第26話 因果応報

 

 *直接的な暴力表現や残酷表現があります。

 ご注意下さい




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 沢村とユミは夜道を車で走っていた。

 自分達は上手くやったと、明日も自分達にとっての平和な日常が続くことを微塵も疑わずに。


 街を出て、田舎道を走る。

 車道の横には広大な農地があり、つまらない景色はまだまだ続くだろう。


 車の通りは殆ど無く、後ろを着いてくる車も対向車も暫く見ていない。


 変わらない景色に眠気を覚え、欠伸を噛み殺す。

 隣で寝ているユミを一瞥して、不意にバックミラーを見ると、背後からヘッドライトの光が近づいてきた。特に興味も無くし、前を見る。


 二人が乗っている車に、背後から猛然と迫ってくる車があった。フロントボディの一部がへこんだ、白いライトバンだ。

 運転している男も助手席に乗っている女も、同じように虚ろな目をしてブツブツと呟いている。

 前方に見えた車にGPS反応がある事を確認して、更にスピードを上げるのだった。



 ドンッ!


 背後から衝突され、沢村の眠気は一気に覚めた。

 寝ていた筈の助手席に座っているユミから、小さな悲鳴が漏れる。

 思いの外に強い衝撃を受け、ハンドルを取り損ねた車は、衝突してきた車と一緒に農地まで吹き飛んだ。


 横転した車から命からがら這い出した沢村は、まだ車内に残っているユミを引っ張り出した。


 ライトバンからの光に照らされる沢村は、事故の衝撃から立ち直ると、激昂した。


「何やってんだ馬鹿野郎!!運転もまともに出来ねえのかクズが!」


 ふらりとライトバンから出て来た人物を、逆光になって良く見えなかったが、それでも女だと認識した沢村は、少しばかり怒りを治めた。どうやって利用してやろうかという考えが頭を巡る。


 女はフラフラとしながら沢村に近づいて来ると、目の前で倒れそうになり、沢村はこれ幸いと支えるために抱きとめた。


 じっとそれを見ているユミは、呆れて苦笑いをした。


「大丈夫です…がっ!」


 太腿に痛みを感じて呻き、顔を顰めて胸の中にいる女を見ると、そこには虚ろな目をして泣き笑いの顔をして沢村を見つめている、実験台と呼んでいた女がいた。


「お前ぇぇ!!」


 何が起こっているのか分からないユミは、目を眇めて逆光になっている沢村を見ていると、男に押し倒された。驚いて大きく目を見開き、押し倒して来た相手を見ると、自分が誑し込んで利用していた男がいた。


「きゃぁぁぁぁぁあ!何やってんのよあんたぁ!」


 ユミの叫び声に反応した沢村が、腕に抱いている実験台の女を突き放し、ユミの下に向おうと振り向いた瞬間、反対の太腿に痛みが走り、倒れ込んだ。


「い、いってぇぇえ!な、なんのつもりだストーカー女ぁ!」


 沢村の脚に刃物を突き立てるために身体ごと飛び込み、倒れ込んだ沢村の脚にしがみついている女を沢村は身を捻って殴り付けた。

 女は仰向けになりめちゃくちゃに腕を振る沢村の腕に、こちらも刃物をめちゃくちゃに薙ぎ払い切りつける。


「や、やめっ…やめて」


 両手両足から大量に出血する沢村に馬乗りになった女は、そっとその胸元に頬を寄せる。


「やっとつかまえた。沢村くん、私沢村くんの役にたったでしょ?」


 沢村は恐怖に見開いた目で女を見て、何度も頷いた。


「良かった〜。でもね、もうダメみたいなんだ〜。最後に抱いてくれるよね?こんなに愛してるんだもの」


 女は沢村のベルトを外し始めた。


「ユミちゃんの言う通りにしただろ?何で逃げるんだよ。あんなクソ男より俺の方が役にたっただろうがぁぁあ!!」


 男はユミの服を力任せに破り捨てる。


「いやぁ!やめて!ごめんなさい!本当はあなただけなの!あなただ…げぇ!」


 自分のベルトを外し終わった男はユミの首を締めながら重なっていく。


 ◇◆◇◆◇◆



 ブルージェイルから報告があるという事で、俺は監獄Cafe鉄拳に向かった。


「昨日、沢村が見つかりました。一応どうなったのか報告したいのですが、詳しく聞きますか?」


 巻き込まれたのは俺だけじゃないが、ゲンを呼んでいないところを見ると、余り良い報告ではないのかもしれない。


「そうだな…俺は聞いとこうか。ゲンには…内容次第で話すことにする」


「分かりました…」


 華奈からの報告はかなり詳しいものだった。


 沢村達の乗っていた車が、轢き逃げの容疑者二人が乗ったライトバンと事故を起こしたらしく、農地で見つかった。


 ライトバンに乗っていたのは、例のDVDのパッケージに写っていた女と、もう一人は男。


 この二人は裏会社を設立したって事になっていた。

 この会社に乗り込んだ時にブルージェイルが拘束したのは、全員バイトで、二人は警察に捜索されていたらしい。


 現場は凄惨なものだったらしい。

 沢村は両手両足を刃物で切り裂かれ、下半身は裸。

 更に陰茎を切り取られ、隣には自分で首を掻き切った女が寄り添うに寝ていた。


 沢村と一緒に居た女も、ゲンと真奈ちゃんの元同僚で、こちらは男に首を絞められていた。

 首を絞めた男は自分の胸を刃物で刺し、動けなくなるまで動かない女を犯し続けた。


 この事件は四人の死者を出して終結した。


 悲惨過ぎる。

 ゲンには沢村が死んだ事だけを教える事にした。

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