第13話 その十三

 姫は息を弾ませていた。

 一方の仮面の人は息ひとつ乱していない。

「それでは次の準備があるのでこれで」

 姫はええと、顔を紅潮させながら答える。

 会場を出て、芸人たちの控え準備に使われている外に出向く。

(久しぶりに至高の時間を過ごしたな)

「調子はどうだ」

 一人の少年に話しかける。

「大丈夫だよ、ニコラスも機嫌いいし」

 少年は、ライオンのお腹を枕にして寝ている。

その毛並みは血の色をしている。

 ただならぬ獣の臭いが周囲に満ちている。

 ライオンは低くうなり声を出した。

「私には機嫌が良さそうには見えないな」

低く笑う。

「そろそろ出番だ準備をしといてくれ」

「はいはーい」

目の端に見知った顔が見えると思ったら、私より前に姫と踊っていたバロン男爵がいた。

 何をしているのであろうか。

「手はずは順調か」

「は!仰せの通りに」

「そうか楽しみだな」

 バロン男爵は黒ずくめの男と話していた。

「絶対に姫をものにしてみせる。誰にも渡してなるものか。お前たちの働きに期待しているぞ」

 何をしようというのだろうか、どうやって姫の心を捉えるのか興味があるが、何かきな臭いな。

「レンちょっと、あそこにいる白い服の男を見張っといてくれないか、ついでにあの黒ずくめたちの動きも」

「えー、めんどくさー」

「命令だよ」

「はーい、分かりました団長ー」


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