第二章 Memory corridor
第28話 プロローグ
『ごめん、ごめんなさい!』
何を謝っているのか分からないけれど、そんなに泣かないで。
ただただ立ち尽くす私に縋りついて、見たことも無い顔をして泣いているのだ。
謝りたいのは私の方なのに。ずっとずっと心の中で謝り続けていた筈の私も、何故謝りたいのか今の私には分からない。
そんなに辛そうな顔をするのなら私のように忘れてしまえばいいのに。
頬を伝う涙を感じ、そっと右手で拭ってみる。
自分が泣いている理由も分からない。だから私は足下で泣いている人に笑いかける。
「忘れてしまえばいいよ…」
タイマーの音が響き、私は目を覚ました。
数ヶ月前の状況を何時も夢に見るのだけれど、未だに思い出せない、不可解な感情。
しかしその感情は、すぐに不安に塗りつぶされてて行く。
着替えて洗面所へ行って顔を洗い、リビングに移動する。
「おはよう…お母さん」
朝ご飯を作っているお母さんは、驚いたように振り向き目を見開いた後、辛そうに顔を顰めて言った。
「…おはよう。えっと…っ…」
「いってきます」
「…いってらっしゃい」
だからさ、泣かないでよお母さん。
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