第95話 採掘の仕様
マーリン発案による爆破場所の爆破で、強引に道を作って脱出した二人は、下層の廃坑探索を開始した。
今回は前の探索とは違い、レストがモンスターのドロップ品も集めたいのと、マーリンがレベリングをしたいという理由で、【天魔波旬】は使用禁止だ。
二人は殆どボス戦と変わらず、レストが壁役となり、マーリンが魔法で攻撃し、倒せなかったモンスターをレストが倒す(爆撃)という流れで行った。
また、マーリンがレベルを上げる為にしていた、【ファイアウォール】で移動範囲を制限し、限定された場所から入ってくるモンスターたちを【ファイアサークル】で一網打尽にする方法を応用し、レベリングをした。
方法は単純で、【挑発】と爆裂玉によって大量のモンスターを集め、【ファイアサークル】などの魔法を撃ち込む方法だ。
デメリットとして、服が燃えた時に水を掛ける必要があるのと、マーリンのMP不足で打ち止めとなるのと、マーリンが音で索敵をしないモンスターに襲われる可能性がある。
でも、水は下水道で大量召喚した余りが残っており、レストのポーションでMP回復できる。
その結果、道中で採掘したのにも関わらず、マーリンの短時間でレベルが5上がった。
この一週間の苦労は何だったのか、と思わず声に出し、スルーを決め込んだ二人がいたらしい。
そんな出来事があった二人は現在、下層全てのマッピングを終え、行き止まりの下層最後の採掘ポイントにいる。
「ふっ!ふっ!ふっ!」
だが、採掘をしているのはレストだけだ。
最初とは違って追加のリュックサックを装備し、アイテムの選別すら終わったマーリンはピッケルがないのと、とある理由でやっていない。
二本のピッケルを装備して振るっているレストの背後で、一本道から来るモンスターの警戒に当たっている。
しかし、ここに来る直前、あのレベリングしていたのでモンスターは一度も来ることはなかった。
暇になったマーリンはカーンと連続的な採掘音を奏でるレストに大声で切り出した。
「レストよ」
「うん?」
「採掘はどんな感じじゃ?」
この質問にはマーリンが採掘に参加しない、とある理由が関わっている。
問い掛けられレストは一度手を止めて、メニューで採掘したアイテムの確認し始めた。
「やっぱり、スキルの有無で最大品質は一段階、絶対とは言えないけど一部の採掘物が出ない仕様かもしれない」
レストが発見したこととは、【採掘】スキルによる採掘への影響だ。
これはマーリンが選別して要らないと判断したアイテムを貰った時、レストが発見したことで、それを検証するためにマーリンは参加しなかった。
それで判明したことが、スキルの有無で品質と採掘物の変動だ。
【採掘】スキルを持つレストが廃坑の下層で採掘すると、品質7までの石、品質6までの青銅石、品質5までの銅鉱石、品質4までの鉄鉱石、品質4までの宝石の原石、品質1までの銀鉱石と金鉱石を採掘したが。
【採掘】スキルを持ってないマーリンは、品質6までの石、品質5までの青銅石、品質4までの銅鉱石、品質3までの鉄鉱石、品質3までの宝石の原石しか採掘できてなかった。
今の採掘によって、石と青銅石とトパーズの原石まで最高品質が出て、銀鉱石が一つだけ増えていたので、前のマーリンだけの採掘(レストのピッケル使用)と比べ、レストはそう結論付けた。
マーリンはレストの意見を聞いて、別の仮説を上げる。
「品質1の採掘物はそれ以上に下がらないから、ドロップしないという考え方もあるんじゃ」
「でも、それじゃあ【採掘】スキルって必要なくなるよ?」
スキルの有無が品質を基準にドロップが決められる可能性を述べられ、レストは本音を漏らす。
それに対してマーリンもあり得そうな答えを返す。
「所詮、スキルポイント1の差じゃ」
「あーなるほど」
【採掘】などの採集系スキルはスキルレベルがなかったのを思い出し、納得した表情を浮かべるレスト。
すると、マーリンは思い付いた内容を言う。
「…あと、絶対とは言えんが、体力の消耗や必要な筋力、ドロップ率の変動もあるかもしれんぞ」
レストは自身とマーリンの採掘の違いを思い出した。
魔法主体のプレイヤーで体力が低いと言えど、レストが1回休憩するのに対し、マーリンは2~3回休憩すること。
筋力差があるけど、自身が1回叩いて採掘物が出るのに対し、マーリンは3回叩いて採掘物が出ること。
セット装備の
それを踏まえて考えたレストは頷き、まだ確証がない話をする。
「その可能性もあるね。実は、感覚的な話なんだけど、ドロップ率ってピッケルを装備しているか、してないかで変わっているような気がする」
「…どういうことじゃ?」
「えっーと、装備している時にレアな採掘物が多く出ているかも、って思っただけ。数値で出した訳じゃないから、本当かは分からないけど」
「あり得そうじゃな…」
マーリンは白くて長い髭に指を通しながら頷く。
メニューで【宝物庫】の設定を入手順に変えたレストが立ち上がった。
「取り敢えず、10回ずつ交互で試してみる」
装備している場合と装備してない場合を3周した。
結果は、
「2対1で装備した方が高品質が出るけど…これ特定の素材に絞ってしないとダメだわ」
「金鉱石とかの存在じゃな?」
「うん。レアな採掘物ほど品質もドロップ率も低いから、品質で判断は無理」
「なら、レアな方は?」
「最高品質が低いほどレアだと過程したら、これは1対2で装備してない場合の勝ち」
「…何とも言えんのぅ」
装備したかの有無でドロップ率が良くなるかは分からなかった。
そもそも、こう言った場合の算出方法をどのようにすればいいか分からない二人は、この検証を諦める。
焼きフナをしかめっ面で食べるレストが締めくくった。
「取り敢えず、装備してさっさと終わらせるかな」
「ワシも手伝おうか?ゲーム初の竜種、天空龍に早く会いたいんじゃろ?」
「まぁね。手伝いは…いいや。後で譲渡される方が時間掛かりそうだし」
今まで以上の速度で採掘を再開したレスト。
マーリンも理由を説明されて納得し、暇な時間でステータスを弄ることに決めた。
そして、これから5分後に事件が起こる。
「マーリン」
「なんじゃ?」
「新しい通路、というか階段を発見したっぽい」
「ま、マジか!?」
マーリンが慌てて振り返ると、レストが松明で照らし出した行き止まりに穴があり、階段らしきものが存在した。
装備を戻したレストは壁の一部に光を当てる。
「ここ、よく見ると時々あった木の柱がある」
「……下層なら何処を掘っても同じというギミックを利用した隠し要素じゃな。奥にまで採掘するプレイヤーは居ないから見つからんと言った感じかのぅ」
「うん。でも、あれに気づくか、掘れなくなるまで採掘すれば見つけられる救済処置があるよ」
顎髭を撫でるマーリンと唇に指を添えるレストは、どちらともなく顔を見合せ、口元に笑みを浮かべて頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます