情報収集

『ターミネーター:新起動/ジェニシス』という映画がある。以下、読者がターミネーターシリーズに関して一定の視聴経験と知識があることを前提に、話を進める。

 作中、サラ・コナーの前に二人のカイル(将来サラの息子ジョンの父親となる)が現れる。困ったことに、見た目にはまったく一緒。

 しかし、はっきりしているのはどちらかがニセモノだということ。イ・ビョンホン演じるT-1000が、カイルに擬態しているわけだ。

「オレが本物だ! 騙されるな」

「いいや、そっちがウソをついている!」

 サラは、機械がどんなに完璧にしてもマネができないある人間特有のクセに着目し、見事にターミネーターのほうを狙撃する。



 さて、ここで考えてみたい。

 見た目にまったく同じ二人がいて、どちらかがあなたの「知り合い」なら違いをどこで見抜く?

 そりゃ、視覚情報以上の内容を検討せねばなるまい。

 しかし、互いが「存在を知っている知り合い程度」「少し話したことがある程度」の付き合いなら、視覚情報以外の情報が格段に少ないことに気付くはずだ。それほど親しくないなら、鑑定はかなり難しくなる。



 しかし、実の親子だとか何十年連れ添っている仲の夫婦だったりとかすると、簡単に当てれたりする。それは見た目の情報以上の、無数の経験的・感覚的情報の集積があるからだ。

 今回の記事で皆さんにお伝えしたいことは——



●何かに関して、できるだけ偏見を取り除き正確に知ろうと思うなら、情報収集が必要。しかも、好きなもの以上に嫌いなものに対してほど必要。



 特に、今の言葉の後半が重要。皆さんは、当たり前だが好きなものに関しては、誰に言われなくても積極的に情報を集めるはずだ。だから、そういうものへの理解はかなり深まる。

 しかし、好きなものへの情報収集にもちょっと問題がありまして。「好き」という感情が厄介なんですなぁ。素敵なことなんだけど、これが悪さをすることも。

「ひいき目」に見る、というバイアスがかかっちゃうんですな。

 好きだからこそ、多少のことには目をつぶる。好きなものは素晴らしくあってほしい、いやあるべきだ! という無意識下の願望が、勝手に「良い評価」へと心理操作をしようとする。そしてもうひとつの難題は——



●キライなものは見ないようにする。

 避ける。

 情報が入ってこないようにする。



 これは、ある面仕方のないことではある。

 特に最近はやりの「心地よさ」だけを求めよう、という動きもその表れである。誰だってきらいなヤツには会いたくないし、そいつの話を積極的に聞きたいと思わないだろう。確かに、心穏やかに過ごすためには自分がイヤなもののことを考えないことが上策ではある。

 意識しないで済めば、心は平安に保てることだろう。でも、相手を「キライ」と判断する根拠材料の情報更新、つまりアップデートがずっとなされないままになってしまう、という欠点もあることを知るべきだ。

 相手だって変化する。常にあなたが知っているその人ではあり得ない。それ以前に、あなたの持っている情報が偏り過ぎていたり、もしくは悪意ある他者から「誤った情報」を吹き込まれているという可能性もなくはない。



 実は、筆者も主流スピリチュアルが嫌いで嫌いで。

(相手は売れていて、自分が売れないからひがむというそういう低レベルな感情からではないことは、本書の読者なら理解してくれるだろう)

 スピリチュアルブログなんかをネットサーフィンしようものなら十中八九批判したくなるので、もう「見ない」と決めた時期があった。

 情報収集をやめたんですな。そういうものを読めば何か一言言ってやりたくなるが、本書はできるだけ特定のスピリチュアルへの批判ではなく建設的なメッセージのほうを多くしたいと思ったので。ならば簡単、他スピリチュアルに触れなければよい、情報をシャットアウトすればよいと考えた。



 しかし、そう甘くはなかった。(笑)

 筆者が読まないなら読まないで、読者の方や友人などが色々教えてくれたり。筆者へのコメントで「こういうことがあそこで書かれてますよ」という情報が寄せられたり。フェイスブックで友達のタイムラインを見たら、一番上にどこぞのスピリチュアルブログのシェアがあって、それが目に飛び込んで来たり……

 とにかく避けたら避けたで、結局別の形で目にするので、しまいめにあきらめた!

 今では、他を読むことを自分に禁じてはいない。ただ、依然として読んでも面白くはない……

 最初と比べて、関連情報が増えることであとで評価を見直した、というものは残念ながらまだないが。そのうちあるかも、と期待してもいる。



 キライなものに関しても、無理しすぎない程度に情報を得る行為は益をもたらすことがある。良い変化があれば気付けるし、あなたの持っている情報に欠陥があったらそれも修正できる。

 惜しむらくは、あなたがキライなものを避けまくったら、そういった情報更新の道が閉ざされてしまうかもしれない可能性が生じることである。

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