孤高の表現者

 以前、筆者の講演会終了後、参加者からある本をいただいた。

「ヒマつぶしにでも読んでください。お気に入らなければ、どっかで捨ててくれても構いません」

 正直な話、私はたいがいこういう「本のプレゼント」は喜ばない。

 小説などの物語ならまだよいが、特にスピリチュアルや自己啓発だった場合、そこに書かれてあることくらい分かっている……と言いたいところだが、正確に言うと分かってるからいい、というよりも「どうでもいい」というのが本当のところだ。



 でも、なぜかその見た目スピリチュアル系な本は、くれた人の知らないところで、読まずにこっそり捨てるということはしなかった。なぜだかそれは、捨てるにしても一度目を通してからにしようと思った。

 で、講演帰りの飛行機の中で、その本をどれどれと読んでみた。さて、筆者の反応はというと——

 噴いたり。あきれたり。共感したり。良くも悪くも不謹慎で面白かった。私でさえそこまで言わなくてもいいのに……と思ったり。全部が全部納得はできないが、大まかなところで自分のスタンスと親和性を覚えた。

 この方はもう世にいらっしゃらないようなので、興味を持ったところでお近づきになれないだろうし、例え存命でもおそらく向こうの方で私なぞに会いたいとは思ってもらえないだろう。

 さて、私がこれまで読んだ他人のスピリチュアルの中で一番親近感をもてるその著者とは?



●無明庵EO(エオ)。



 名前は、どっかで聞いたことがあった。でも、興味をもって知ろうとまではしてこなかった。まさかこのタイミングで、このような形で出会おうとは!

 本のタイトルも、「ひきつりながら読む精神世界」というぶっとんだタイトルで、その本文の最初を飾る言葉が……



●精神世界はバカばかり



 本当に青くなったり、噴いたりした。その通りだからである。

 こ~れは皆さんにオススメはできんわ! 真面目に読んでしまえば、あなたは著者と同じようにこの宇宙に絶望してしまう可能性がある。

 まぁ、現代の多くの人はそうなる心配のあるレベルにないから「こいつ何言ってんの? 頭おかしいんじゃない?」で済ますことができるから無害だろう。しかし、一部の「ある境地に達した」人が読むと、アブナイ書物である。

 いちいち言い方が癪に障る本で、よくこういう底意地の悪い書き方ができるものだと、このEOの文才(?)には脱帽する。えっ、誰だ「お前もなかなかのものだぞ」なんて言うのは!



 筆者の個人的な思いだが、現代のスピリチュアル界でこの人物以上の悟り人は知らない。知らないだけでいるのかもしれないが、目にした有名どころではいない。

 世間の何とかランキング1位だろうが本がベストセラーだろうが、この人の足元にも及ばない。

 いや、だからこそ、本質に迫りすぎたからこそ逆に平均的な普通人からは嫌われ、陰でひっそり「知る人ぞ知る」ようなスピリチュアルとなったのだろう。

 今では、彼の本は絶版で、なかなか手に入らない。しかし、あるファンサイトでCD-Rか何かで文章は入手可能なんだとか?



 ここまで言っておいて、「オススメしない。できれば読むな!」だからね。本当に、覚悟がないなら読まないほうがいいよ。

 心配しなくても、揚げ足取りで読んでやろうとするレベルなら、なんらこの本の本当の怖さなんかに気付けないから大丈夫。私が心配するのは、ある程度精神ステージが高い人である。

 この本は真実を伝えているが、ひとつだけ手落ちがある。



●何も本当に宇宙に絶望する必要はない、ということ。



 そういうことを言うと、この著者のファンからは「お前は本当には分かっていないから、絶望するなと言えるんだ」と言うかもしれない。それでも言わせてもらうと、『絶望したうえでもう一度希望を持てばいい』。

 本物の絶望を味わったら、希望など持てるはずがないという理屈は間違っていると思う。そうなら、皆絶望するしかない。しかし、筆者はそれを認めたくない。

 だからこの本に対しては、EOという覚者に対して敬意は払うし概ね言ってることにも同意するが、この本が「くだらない」とする世の大勢の人々やその志向するレベルのものを、そんなにけなさないでやってほしい。

 私は、バカかもしれないがそれでも「一生懸命生きている」存在に対して、もうちょっと温かい目を注いでやってほしい、と思う。

 


 くれぐれも言うが、オススメしないよ。

 読んで後で苦情を言われても、知らないからね!

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