第23話 その二十三

 月明かりで外は明るく照らされていた。

「姫様、伏せて」

 夜警が見回りをしている。

「町についたら馬車を用意してあるんで、そこまで頑張ってください。そしたら隣の国に行ってみましょう」

みまわりが過ぎ去ったようだ。

 従者の背中は頼もしくみえた。

 あなたが私の従者になってくれて良かった。

 あなたがなってくれてなかったら旅なんて出られなかっただろうしあなたのおかげで私の願いは叶えられそうです。

 ありがとう従者。










 道なき道を進んでいるとナ二か黒いネバネバしたものがそこにいた。

「なんだあれは……姫様下がって」

「な……なにあれ」

 ネバネバは姫、姫としゃがれた声を出して近づいてくる。

刀の鯉口を控え切りした。

ネバネバはこれ以上近づこうとしないようだ。

「なんだか怖いわ、幸い動きも遅いし先を急ぎましょうよ」

 二人は駆けてその場を去る。

「なんだったのあれ……」

「悪霊の類いの氣はしますが……」


 二人が町につく少し前

「なんだ!?これは」

 夜警の兵士が言った。

 ネバネバは広がって兵士を包み込んだ。

 兵士の絶叫は何か得体の知れないものに包まれて、夜の林には響かなかった。

「やっと、体を手に入れたぞ。待っていろよ、必ず姫を手に入れてやる……」

 死んだはずのバロン男爵の声で兵士は胸の内を吐き出していた。


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