Q&Aのコーナー第七十回 「覚醒ってナンデスカ?」

 Q.


 覚醒とか悟りってなんですか?

 この世界ではよく聞くし、皆さんが目指しているようですが、具体的には何もわかりません。指し示す寓話などが本当のことかも実証もできません。



 A.


 一体、何でしょうね? 実のところ、よく分かりません。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 たとえば、ガンダムファンのつくる世界、というのがある。

 彼らはネット上で、その分野に関して熱い議論を展開する。

 ミノフスキー粒子がどうした、ティターンズがどうしたと、外野には??な単語を母国語のように操る。彼らにとって、それらは単なる作りごとの域を突き抜け、生きた歴史として語られる。

 まるで、学校で習う世界史なんかよりも生き生きと、彼らはガンダム内の世界史(宇宙史?)を語ることができる。



 悟り系スピリチュアルに群がり、ガチでやる人たちも、ガンダムファンのようなものと捉えていただければよい。ただただ、彼らはそういうのが「大好き」なのだ。生き甲斐なのだ。

 もちろん、今みたいに「一般側」から立った視点で語ると、当の「悟りを真剣に求める側」からの文句が出るのは当然である。バカにするな、と。

 だって、悟りを本気で追う側には、それは宇宙の真理や核心に迫る話なのである。

 それは、信じる人や真に受ける人たちだけにとって真実なのではない。それは、悟りを気にしない、あるいはそんなこと知らずに生きている世間一般人にも無縁ではない。つまりはこの世界を貫く、全人類に無縁ではない話なのであるから「価値に気付かないなんて可哀想」「いつか皆にも分かる日が来る」などの思いを、意識下に持ち続けることになる。


 

 筆者が宗教やスピリチュアルの何がキライかって、一番はそこなんだ。



●自分は大事なことが分かっている。

 自分は、真理に出会えた。

 これだけ大勢人がいて、私は先駆けてこの価値を見出せた。

 (一種の選民思想)

 皆にも教えてあげなくちゃ!

 (裏返せばこれが分からないなんて可哀想)



 悟りを追求する人種がどんな態度であろうが、あなたが全く気にしないというのであれば何の問題もない。ただ、あなたが軽く巻きこまれて、ちょっとでも価値観がそっち寄りになった場合——


 

●理解できないことが、不安になる。

 周囲が当たり前のようにそれを扱っていることで、疎外感を感じる。

 彼らのように自分ができないのは、もしかして良くないことなのか?



 そういう、本来悩まなくていいことで悩む面倒を背負う可能性がある。

 筆者は質問者さんに会ったことがないし、質問文を読んだだけなので推測でしかないが、今回の質問をした人はまったく悟り系スピリチュアルに興味がない、どうでもいいという人ではないと思う。ちょっとは気にしているし、もしかしていいものかも? と思っている所もあるのかもしれない。

 でも、ちょっとかじってみたが、やっぱり分からない。つかみどころがない。

 皆、どういう感覚でこのよく分からない「悟り」を論じているんだろう?

 買い物でも、商品を手に取って良し悪しを確認してからお金を払い、手に入れることができる。なのに、現状では認識できない(その上本当の価値も分からない)ものを、どういうものかつかめないものを「得る」とか「つかむ」とか、どうしてできると言えてしまうのだろう?

 悟り系スピリチュルにハマってしまえない人は、そう考えても仕方がない。



 今回書いている内容は、スピリチュアル実践者(愛好家?)向けではない。

 どこかで悟りや覚醒という言葉を耳にし、「スピリチュアルって本当にいいものなのかな?」と疑問に思っている人。そして少しかじってはみたけど、スピリチュアル関係者が「当たり前」のように使っているスピリチュアル用語がよく分からず混乱してしまうような人たち向けに、話す。

 


●悟りなんて、別にないよ。

 あったとして、私もよう分からん。



 もちろん、筆者は足掛け8年以上も、悟りについて文章にしてきたし、語りもしてきた。その私が「悟りはよう分からん」というのは、実は正確ではない。

 悟りを体験したのは、紛れもなく自分。でもその悟りが、個を越えて誰にとっても共通な、かっちりしたものであるという証拠も保証もない。

 あるのはただ、私の認識能力・判断能力の範囲で「どうもこれは、世間で悟りとか覚醒とか呼ばれているものらしい」と捉えたから、それを踏まえて「悟りが訪れました」と言っているに過ぎない。

 宇宙視点で、神視点で本当に私が「悟ったのか」どうかなんて、自分にも他人にも分からない。絶対だと証明もできない代わりに、絶対ウソだと言いきることもまたできない。



●「信じるしかない」 というのが現状。

 (訪れたものが悟りだと)自信をもつしかない状況。



 たとえばあるスピリチュアル発信者が、「悟った」と言ったとする。

 その発信者が普段いいことを言っていて、聞いた者の側に少しでも感謝の気持ちがある場合、比較的受け入れやすい。要は「信じてあげたい」わけだ。

 スピリチュアル発信者が「覚者」なんて肩書で呼ばれて活動できるのは、本当に覚者だからかというのではない。単に、多くの人心を掌握し信用させたにすぎないケースもある。

「人たらし」と「偉大な精神指導者」は、凡人には取り違えられやすい。

 はっきり言って、特定の人間が悟っているかどうかなんて——



●自己申告

 信用問題



 ……でしかないのだ。

 もちろん、質疑応答の内容や、発信している内容などで「本物だ」と思えることもあるかもしれない。でもそれだって相対的で、「そのメッセージを聞いてこの人は本物だ、と思う人もいれば、何だそれくらいちょっと考えたらできない話じゃないじゃん、と思う人もいる」。

 皆が皆、同じ話を聞いても同じ価値判断にはならない。

 もっとやめてほしいのが、「オーラ」とか「波動」。それは、あんただけのワールドでしかありません! あなたが好きに評価するのはいいけど、他人に押しつけるのはやめて。



 もちろん、筆者の生きている世界では、「悟り」はある。

 だから、その認識の世界(ワールド)で生きている。

 別に、これを読んでいるあなたとは別の場所や次元に私がいるという話ではなく、単に世界の捉え方、かけるメガネの違いだけの問題である。

 個々人によって、世界観によって世界を見るメガネが違うということを、別表現で「皆一人ひとり独自の宇宙を開いている」と言う。だって、ただそれだけの違いでも「住む世界が違う」と言っていいほどの違いを、互いの間に生じさせるからだ。

 筆者が、本当かどうか全然自信のない内容を、お金取ってしゃべってたら失礼だ。少なくとも、私には全力での内容だし、もちろん確信をもってしゃべっている。

 でも、それは私と世界を見るメガネの違う皆さんにゴリ押しするほどの内容なのか? と考えると謙虚にならざるを得ない。皆さんが自発的に、好んで私のメッセージを聞いてくれる分にはうれしいが、半信半疑の人を説得しようとは思わないし、ましてやアンチを頑張って振り向かせよう、味方に変えようなんて面倒くさすぎるから絶対やらない。

 


●悟りは、私にとっては(今のところ)真実。

 だが、他人は知らない。その人たちにまで絶対必要かどうかまで、保証できない。



 ガンダムファンは、自分がガンダムファンでることに誇りを持っているだろうが、だからといってその価値観を押し付け、他人にもガンダムファンになることを強要したら、ガンダムファンの評判を下げるかもしれない。「これだからさぁ、ガンダムファンって迷惑なんだよね~」と言われてしまうだろう。

 人がガンダムファンになるのは、あくまでもその人がガンダムに縁あって(強いられてではなく)触れることによらねばならない。また、その後ファンになるかどうかについてもあくまでもその人の自発的な「選択」に任されるべきである。

 同じことで、スピリチュアル側の人間にしたら悟りは真に価値あるものなんだろう。それは認める。だからこちらも、対外的に「悟りは人類共通の宝」みたいに吹聴するのはやめよう。

 もちろん、まったく宣伝しないわけではない。スピリチュアル界は、これまで通りの活動で全然構わない。ただ、この道を全然知らない人・入り口に入りかけている人には、紳士的に対応しよう。

 後ろからドン! と強く背中を押して門に入らせるのをやめるだけでいい。本当に悟りがあるのか、悟りに価値があるかどうかを決めるのは、その人自身だ。



 だから、あなたが覚醒ってどう扱ったらいいのか分からない、という立ち位置にいるなら、筆者はあなたに「別にどうということはありません」と言う。

 すべての道はローマに通ず。すべての在り方は、本質に通ず。なにも悟り系という分野だけが、人類の成長における専売特許ではない。

 だから、「お好きならどうぞ」でしかない。これいいよ! 絶対いいよ! と押されて始めるよりも「そんなに意味はないかもよ? それでもこれ、興味ある?」と言われて選ぶのとでは、後者の方が始め方としては上等だ。

 後者でモチベーションを持続するのは並大抵ではない。だからこそ、三日坊主で飽きて終わったりせず、行きつくところまで探求しきれるのだ。

 筆者は、あなたが後者を選ぶかもしれない、という淡い期待をもってこう言おう。



●悟りなんてないかもよ?

 どうでもいいじゃない。

 世の中には、もっと大事なものがあるんじゃない?

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