第15話 その十五

 ピエロが出てきて、パントマイム、ジャグリングをした後に、なぜか俺を指定して、前に出る様に促す。

 姫様のそばを離れるわけには行かないので、断ろうと首を振っていると、姫がいいじゃない、面白そうだしと言って背中を押してきた。

人々の前に出されて、引くに引けず、仕方なく壇上に上がる。

 どこからともなく黒い服の男たちが現れて、縄でぐるぐる巻きにされた。



 

 何が始まるのかわくわくしてると、従者の頭にリンゴをのせて、ナイフで射貫くつもりらしい。

 ピエロは、ジャグリングをしながらナイフを従者めがけて投げつけた。

 ナイフはリンゴにではなく、顔面めがけて飛んでいった。

従者は首を傾けて飛んでくる刃をかわした。

 頬をかすって血がツーと流れ落ちる。

 私は従者に命中したかと思って叫びを上げた。

 当たっていなくて良かった。

 と思っていると、急に視界が真っ暗になった。



 このピエロは俺を殺そうとしていたのか、一体何が目的なんだと思っていると、いつの間にか黒ずくめの人間が無数にいた。

 さっきいた数より明らかに増えていた。

 一体何が起きているんだ。

 姫様は大丈夫なのかと、視線を向けると、黒ずくめの男が、人間だいの袋を抱えている。

 姫様の姿が見えないということはあの中に入っているに違いない。

 さらおうとしているのか。

「姫様を守れ!」

 と叫んでから誰か縄をほどいてくれと、廻りを見ていると、目の前にピエロが立っていた。

 ピエロをにらみすえる。

 俺は何をやっているんだ。姫様を守らなければいけないのに、自分が不甲斐なくて、仕方がなかった。

 歯をかみしめて、顎の筋肉が盛り上がる。

こんなところで、無抵抗でむざむざと殺されるのか。

 いや、どこかに活路があるはずだ。

 この状況を脱する方法が必ず。

 姫をさらった男の進路を確保しようと黒ずくめの男たちは衛兵と戦っている。

 数が多くて衛兵たちは苦戦しているようだ。

観客たちは戦いに巻き込まれない様に遠巻きに見守る人や逃げる人もいた。

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