第8話 その八

舞踏の夜

 深更。

 窓がゆっくりと、音を立てずに開いた。

静かに人影がぬっと部屋の中に侵入する。

 無音でベッドのそばに近づいていく。

 侵入者の手が、ベッドで寝ている者に伸びその時、

「あなたはなにをしている」

 と、侵入者の首に刃を当てながら、耳元で長髪の男がささやいた。

「姫の寝顔を見にな。どうだ、交代の者をやるから私の部屋に来てくれないか」

「いえ、やめておきます」

「そんなこと言うものじゃないぞ」

 姫の従者はその時、股の間にあるものをぎゅっと握られていた。

「くっ」

 だんだんと力が増してくる。

 これは承諾しないと握りつぶされるぞと従者は思った。

「わかりました」

「よし」

 お互い離れると、騎士団長はさっと窓から飛び降りた。

 ここは最上階のはずだがといぶかりながら、そっと開いていた窓を閉める従者であった。



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