第20話 その二十

 次の日

「従者、私と旅に出ましょう」

「嫌です」

「わがまま言わないでちょうだい」

「言っているのは姫様でしょう」

「主のゆうことは黙って聞くものよ」

「これは決定事項なの、聞き分けなさい。給金は前借り、一年分を先に払うわ」

「先にもらっても、使い道に困るんですが……」

「うるさい!」

「このままじゃ、一人で旅立てしまうわ、そんなのあなたが後悔するわよ!」

「なんですかその……」

「どうしても行きたいんですね」

「ええ」

「わかりました。私に考えがあります、しばらく待っていてください」

 そういうことになった。

 姫の心の声

(しめしめ)




 騎士団長の部屋の前に従者は来ている。

 ここにだけは来たくなかったんだが仕方ない、姫様のためだ。

 ドアを開けると、騎士団長が椅子に腰掛けて本を読んでいた。珍しく服を着ている。

「ノックもしないでなんの用だね」

「折り入って頼みごとがあるのですが」

「わかった。一つ条件をのんでくれたらいいよ」

 こちらはまだ、内容を言っていないのに承諾するとはどんな条件をいってくるのだろうか。

 騎士団長のことだ、ろくでもないことを言ってくるに違いない。

「条件とは……」

「姫を舐めてみたいんだ」

「最近思うんだよ綺麗に掃除した便器を己の汚物で汚すのが非常に氣持ちよいと、無垢な姫様を私が汚す、白い陶器が私の糞と尿とで汚れていく様がたまらない。汚れを知らないあの方を私が……ん~」

 冷たい目を従者は向ける。

「姫に頼んでください」

「勝手にするさ、君の願いというのは?」

 騎士団長に、姫がこのままだと無断で旅に出てしまうこと、従者一人だけで護衛するのは心許ないから何人か腕の立つ人間をつけて欲しいという願いを言った。

 レンとニコラスをつけようと言われたが、旅にライオンを連れていくのはどうなのだろ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る