女帝
この漫画との出会いは、ヒマでしょうがない時だった。
マックのハッピーセットがほしい子どもを連れて行ってあげると、食事が済めばキッズコーナーにある大型の遊び場コーナーがあるため、すぐには「帰ろう」と言ってくれない。
子どもが一通り遊んで納得するまで、多少はこどもを監督するものの基本的にはヒマである。ヒマをつぶしたい、そんな時頼れるのはスマホくらいしかない。
ニュースを見るにも、私は朝かなり読み込むのでお昼にそう目新しいのはない。かくなる上は漫画や小説であるが、課金はキツイ。(涙)
で、苦し紛れに「無料」をうたったアプリを狙う。そうなると限られるので、好きなものとかそんな贅沢を言ってられない。趣味のものでなくても、有り難いので読んでみる。
最初ヒマ潰しに仕方なく読み始めたのが、この「女帝」という大人向けのマンガ。でも、いざ読みだしたらこれがなかなか面白かったのである。
全24巻を、マックの子ども待ち時間と整体の間の待ち時間に読破してしまった。
小公女セーラの「大人版」であり「清純派でない版」であり「お水版」。
母親が水商売で、子どももその程度と権力をかさに着た政治家の家族にバカにされ、母親ともども虐げられた女子高生・
そういう内容だからきれいごとで済むはずもなく、少々生々しい性描写や残酷描写もあって引く部分もあるが、それでも人生訓や生き方の参考として、結構役に立つ部分はある。
探せばスマホで無料で読めるので、(しかも面白いので)何かの待ち時間のおともに、オススメするものである。何かの一流、というものを目指す方なら、読んで損はない。ただし、女性に強くオススメはしない。
で、つい先日知った事実。
この作品には続編があって、筆者はそれを知らずにいた。
それが 「女帝・花舞」。
「女帝」では主人公の彩香が見事に人生の目標を達成してメデタシメデタシになるのだが、結婚して子どもが生まれていた。(ちなみに結婚した男性は、子どもが生まれたタイミングでドラマチックに亡くなってしまった)
その娘が成長して、奇しくも彩香が一大決心をしてお水の世界に飛び込んだのと同じ時期に(彩香は18歳だったが、娘の明日香はさらに1年早い17歳)、「母親が銀座の女帝なら、私は京都で舞妓になって、伝統ある『祇園』の女帝になってやる!」と家を飛び出し、奮闘する物語である。
女帝を読破して安心し、続編があるのを気付かずにきたが、最近たまたま知って読んでいる。読破はまだだが、だいぶ進んだ。これも、多少条件付きだが基本無料で読める。スマホでその気になってアプリを探せば、皆さんも見つけられる。
これも、なかなか面白い。
私がこの作品を読んで面白いなと思った点は、もちろん成功哲学系のエッセンスもさることながら、「女帝・彩香も結局は同じ人間」なんだなぁというところがちょっと面白かった。
銀座で大成功を収め、人間としても周囲から一目置かれるほどの実力者となった彩香だが、家庭はボロボロ。他人に頼りにされる人なので、奔走しまくって家庭を顧みず、娘の明日香はやさぐれてちと不良っぽくなる。
彩香ほどの、修羅場を数々くぐって「人間というもの」が良く分かった人物でも、親となったらゼンゼンその能力が発揮されない。まるで、料理とデザートが「別腹だ」と言っているよう。
娘のためだと思って、「お嬢様の通う名門高校」にねじ込むが、明日香は反発。ゼンゼン自分のためになっていないと反抗し、休みがちになる。(もちろん黙って)
本人の希望を無視してでも娘をいい学校に入れたい、というのは自分がそうできなかったことを娘をダシにして代替実現するという学歴コンプレックスの裏返し。
いるよね。仕事しまくって、「これが家族のためなんだ」と疑いなく胸を張る人。親のしたいようにしているだけなのに、それが「子どものため」と信じて疑わず、逆に感謝しなかったり反抗する子に「あなたのためなのに何で言うことを聞けないの」と叱り、手も挙げるような親。
女帝というスーパーウーマンでも、自分の子どものこととなるとからっきしダメだというギャップが、かえってリアルだと思った。たいがい、そうじゃないかな。
作中、彩香は「新時代の女性の生き方」なんていう講演会をするために、娘の願いを退ける。皮肉にも、その講演旅行中にお婆ちゃん(血のつながりはないが、本当のおばあちゃんのように慕っている人物)が急病で倒れ亡くなり、死に目にも遭えない結果に。そのことが母娘にさらなる亀裂を生み、明日香はついに一人で生きていくと家出する。
●人様に「幸せは」とか「生き方がどうの」という立派な講演をする有名人は、内々では周囲が思っているほどうまくいってないことが多いと思うよ。
言ってることと実情がピッタリ合っている人は、ほんとうにまれだと思う。
パフェじゃないが、宗教やスピリチュアルで言うことを分かったり達成したりするのと、正味その人が本当に幸せかどうか、人様に生き方を教えるほど本人もちゃんとできているかは「別物」。「別腹」。
「世間」という人目を意識した他人ばかりのステージでは「一流」にふるまえる者でも、子どもや親だとか、近しい存在になればなるほど向き合うと凡庸な人間と化すのが、人間の弱点でもあり、逆にかわいらしいところでもある。一流の社長の息子が犯罪を犯すとか、校長の息子がいじめの犯人だったとか、ありがちだしね。
他人のことは鋭い眼力で見えても、身内にはその眼鏡の度数が狂うんだろうね。
世間で一流 = 親としても一流、とは限らないってこと。
部下と違って、扱い誤るんだろう。
まぁ、それくらいのほうがバランス取れていていいんだろうさ。
両方が完璧ってあり得ないが、仮にあるとしたら逆に怖い。
そんなのは、人間じゃない。
間違い(と感じたもの)を踏み台にして、次々体当たりを続けるのが人間ゲームである。
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