもなる。でないと「私も負けないように」なんて言葉は出てこない。
でもさ、私は切に願う。先生という立場の人にさ、教え子がどんなに大物になろうが自分を下にしないでほしいんよ。
●先生には、いつまでも先生でいてほしい。私より上の立場であってほしい。
追いかける人であってほしい。大きな背中を見つめ続けていたい。
もし筆者がこの人気俳優の立場だったら、先生のインタビューをうれしがるよりもむしろ寂しく思ったと思う。だってそこに「卑屈」を感じるから。教え子のほうが世間的に大きな存在になったら、先生たる人が「あなたに負けないように」「恥ずかしくないように」なんて言葉が出てきちゃうのだろうか。
私なら、恩師に絶対言ってほしくない一言である。また会った時には、「こらテラ! 相変わらずか? 今はちゃんとやっとるのか?」そんな風に、変わらず接してほしい。こちらが有名になることで、先生にそれを意識したような昔とは違う態度を取られたら、それは悲しい。先生と生徒、という絆が学生当時のものとは変質してしまったことを思い知らされるから。もうその絆は幻想と散ってしまうから。
今回の記事は、筆者一個人の思いを綴ったものにすぎない。なんら正しいことを言い当ててもいない。人によっては「先生もそこまでのことで言ったんじゃないと思うよ。考えすぎじゃない?」という印象を持たれるかもしれない。
だから、今回は10人にひとりくらい「うん、その感覚分かるよ!」という方に共感してもらえたらそれでいい。
役者というのは、舞台上においては最後までその役柄を演じ切るもの。地球での人生を「役柄」と考えたら、先生は受け持った生徒に対して最後まで「先生」を演じ切ってほしい。売れたら一般人の私よりあなたのほうが格上、というホンネがちょっとでも覗くのは悲しい。
子どもにとって、大人とは「越えがたい壁」としてそびえたってほしい。特に学生時代に大きな影響を受ける教師という立場の者には。最近は友達感覚というか、時代のせいで、社会の眼やモンスターペアレントを怖がるあまり先生らしくない先生も増えた。生徒にビンタする金八先生やスクール・ウォーズなんてドラマはもう作れないだろうな。
単にスパルタにしろ、とかいう浅い意味ではなく、デンと構えていつでも相談に乗ってくれ、受け止めてくれこちらが感情の壁なく慕える存在でいてほしい。
●お互いの立場がどんなに変わろうとも、出会った時には一瞬で昔に戻れる関係っていいな、と思うのである。
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