第14話 その十四

「ちょっと従者」

「なんですか」

「あなたも、あのくらいリードできるようになってよ」

 姫様を、何言ってんだこいつ、無理に決まってるだろと思っている様な、目を細めて嫌そうに見つめた。

「さ、もう少しで芸人たちのみせものが始まりますよ」

「ちょっと、何話すり替えてるのよ。まあいいけど。確かに楽しみね、早く始まらないかしら」

 姫は興奮冷めやらぬ様子で日常とは違う空氣を楽しんでいた。











 

 みせもののための会場準備が終わった。

 赤いライオンが入場してきた。

 その背に少年が手を振って乗っている。

 会場がどよめく。

「ライオンよ」

「なんだあの色は」

「怖いわ」

「大丈夫なのか」

「服を着てるな」

「面白いわね」

 ライオンはピエロの装いだった。

 なんだかかわいらしくも見える。

 姫様は目を輝かせてすごいわねとつぶやいていた。

 あんなのに襲われたらさすがに殺されるかなと従者は思っていた。

 ライオンは、火の輪くぐりをしたり、二足歩行で歩いたり、玉乗りをしたり、少年の頭を口にすっぽり入れたりして、観衆を喜ばせていた。

 退場する際、うなり声を上げて去って行った。

 人々はあまりの迫力に、凍りついていた。

 後に続くは、蛇を口に飲み込む女、空中ブランコ、天井につるされた布にぶら下がる人、大人の足の裏に乗ってバク転をする子供、綱渡り、軟体人間。

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