第16話 その十六

 袋を担いだ男の姿はもう会場から消えている。

 考えるんだ。

 ピエロがゆっくりと近づいてくる。

 と動きが止まった。

 俺の後ろから、仮面の男が来てピエロの前に立ちはだかる。

 手に小手をつけて剣を持っている。

 あまりの威圧感に、ピエロは後ろに下がる。

 助かった。

 いつの間にかピエロの周りに、武器を持った黒ずくめの男たちが集まっていた。

 十対一か。

 全然助かっていない様だ。

 あの仮面の男も、多勢に無勢、どうしようもないだろう。

 どうすればいい、と考えていると、セバスチャンが来て縄を切ってくれた。

「お待たせしました。武器を持ってきてますよ」

 セバスチャンに礼を言って、刀を受け取った時には黒ずくめの男たちは全員のされていて、ピエロは逃げていた。

 この仮面の男、相当の腕を持っているぞ。

 くるりとこちらを向いて、

「ある時は仮面の男、ある時はサーカス団長」

(ん、なにを言っているんだ?)

「またある時は騎士団長、果たしてその実態は……」

(騎士団長?)

「へんたいだ!」

 仮面をすっと取る。

 素顔は騎士団長だった。

 騎士団長は相手にしないことにして、姫を取り戻しに駆け出した。

 どおりで腕が立つはずだ、並の使い手では相手にならないだろう、しかし何をやっているんだあの人は……

 謎が謎を呼んでいた。

 何を考えているのか全く分からないと思った従者であった。


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