第13話◆愛しき人

 〈ミサキ〉が目を覚ました時、

傍には不安げに自分を見守る《祖母》の姿があった。

「・・・バァちゃん・・・ココは・・・?」

「《病院》や。・・・まさかアンタまで『入院』せなアカンようになるとはなぁ💧」

「入院っ⁉️」


 〈ミサキ〉は驚いて起きる。

「・・・サトルさんは⁉️」

「アンタを抱えた時に《傷口》が開いてしもぅたみたいで💧可哀想に・・・💧ホンマやったら明日退院してたんが、一日延びてしもたわ💧」

 《医師》からキツく無茶をするなと叱られていた―・・・と、

〈フミ〉から聞くと〈サトル〉に申し訳ない気持ちで悄気(ショゲ)た。


「・・・バァちゃん・・・私は・・・」

「心配せんでもアンタのは『取り敢えず様子見』やから、今日はココで大人しぃしとき❗️

何ぞ変な《病気》にでもなったんか思ぅて、寿命が『3年(笑)』縮んでしもたケド―・・・」

 〈フミ〉はそこで言葉を止め、

〈ミサキ〉の手をそっと撫でる。

「・・・何とも無ぅて、ホンマに良かった・・・。私(うち)より先に逝かれてしもたら、どないしようか思ぅたんよ・・・」

 その切なげな《祖母》の微笑みに思わず〈ミサキ〉は涙ぐんだ。


 いつもは遠慮なしに(笑)、

乱暴な言葉を投げ付けて来たりもするが誰よりも孫である《自分》を、思い遣って大切にしてくれている事がひしひしと伝わって来た。

「・・・嫌やわぁ、バァちゃん。・・・私より長生きしそうなクセして💦」

 『感謝』の言葉を口にするのは恥ずかしくて・・・ついそんな悪態を付いてしまう。

 が。此処で自分の『決心』を伝えなければと、

「《多嶋(ほんけ)》の『海女』をバァちゃんで終わらせる訳にはいかんでしょ⁉️」

 そう言うと、

撫でてくれている《祖母》の手を握り返し、涙でグシャグシャになった笑顔を見せた。


「・・・アンタ、本気で・・・⁉️」

 〈フミ〉は〈ミサキ〉が『潜る事』を怖がっているのを重々承知している。

 その『原因』は幼い頃に、

海で亡くした《母親》にあるのだろうと思い・・・《海女》になる事も決して無理強いはしなかった。

 自分の代で絶える事も覚悟していただけに、

 今、初めて聞かされた〈ミサキ〉のその『気持ち』に驚きを隠せない。


「・・・母さん亡くしてから『怖い夢』見る・・・言ぅて、よぉバァちゃんにあやして貰ぅてたケド―・・・。

アレは母さんが『最期に見た景色』で、私もそうなるんや―・・・って、勝手に思ぅてた。

・・・やけど、違うって。

・・・ちゃんと《本家》の血が流れてるよ?って、私に教えてくれてた夢やった―・・・。

・・・スグには無理かも知れんケド・・・💧私も《結子(すくね)》の海女になりたい❗️・・・頑張るから・・・ね?」 


 しっかりとしたその力強い言葉に自分の《孫》の成長を沁々感じ、

 改めて『月日』の経つ早さをも痛感する・・・。


「・・・ほな、頑張って貰わんとな?」


 素っ気ない言葉とは裏腹に、

〈フミ〉は嬉しそうに目を細めた―・・・。




 この《病院》は完全看護らしく『面会時間』が終わると、

「ほな、明日迎えに来るまで大人しゅうしときや」

 と、言い残して《祖母》はとっとと帰ってしまった。


「・・・《個室》やなくても良かったのに・・・💧」

 〈フミ〉から手渡された《テレビカード》でテレビを観るも、

 減っていく数字は何だか・・・嫌な『カウントダウン』をされているような気分になり、画面に集中も出来ない。


『アカン💧《ネガティブ》になり過ぎてる・・・💦』


 この数日間で、

〈ミサキ〉の周りでは信じられない位・・・目まぐるしく状況が一変した。

 そんな中、

現在(いま)こんな風に『独り』で居る事も更に不安感を煽る。


 『・・・あ・・・』


 〈サトル〉も・・・今こんな気持ちで居るんだろうか―・・・と思うと途端に恋しくなり、

 〈ミサキ〉は自分の枕を抱えるとそっと《病室》を脱け出した・・・。




 ドアを小さくノックする音に気付き寝返ると、

 静かに開くドアから〈ミサキ〉がひょっこりと顔を覗かせている。

「あの・・・入ってもいいですか・・・?」

「大胆な《夜這い》ですね(笑)。・・・僕が『抵抗』出来ないのを知ってて―・・・💧」

 そうクスクス笑いながら、

〈サトル〉は身体を起こすと〈ミサキ〉を招き入れた。

「そんなんと違います‼️💦・・・サトルさんも淋しいんちゃうかなぁ~・・・って思ぅたから様子、見に来たんです💦」

「・・・サトルさん『も』?・・・《枕》まで持参して⁉️(笑)」

 判っていながら小首を傾げワザとに訊ねる〈サトル〉に、

 恨めしそうに口を軽く尖らせると赤くなる自分を隠すように、

 〈ミサキ〉は持っていた枕に顔を押し付けた。


『・・・可愛いなぁ・・・』


 〈サトル〉のそう思う気持ちが、自然と優しい微笑(かお)になる。

「ゴメン💦コレは僕の『意地悪』。気持ちが伝わったのかと思って・・・(笑)」

「・・・やっぱり淋しかったんですね?💧―・・・ゴメンなさい。私のせいで退院が一日延びてしもた・・・って―・・・」

 自分を介抱したが為に、

傷口が開いてしまった事を〈ミサキ〉は詫びるが、

「あぁ、それは僕が『自分が怪我人』だって自覚し忘れてただけですから、ミサキちゃんは何も悪くないですよ?

第一、僕のは『刺された』んじゃなくて運良く避(よ)けた時の『深い切り傷(笑)』みたいなモンなので、本当に大丈夫なんです💦」

 〈サトル〉は気にしないように、と言いながら自虐的に苦笑しているが―・・・。

 どっちにしたって『痛い』コトには違いがないのでは?―・・・と、

心配する〈ミサキ〉を余所にお構い無しで、

「・・・でもお陰で、今こうしてミサキちゃんとお話しするチャンス(笑)も出来ました。『不幸中の幸い』ってヤツですね(笑)」

 そう言うと最後は満面の笑みになっていた。


 《本人》は無自覚なのだろうが、その『ルックス』でそういうコトをを口にすると、明らかな《キラーワード(笑)》になる事すら本当に判っていなさそうだ。

 コレはコレで『心配』になるも、

〈サトル〉の『天然さ』加減が可笑しくて仕方がない。

「・・・また居なくなったらホンマに嫌なんで、今度こそ‼️

絶対、傍に付いてようと決めて来たんですっ❗️」

 失笑を堪えつつ、

〈ミサキ〉は《ベッド》横の椅子に腰掛けた。

「アハハ‼️―・・・なるほどね💦」

 大きく笑うと《傷口》に響くらしい。慌ててトーンダウンするも、

「・・・じゃあ―・・・。お互い『ウトウト(笑)』眠らないように、朝まで色んなコトを話そうか」


『・・・優しいなぁ・・・』


 〈サトル〉から連発される(笑)《キラーワード》は、

どうやら彼なりの『気遣い』から生まれて来るらしい。

 その『優しい無自覚』に魅了されたかのように―・・・

 〈ミサキ〉も笑顔で頷いた。


 


 「・・・サトルさんは、何で自分が《海女伝説》の記憶を持って生まれて来たんか―・・・考えた事ありますか?」

 ―・・・他愛のない話も落ち着いた頃に、

〈ミサキ〉は何気に訊いてみた。

「・・・そりゃあ・・・。でも、きっと何か《意味》があるんだと思ってました」

「―・・・意味・・・」

 〈サトル〉の発した言葉を自分も口にしてみる。

「ええ。でも『意味=一つ』だけじゃなくて、沢山の《答え》があると僕は思います。

・・・例えば、その中の一個は『ミサキちゃん達に出逢えた事』ですね」

「・・・私らに―・・・ですか⁉️」

「そうですよ。だって僕に《海女伝説》の記憶が無ければ、ミサキちゃん達に『出逢えた確率』なんて・・・きっと無いでしょう?(笑)

《日本》は地図で見れば小さな国だけど思った以上に広いからね💧・・・こんな風に『お話し出来る』のも、その記憶のお陰だし・・・。

もしかしたら、この会話にも《意味》があるのかも知れない。

―・・・結局、《無意味》なモノなんて『存在』しないんじゃないかと、僕は思いますが・・・」


 確かに。

そう言われてみれば、そんな気がする。

 ―・・・しかし・・・。


「・・・じゃあ、葉子さんや瀧井センパイが殺されたんにも・・・《意味》があったんですか⁉️」

 〈ミサキ〉の非難めいた問い掛けに〈サトル〉の表情が曇った。

 唇を噛み、考えた後に口にする。


「―・・・逆に《無意味》だと、それはあまりに悲しくないですか?」

 

 ・・・その通りだ、と思った。

そんな『意味』さえなく殺されてしまっては、

 本当に二人共浮かばれないだろう

 ・・・なら、

一体何の為に―・・・⁉️

 〈ミサキ〉は以前から浮かんでいた『疑惑(こと)』をぶつける。

「・・・二人は何の為に殺されんとアカンかったんですか⁉️

・・・ただ《海女》やったから―・・・なんですか⁉️」


 〈サトル〉は無言で頷いた。


「・・・わざわざ《祠岩(ほこらいわ)》の《呪符》盗んでまで・・・?

それで殺さなアカンかったんにも―・・・『意味』があったってコトなんですか⁉️」

 

 《無意味》では浮かばれないと判っていても。

 それでも、どんな理由が《意味》としてあろうが『理不尽』としか思えない―・・・。

 そんな〈ミサキ〉の想いが痛い程伝わってくるだけに、

 〈サトル〉も益々、苦渋に満ちた表情で頷くしかない。


 その『理不尽』が《意味》と成すならば―・・・自ずと見えてくるモノがある。

 〈ミサキ〉は遂にそれを口にした。

 

「・・・この事件の『犯人』は―・・・

《島長(しまおさ)》の『生まれ変わり』の人間(ヒト)なんですか・・・?」


 〈サトル〉も観念したように目を瞑り俯いたまま小さく頷いた・・・。


『―・・・やっぱり・・・』


 ショックだった。

 

・・・しかし、

それ以上にショックだったのは〈サトル〉が既に、

 その事を知っていながら《犯人》を隠していた事だ。

「・・・サトルさんは何で黙ってたんですか⁉️

もっと早くに《警察》にその事言ぅてたら・・・ここまでにはならんかったん違いますか⁉️」


 〈ミサキ〉はただ悔しくて、

詰(なじ)るような口調で責めてしまう。

 〈サトル〉も黙って堪えてはいたが、本当に辛かったのだろう。

「・・・じゃあ《警察》には何て言いますか?《島長(しまおさ)》の生まれ変わった人間が、

《姫》の生まれ変わりの女性(あま)を殺してしまうかも知れません。

何とかして下さい‼️―・・・って?

そう訴えたトコロで、信じて貰えると・・・キミは本当に思っているの⁉️」

 悔しさを滲ませ・・・今にも泣き出しそうな顔をして〈ミサキ〉を睨んだ。

 

 ・・・初めて自分に見せる―・・・、

その『感情』を露(あらわ)にした〈サトル〉に思わず息を呑むと、

 そんな重大な事を知っていながら誰にも言えずにいた〈サトル〉の『苦悩』や、

 それに気付きもしないで暗に〈サトル〉を責めた自分の『愚かさ』が途端に悲しくなって、

 〈ミサキ〉の大きな瞳からはポロポロと涙が溢れ出た。


「・・・ゴメンなさい―・・・私・・・」

「あぁ・・・泣かないで―・・・💦」

 〈ミサキ〉の表情の変化に機敏に反応し、

 その《涙》を見るや〈サトル〉はあたふたと困窮する。

「ミサキちゃんに泣かれてしまうと僕は・・・『自分の無力さ』に遣りきれなくなってしまう―・・・」

 そう言いながら・・・自身も悲し気に刹那に涙を流した。

「・・・僕が《島長(しまおさ)》の生まれ変わりである男性(ひと)を捜し出せたとして―・・・。

果たして、この事件を未然に防げたか『自信』は全く無いけれど・・・。《島長(あのひと)》が、

ここまで堕ちてしまった現在(いま)となってはそうなる前に・・・、

この僕にも本当は何か出来たんじゃないか―・・・という『後悔』はずっと頭から離れないんです・・・。

もっと早くに見付けたかったと、そればかり―・・・」


 心底そう思う気持ちは〈サトル〉の表情を見れば、直ぐ判る。


「・・・《島長(しまおさ)》の生まれ変わりだから赦されるなんて、元より『言い訳』にもならないけれど・・・だけど―・・・もうあれじゃあ・・・」

「・・・⁉️」

 〈サトル〉の嘆きに、

「―・・・まさか・・・〈サトル〉さんを刺した《犯人》も―・・・⁉️」

 〈ミサキ〉は驚き言葉を失くしてしまった。


 二人の《海女》を殺した動機が『そういう事情』として、

無理矢理にでも納得出来るにしても、

 今回の犯行に関しては恐らく《海女伝説》とは無関係なハズである。


 しかも、


《海女》以外の人間にまで凶行に及ぼうとした《犯人》に対し、

自らの身を挺してまで怪我を負っていながら・・・

 〈サトル〉は《警察》には『知らない』と庇っているのだ。


「・・・何でそこまでして《犯人》を構ぅてるんですか⁉️」

 運良く『軽症(コレ)』で済んだから良かったが、

 下手をすれば《被害者》同様『生死を彷徨う』羽目になっていたのかも―・・・と、

 考えただけで〈ミサキ〉は血の気が引きそうになる。


『・・・サトルさんが《島長(しまおさ)》の生まれ変わりの人間(ひと)を捜す為に《結子(すくね)》に来たんは判るケド―・・・』


 いくら『人がイイ』にしても度が過ぎる・・・。

 その時、不意に気が付いた。

「・・・そうせんとアカン『意味』がやっぱりあるんですね・・・?」

 〈サトル〉が小さく頷いた。




 この〈サトル〉が何故?そんなにしてまで捜し、

 そこまで庇う『訳(いみ)』が知りたい・・・。


「・・・私には―・・・その《意味》を教えては・・・くれへんのですか・・・?」

 〈ミサキ〉は急に淋しい気持ちになり、まるで縋るような眼差しで〈サトル〉を見つめた。

「多分・・・私は《姫》の『生まれ変わり』ですよね?」

 そう訊かれて〈サトル〉は目を逸らすも、〈ミサキ〉は問う。

「・・・私は―・・・さっきので自覚しましたケド・・・、

サトルさんは―・・・それも『とっくに』判ってはったんですよね?」

 目を合わそうとしない〈サトル〉のその態度こそが、

 『肯定』していると確信する。 

「・・・やったら・・・。《姫》である私にも何か出来る事が、あるんや無いですか―・・・?

サトルさんだけ独りで全部抱えて悩んでるのを、ただ見てるしか無いのんは・・・私、辛いんです」

 そう言うと、

〈ミサキ〉は〈サトル〉の手に自分の手をそっと重ねた。

 その手の温もりに触れ、

〈サトル〉は視線を〈ミサキ〉の手から・・・そして、

 本人へと向けて行く。


「・・・ミサキちゃん―・・・キミだって《姫》の生まれ変わり故の『苦しみ』があっただろう?」

 

 さっきのあの状況から、

〈ミサキ〉も〈小菅(しまおさ)〉と同様に、何かしらの『記憶の呪縛』に囚われていたであろう事を察したが、

 〈ミサキ〉はそれを認めた上で力強い眼差しで言い切る。


「私のんは『私』でしか解決出来へんコトなんです。

・・・でも《島長(しまおさ)》の苦しみの元は《姫》さんが『原因』なんですよね?―・・・やったら、私にも何か出来るハズです。

・・・ただ《海女伝説》を知ってただけのサトルさんが、

そんな皆の苦しみまで背負う事ないんと違いますか?」

 その言葉に、

〈サトル〉は甘く切ない笑顔を向けた。

「・・・僕は『関係ない』ですか?」


「―・・・エッ⁉️」


 〈サトル〉の思ってもみない言葉に〈ミサキ〉は戸惑う。

 《海女伝説》に関わる人物の『生まれ変わり』が・・・《姫》や《島長(しまおさ)》の他にも存在するというのか―・・・?

 頭の中で目まぐるしく色んな思いを巡らすが、

 答えなど出てくるハズも無い。


「・・・サトルさんは・・・一体『誰』何ですか?」

 〈ミサキ〉の問い掛けに、

「・・・僕は『僕』でしか無いんです」

 そう申し訳なさそうに微笑むと、

〈ミサキ〉の手を包み込むようにして握った。

「・・・だけど、僕にとって―・・・《姫》の『生まれ変わり』のミサキちゃんも、《島長(しまおさ)》の『生まれ変わり』である《犯人》も・・・大切な、とても大切な『愛しい人』なんです」


「・・・愛しい―・・・」


「ええ。僕は、その『愛しい人』を護る為に『生まれて』来ました」


 〈サトル〉の口調は、

今までに無い位に穏やかで・・・涙が溢れて止まらない〈ミサキ〉の中にじんわりと溶け込んでいくようだ。


「・・・僕の《犯人》に対する現在(いま)の行動は、人として間違っているでしょう。―・・・でもね。

僕は《島長(あのひと)》が、どんな罪を犯しても・・・絶対的に憎むコトは出来ないんだ・・・」

 ・・・それは今回、

この件で自分が殺されてしまってたとしても、

 〈サトル〉は《犯人》を決して恨まないと断言しているようにも聞こえる。

 そうまでして『護る為』の《意味》って何なんだろう―・・・?

 〈サトル〉が《海女伝説》の記憶を持って来た『意味』の、

その答えの一つにあるのだろうか?


 〈ミサキ〉のそんな考えをも見透かしたように、

 包み込んだ〈ミサキ〉の手を見つめ〈サトル〉は応える。

「・・・《島長(あのひと)》に・・・。

こんな罪を犯す為に生まれ変わって来た訳じゃない事と―・・・その本当の『意味』を教えてあげなくちゃいけないんです―・・・」

「・・・本当の?」

 〈サトル〉は静かに頷いた。


「それは・・・私だと出来ませんか?」


 〈サトル〉に包み込まれた手を、

今度は〈ミサキ〉が包み返して微笑む。

 たった・・・ほんの少し前、

最初に『力になりたい』と言った時より―・・・その声も、

 〈サトル〉に向けられた眼差しまでもが、更に力強かった。


「・・・ミサキちゃん、キミは強いなぁ―・・・」


 〈サトル〉は思わず顔を綻(ほころ)ばせる。

『私のんは《私》でしか解決出来へんコトなんです・・・』

 ・・・〈ミサキ(このコ)〉は、

 こんなにも自分の弱さに屈する事なく、前を向く『強さ』を持っているというのに―・・・

 自分は無力だと打ちひしがれていたコトが恥ずかしいと〈サトル〉は猛省した。




 結果がどうなろうとも・・・


 己れの『弱さ』に溺れてしまった〈小菅〉を救わなければ―・・・。

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