閑話 ブルージェイル

 いったいどうしちまったんだ。

 ここ数日、イライラとする事が多すぎる。

 お陰で何時も食べている飴の減りが早い。


「カナさん、俺が行ってきます」


 あたしの名前は 樋口ひぐち華奈かな

 いつもの溜まり場で、先程まで色々な話を聞いていた。その中に、今あたしを一番イラつかせている原因があった。


「あてはあるのかい?」


「任せてください。すぐに引き摺ってきます」


 目の前にいる大男は、真剣な表情で任せろと訴えてくる。身長はあたしより頭一つ以上高く、筋肉ダルマというのがしっくりくる。眉毛が薄くて厳しい顔をしているし、腕には鷹のタトゥーがある。普通の人なら関わりたくないと思わせる風体で、見た目に違わぬ腕自慢というやつだ。

 この溜まり場にはそんな男が沢山いるが、この男はそんな中でも数人いる別格の内の一人。


 そんな男が、あたしに許可を求めてくる。なぜか?

 あたしの方が強いからだ。


 あたしはこの中で一番強い。だから、あたしがこの中のリーダーになっているわけだ。


 この集団の名前は『ブルージェイル』という。

 この辺りではあたし達のことを知らない者はいない。


 そんなあたし達に、いや、あたしに喧嘩を売ってきた奴がいたわけだ。ただじゃおかない。


「じゃあ、連れてこい」


 追い払うように手を振ると、男は少しだけ頭を下げ、踵を返した。

 出口に向かって歩いていく男は、鷹のタトゥーの上から、青いバンダナを腕に巻き付け、扉から出ていった。


『ブルージェイル』のリーダーがあたしだって事は、メンバー以外にはあまり知られていない。

 普通に考えて、あたしみたいな女が、こんな厳つい男達より強いなんて思わないだろうからね。

 だから、あたしはあたしで動く事が出来る。


「ちょっと出てくる。何かあったら、連絡しな」


 そう言って、奥にあるドアを一瞥して、溜まり場を出た。


「友田元気。ぶち殺す」

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