第6話 その六

何やら分からないが一番強そうだった奴が相手をしてくれるらしい。

「おや、あんたが相手をしてくれるのか」

 ああと、答えが返ってきて、お互い構える。

 双方動かない。

 相手を白眼視して氣配をみる。

 来ないならこちらから行くか。

「は!」

氣合いをかける。

 一息に間合いを詰める。

 打ち込みすれすれをかわされる。

 こちらが打ち込んだ隙に、強烈な一振りが空を切って向かってきた。

 木刀の柄を握っていた右手を上へ滑らせ、木刀の中程よりも上部に手を沿わせて切っ先を相手の首元にぴとりをつけた。

 双方とまる。

「おみごと」

 先ほど来ていた団長と呼ばれていた人間が近づいてくる。

「私が相手になろう、こいつでは物足りなかろう。さて、君の金玉はどれくらいでかいかな」







 ボロックダガーは直訳すると「金玉ダガー」と呼ばれる、非常に特徴的な柄を持ったダガーです。フランス語でも英語同様にDagueacuilettesと呼ばれています。「金玉」など恥ずかしくてとても呼べないヴィクトリア朝期の研究者によって命名された「キドニー・ダガー」と言う名称も現在一般的に使われています。このダガーは1300年頃現れ、17世紀末まで幅広い人氣を博していました。金玉や男性器を象ったダガーというのは異様に見えるかもしれませんが、例えばスペイン語では「勇氣がある」ということを「金玉がでかい」と表現するので似たような意味合いがある武器だと思われます。またボロック・ダガーは両足の間にぶら下げることが多く見られますが、中世風のシャレなのでしょう。

 このダガーは、主に日常生活での護身用として使われていましたが、騎士たちが戦場で使うこともありました。またスコットランドの伝統武器として知られるダークも、このボロック・ダガーから発展したものです。

              中世ヨーロッパの武術 長田龍太

新紀元社

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