第24話 ゲスの王様

「え?これ何?」


 俺の隣で寝転がりスマホを弄っているユミが驚いたような声をあげた。


「どうした?」


 戸惑いの表情で、自分のスマホを差し出してくるので、その画面を見てみると、つい先程やっていたプレイが写し出されていた。


「沢村くん、いつの間に撮ったの?」


 ユミは恥ずかしそう聞いてくる。

 撮ってない。と言うより、思い出していただけなんだが、俺が思った通りの画像がそこに写し出されている。

 驚いて、瞠目した。


「ねぇ、沢村くん?」


 少し膨れて上目遣いをしながらこちらを見つめてくる。

 ハッ!あざとい。

 こんな奴を口説くのは容易い。


「撮ってないよ?ユミの事をずっと考えてたから、写っちゃったのかもな」


「もぅ!そういう事言っちゃうのが沢村くんだよね」


 チョロすぎる。

 優しくして、少し甘い言葉を囁けば股を開くバカ女だ。

 しかし、言ってみて思った。そんな事が出来たら面白いかもしれないと。


 試しに考えてみる。

 今見ているユミの姿が写らないかと念じてみる。


「あ、メールが…」


 俺の手元にあるユミのスマホが震えた。

 メールが着信したようで、俺はそれを勝手に開いた。


「え〜?どんなトリックなの?」


 思った通りの画像がそこには表示されていた。

 面白い。これはやりようによっては美味しい思いが出来るはずだ。


「沢村くん?なんか悪い顔になってるよ?」


 どうやら俺は笑っているようだった。



 この力を知った俺とユミは、最初に色々試す為に生贄を準備した。


 前の会社で俺が手を出した女は四人。そのうちの一人はユミだ。残り三人のうち二人は会社を辞める時の騒動で離れて行ったが、あと一人は未だに付き纏ってくる。


 見た目がいい訳でもなく大人しいタイプで、少し優しくしたら簡単に堕ちた。今まで男に優しくされた事がなかったのだろう。いい歳して処女だったからな。


 こいつを取り込むのはユミの提案だった。

 仕事で失敗して、誰かに擦り付ける事を考えた俺は、ユミに相談した。

 ユミは社長の娘によく怒られていた事で、社長の娘を恨んでいるのもあり、その社長の娘が可愛がっていたデブに擦り付けようと提案してきた。


 そこで、デブと仲の良かった女に目をつけ、そいつを堕とし、擦り付けるように偽装をさせた。


 結局バレて辞めさせられたのだから意味はなかったな。会社を辞める時にそいつを捨てたが、未だに付き纏ってくる。


 実験台には丁度いい。


 最初に女の家を調べた。

 実家に住んでいる女の家庭をめちゃくちゃにして、俺に依存させる事から初める。


 一人娘で大事に育てられていて、優しい父と母がいる。じゃあ、その両親が裏切ればどうなのか。

 父親と母親それぞれの携帯に、それぞれの不倫現場写真を送った。偽物だけどな。それだけで劇的に変わった。家庭がガタガタになり、女が不安定になってきたのを見て、俺達は笑っていた。

 これ程簡単に人は騙せると。


 止めに父親とその女がホテルに入って行く写真を母親に送り付けると、完全に壊れた。


 女が家を出され、俺がそれを優しく助けてやる。


 今度は、女の身に覚えがない不倫疑惑をかける。

 ユミが誑し込んだおっさんを使った。


 精神不安定になっている女にはそれに抗うすべはなく、身に覚えのない借金をかかえ、それを助けるという名目で、先ずは俺とのセックスを撮影し、それを売る。勿論俺の顔にはモザイクがかかっているが。

 後は転がり落ちるようにどんどんアダルトビデオを撮影して、俺に金を運んでくる奴隷の出来上がりだ。


 この実験結果を見て、俺達は自信を持ち、次々に女共を利用していった。


 ただ、この辺りには厄介なやつらがいる。

 誰に頼まれた訳でも無いのに、勝手に正義とやらを振りかざす間抜け集団、ブルージェイルだ。

 既に街では俺達のことが噂になりつつあった。

 そろそろ奴らは動く頃だろう。


 俺はずっと考えていた事を実行することにした。最後に一人引っ掛け、そいつを友田に対する復讐の道具にする。


 折角上手くいっていた計画を破綻させた友田には恨みがある。


 先ずは友田の家を調べた。

 すると早速面白いものが見れた。友田の家を覗いている女がいたのだ。


 タイミングを見計らって、画像を送り付けると、二人が追いかけっこを初めた。笑いが止まらないな。


 友田を嵌める上で理想的な女は、俺が最初に実験台にした女のような奴だ。

 地味で、人に逆らえない女。


 街にはブルージェイルが彷徨いている。明らかに警戒されているようだった。

 だから以前のようにワンクッション入れるようなやり方が出来ない。あのやり方なら、声をかけたうちの半分位は上手くいくのだが。

 今回はその場で連れされなければ、次はない。最後の一人を慎重に選ぶ。


 街を見回していると、理想的な女がいた。

 買い物に来ていたのだろう女は、ずっと俯き加減で歩き、明らかにサイズの合っていない服を着ている、地味な女だ。


 こいつを連れ去り、ビデオに出させた後に俺が助け、全て友田のせいだと刷り込み、ブルージェイルに駆け込ませる。


 実験台の女と、ユミが誑し込んだおっさんには引っ掛ける役目をさせていた。こいつらは最後に全ての責任を負って貰い、後始末をしてもらう予定だったので、飼い殺しにしていた。


 見つけた女に二人を向かわせた。


 どこで見ていたのか、すぐさまブルージェイルが現れ、失敗に終わる。使えない奴らだ。


 これはもうこの街で稼ぐことは出来ないかもしれない。俺は直接動くことにした。


 ブルージェイルを嗾けて、友田を狙わせたが、思わぬ邪魔が入った。

 予想外にも男はブルージェイルの幹部と思わしき大男を退ける程の強さを見せた。

 友田の知り合いらしかったので、ついでに此奴らも潰しておこうと思った俺は、この男とブルージェイルを潰し合わせる事を思いつく。

 俺が安全に逃げ遂せるように、ブルージェイルも潰しておきたかった。


 男と女は付き合っているようで、俺から見るとその女は簡単に騙せそうに見えた。バカ女のような話し方。女を利用して、男をブルージェイルを叩く道具にする。


 早速、女に近づいた。


「はぁ〜…めんどくさいですね。何で私が貴方と遊びに行かなければならないんですか?そんな自分が声をかければ絶対に女が喜ぶとでも思っている態度が気持ち悪いですね。私には本当に素敵な人を知っているの。貴方とは月とミジンコくらいの差がある人。ああ、貴方がミジンコですよ?勿論それにね…」


 完全に見誤った。

 なんて冷たい視線を向けてくるんだ。マネキン見てえな女だな。

 軽い女だと思ったが、それはあの男にだけだったようだ。こういう女は俺には堕とせない

 めんどくさい。


 もういい、男と連絡取れないようにすればいいんだ。実験台とおっさんはもう完全に俺の人形だ。

 今更一つや二つ罪を犯させたとしても、全ての責任を取るのはこいつらだ。


 全てをブルージェイルのせいにするような写真を送り付け、そうだな…今にも犯されようとしているような写真なら飛び出していくだろう。

 後は男が完全に連絡を取れないようにするには…そうだ!


 二人にこの女を車で轢き殺させよう。


 そう命令して、俺とユミは街を出る事にした。


 ◇◇


 狂気に犯された沢村自身も、少しずつ壊れていく…














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