言葉あそびはもういらない

 今日の話題は、『言葉の不自由さ』についてである。

 考えてみれば、こんなに不便なものはない。

 正確に意思疎通し合うことに主眼を置くなら、こんなに使えないものはない。



 例えるなら、人類一人ひとりは皆自分だけの「辞書」を、心の中に持ち歩いているようなものだ。

「田中辞典」「佐藤辞典」「中田辞典」——

 生まれてからこのかた、学校から親から世間から、見聞きして集めた言葉のデータ集積がある。同じ言語地域において、それぞれの辞書の間に収録語の数と内容は、そう大差ないものの、言葉の意味の説明や解釈に関しては、かなりバラつきがある。


 

『役不足』という言葉がある。

 それをするには、私では役不足です——。

 ここで、それぞれの「辞書」の違いが浮き彫りになる。

 


●自分の能力や資質が、それをするのに十分でないこと。



 こう思っている人は少なくないが、これは「間違い」である。

 それを言うなら、「力不足」と言わねばならない。

 役不足の本当の意味は——



●自分にはもっと力と能力があるので、その程度のことでは易しすぎる。



 だから、私には役不足だと言う時の本当のニュアンスは「そんな簡単な! オレをその程度だとナメてんのか? もっと大役持ってこい!」

 そう言っているようなものなのである。

 このように、人によって(学習の程度によって)それぞれの辞書で同じ言葉でも意味が違うことがある。



 また、言葉というものはある物事の一側面しか表現することができない。

 できるだけ正確に、誤解のないように伝えようとしたら、沢山の言葉が必要になる。伝えたい内容によっては本一冊分の分量にもなってしまうことがあるだろう。

 でも、さっき言ったように皆それぞれ自分勝手な「辞書」の言葉の定義に照らし合わせて読むので、読めば読むほどどんどん誤解していく。

 まるで、「伝言ゲーム」でだんだん言葉がすり替わっていくように。

 そんな不便な言葉を使わざるを得ない「今」に私たちが在ってもなお救いなのは、そのような「誤解」こそが個性や違い、もっと言えば「人生の味わい」を生むという事実である。

 確かにこの世では苦しむこともあるが、その分楽しいことも多い。味わい深いドラマも、沢山生まれる。



「愛」という言葉がある。皆さんが、一番「わけわかってへん」言葉。

 分かってないのに、しゅっちゅう安易に使われている言葉。

 私たちが誤解しているのは、愛を「陰陽」でとらえているのに原因がある。

 プラスとマイナス。相反する二つの性質。良い・悪いという概念と同じ。

「愛」という素晴らしいものがあれば、「愛でない」「愛がない」ものもある、という理解なのだ。つまり愛とは「良いもの」に属するものであり、限定された条件によって部分として存在できるもの、と皆さんは思ってしまっているようである。

 TVコマーシャルで、「愛だろ、愛。」とか「大切なのは、愛です」とか言うことがある。でもそれは、世界に存在するすべてのものの中で「愛」と指して限定的に言ってしまえるものがある、という前提がある。逆に言えば、「愛ではない他のもの」がある。

 これは、私からしたら大きな間違いである。

 愛とは——



●この世界に存在する、すべてのもの。

(目に見えるもの、見えない思考や感情、概念や信念を含め)

 存在するすべてを支えているエネルギー。

 すべてを在らしめている根源的エネルギーとその発生源。



 ぶっちゃけた話愛とは「すべてのもの」を指す。

 私たちが愛とは思いにくいものも、キライなものも、厳しい状況すらも愛である。

 全部が愛なのに、私たちはこの世ゲームの展開の中で「(その人にとって都合の)良いものだけを指す」と決めつけた。

 決めつけて色眼鏡をかけたので、「愛でない」としてしまったものの中から愛や感謝を見出すことが極端に下手になった。自業自得、といったところだろうか。

 別側面から見たら、同一のものを見てもAさんには愛と思えBさんには愛だなんてとんでもない、と思えてしまう。つまり、見るほうの立場や都合によってころころ価値を変えるのが、この世の大勢にとっての「愛」なのだ。 



 例えば「神はいる」「神はいない」という真反対の意見がある。

 実はこれ、どちらも正しい。

 私たちが神だ。究極的には「神」と「そうでない、つくられたもの」をはっきり分けることはできない。要するにこの世界には「神以外いない」。その意味では、神はいる。

 ただし、今まで多くの人類が誤解してきたように、自分たちをはるかに超え、はるかに偉大な絶対神としての、信仰の対象としての「神」はいない、という切り口で言えば「神はいない」 。

 皆、どの切り口でモノを言っているのか、いちいち会話で説明しないので(したらかなり面倒だろう)、言葉上の誤解やすれ違いが発生する。



 あと、言葉は感情に左右される。

 たとえば、落ち込んでいる人に対して心からの慰めの言葉をかける人がいるとする。聞く方の精神状態がよくないと、場合によっては素直にありがとうと聞けない場合がある。相手に悪意がないのに、安全圏から安っぽい同情されているように思えてで、ムカッとする。

 言葉自体は、何にも問題がないのに!

 たとえ相手は心から言っているのだとしても——



●あなたの精神状態が物事を受け取りたいように受け取る。

 好き勝手に解釈する。



 同じ言葉でも、受け取り手のムシの居所や精神状態によってはゆがめてとらえられる恐れがある。さて、ここまでの話をまとめて言葉の不便さを確認してみよう。



①皆自分だけの国語辞典(ユーザー辞書)を持ち、内容が微妙に違う。

②言葉の定義があやふやなまま、乱用している状況がある。

③受け取り手の状態によっては、勝手な解釈が生まれる。



 言葉って、こ~んなに不便なのに。

 筆者はなぜ、こうもその言葉、しかも「文字」だけの執筆に力を入れるのか?

 誤解されまくり必至のこんな書を、なぜ色々言われながらも書くのか?



 例えば、ある人と組んで仕事をしているとする。

 相手が協力的だったら、仕事がスムーズに進みませんか?

 二人の力をうまく合わせられるからである。

 でも、相手が非協力的だったら?

 もう、仕事にならんでしょう。効率も悪い。生産性も低い。

 それと同じ現象が、ここでも起こる。

 言葉とは、確かに誤解を生みやすい、不便なツールだ。

 でも、あるケースにおいて、言葉はその不便さを克服し、お互いが通じ合える橋渡しの役を立派にこなすことがある。さて、それはどんなケースか。



●言葉を聞く(読む)側が、協力的な場合。



 つまりは、素直な心で読んでいる場合。

 ここから何か得よう、と積極的になっている場合。

 受け身ではなく、相手側からも歩み寄ってくれる場合。

 そういう場合に、メッセージの送り手と受け取り手の間に、言葉の表面上の意味を越えた次元で、エネルギー交換が行われる。そういう時、メッセンジャーの言葉が初めて生きる。

 本書の初期の頃の記事で、音を聴ける存在がいない場合、音は存在できないと書いたことがある。

 受け取り手がいないと、何者も存在できない。仮にできても、意味がない。

 スピリチュアル・メッセンジャーの言葉も、それ自体に価値があるわけではない。誰かに読まれ聴かれ、何かの魂の動きが生じてはじめて意味と価値が生まれる。



 だから、誰にとっても絶対的に価値のあるメッセンジャーもスピリチュアル本も存在しない。ただその対象を気に入って選択した人にとって、価値があると言えるのみである。

 その気に入った対象には、心がオープンになる。受け入れよう、という積極的・好意的な姿勢になる。

 皆さんが大して興味のないブログをたまたま見て、コメント欄で「ここ好きです!」「数あるブログの中でも、ここ最高です!」というコメントを読んで、「へぇ、そんなにいいか?」と疑問に思う時は、今日のお話を思い出してほしい。

 そもそも、姿勢が違うのだ。そして、何に心を開きたくなるかは人それぞれで特殊事情によって違いがある上、ある意味趣味のようなものなので、明確な優劣が本当に絡むことはそう多くはない。

 スピリチュアル発信者はめっちゃいるけど、確信犯的詐欺を除けばどれもそう大差ないじゃない。あとは趣味よ、趣味!

 趣味なのに、気に入ると「自分の気に入ったものは優れている」と勘違いする人がいる。



 私が批判を相手にしないのは、このためだ。

 協力的でない姿勢の人に、何を言っても時間のムダ。それよりか、ハートを開いて交流してくれる人を相手に、楽しくやってた方がいい。

 もちろん、批判にも「魂の問い」というのがある。真剣だからこその、ツッコミというものもある。

 でも最近、そんなにホネのある批判がない。皆、勢いだけあってお子ちゃまな発言ばかり。ナイフのように殺意だけはすごいけど、そればっかりで内容ゼロ。魂に響く言葉ゼロ。

 


●あなたが素直に読まないのなら。

 協力的でないのなら。最初から、批判する前提で読んでいるなら——

 言葉ばかりの本書は、あなたのお役に立てそうもありません。

 だからあなたの波動に合うものを見つけ、そちらで楽しくやってください。



 ただ、あなたが本書に何かを感じてくださり、興味を持って選択して読んでくださるならば、私の書く言葉はもしかしたら、言葉の限界を超えてあなたに何かを伝えるかもしれません。

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