Q&Aのコーナー第八十五回「いやな記憶や不幸な出来事ってどうして長く引きずってしまうの?」

Q.


 小さな幸せがうれしい今日この頃です。ふと思ったのですが、幸せな気持ちなんて一瞬か数日で薄れるのに、いやな記憶や不幸な出来事って、結構長く引きずったりするような気がします。この差って一体何なんでしょう。楽に生きれる生き方があれば教えてください。



A.


 楽に生きれる生き方があれば、って質問はちと的外れです。だって、そういうものを引きずることこそが、まさにその「その後をよりよく生きるためのベストな生き方」なのですから。

 すでに実践なさっているため、それ以上を望まなくて大丈夫です。



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 ぜひ、皆さんが学校に通って勉強していた時のことを思い出してください。

 テストで高得点を取るためには、出題範囲を全部理解することが早道でしょう。でも、人は皆それぞれ個性があり、得手不得手が違います。

 得意なものばかり分かっても、不得手なものを放っておけば点数が偏り、総合的には評価が低くなってしまうでしょう。

 好きなことは苦も無く理解できたり、嫌いな科目より少ないエネルギーで必要な勉強を終わらせることができます。一方、嫌いなものはそうはいきません。何度も覚えようとし、結構な頻度で思い返さないと頭に残りません。

 昨今のスピリチュアルでは「やりたいことをやる、したくないことやワクワクしないことはしない」などという話がもてはやされたりしました。もちろん全くの間違いではなく、ある程度まではそういうことも有効でしょう。でも、その「ある程度」までが限界で、なんでもかんでもそうしていたらいっそう不幸になります。

 好きなこと、心地よいことだけを選ぶ、という話は幼い人が聞くと、自分のしたくないこと(でも本人のためにはしたほうがいいこと)をしないで済む言い訳に利用されてしまうので、注意が必要です。限定的な範囲では「好きなことだけする」は有効ですが、人の一生というトータルな視座からは、とてもではありませんが通用しない話です。



 先ほどの学校での勉強のたとえ話で大事な点を再確認すすと、嫌いで苦手な科目ほど好きなものに比べて倍の時間を眺め、向き合わないといけないうということです。

 もしあなたが、自らの人生を死ぬときに振り返って「いい人生だった」と思って死ねるレベルにまで高めたいのであれば、あなたのエゴが喜ぶような好きなことだけをしていたら、とてもではないがそうはならないと言っておきましょう。

 トータルとしての人生を輝かせる(あなたがすべての試験科目の総合で優秀な成績をおさめる)ためには、好きな部分より苦手な部分にこそ取り組む必要があります。これすなわちー



●嫌な記憶や不幸を心の中で引きずるのは、むしろいいことです。

 それを反芻することで、次に同じことを繰り返したくはない、というあなたのホンネの表れと見てよいでしょう。だから、あなたはよくやっているのです。

 それを何だか、イヤな気を引きずる自分はダメなのではないか、なんて勘違いはもったいないですよ!



 あなたの精神は、あなたのエゴ(顕在意識)よりも良くお分かりでいらっしゃる。

 まさに、マクロな視点で『幸せ』になるために、苦手科目対策を立て、総合点を引き上げようという魂胆なのですよ。本当のあなたというものは。

 一番気を付けないといけない点は、くれぐれもスピリチュアルのやりすぎで「不幸を引きずる私はスピリチュアルがちゃんと実践できていない」と思い込むことです。好きなことだけをして、皆がうらやむような成功を収めているような人物は、たまたまその人に大変なことが見舞ってないタイミングなだけで、その人物が人としてレベルが高いということとは関係なかったりします。というか、他人が見てうらやむような成功者でも金持ちでも、本人視点ではそれほど幸福感がなかったりする現実もあると思います。でも、他人にはそう言えないですよね! 見栄張っちゃいますよね。オカネの面じゃなく「幸せです!」というアピールの面で。

 不幸をひきずるのはよくないことだ、というそもそもの前提を壊してこそ初めて、話が始まるのだと思ってください。



 また、私が言った「不幸やイヤな記憶をひきずる」という対策以上のよい対策はないのだ、と思っていただくことも大事です。

 人とは弱いもので、今現在あるものよりも「もっとよいものがあるのではないか」と現状に満足せず、外にフォーカスして探してしまうところです。

 もちろん、そうした行動がよい結果をもたらすことはあります。ただ、それも時と場合によりけりで、今回している話ではオススメできません。だって、そもそもないのですから! ないものを探しても見つかるわけないので、親切心で言ってます。

 ネットを見れば、スピリチュアルな本を漁れば、幸せになる方法なんてものは星の数ほど情報がある世の中です。でもそうしたものは迷惑で、心地よさだけでラクに幸せがつかめる方法なんてのがあるという錯覚に人を絡めとります。その錯覚に囚われている間はたしかに幸福感がありますが、いつか夢から醒めないといけない時が来てしまう。その時に後悔しないためにも、あなたが今していることや持っている情報以上の何かよいものが外にあって、私はまだそれを見つけていない(言い換えると今の私はベストな私ではないという裏宣言)という決めつけを捨てましょう。



 不幸をひきずっているというあなたは、まさにベストを尽くして今を生きていらっしゃいます。もう少し胸を張ってもよろしいかと思います。

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