第65話 遊び心とロマンが溢れ出た結果

「フフフ。ビー玉製造機の完成だ!!」


 レストは完成した3つの道具を見て、腕を組んで満足そうに頷いた。


 この3つはビー玉製造機のコンセプトである“作業効率を上げる”という目標を達成する為に、レストが寝る前や暇な時に考えたものだ。

 それぞれの用途が違う3つの道具に、贅沢にもマッドネスタートルの甲羅と鋼のインゴットを合わせて作られた金属が使用されており。

 耐久値が非常に高く、効果で耐久減少軽減があり長期間使える。

 また、マッドネスタートルの甲羅を使ったことで偶然だが火属性耐性上昇の効果も付いたため、火を扱うビー玉作りでも安心して使える道具となった。


 1つ目は、7枚の黒い金属板が縦に4枚、横に3枚で網目のように重なった(100均の引き出しとかに使いそうな)“仕切り板”。

 2つ目は、木で出来た取っ手が一つと、円型の黒い金属板が中心に向かって曲線で凹んだ(美味しいチャーハンを作れる)“中華鍋”。

 3つ目は、ふちのある黒い金属板が坂となって、時にはカーブで曲がり、時には螺旋を描く(子供がビー玉を転がして遊ぶ)“玩具”。


 製作時間は休憩と世話を除けば神殿内時間で15時間以上。

 特に最後の“玩具”は一番時間を掛けていた。

 ビー玉製造機改めて“仕切り板”と“中華鍋”に“玩具”の3つ。


「よし作るか」


 どう見ても、これからビー玉作る為に使用する道具には見えない。


 まず、レストが準備したのは神殿の備品、熔鉱炉に1時間入れても無傷だった七色の光沢がある金属トレイ。


「向きはこれでいいから、これを置いて」


 “仕切り板”を確認した後に、レストはその金属トレイの上に置いた。

 この為に作られた“仕切り板”は金属トレイにぴったり合う。

 レストは“仕切り板”で空いた場所に、神殿の粉砕機で砕き、【鍛治の秘法】の影響で10等分に分けた“耐爆ガラス瓶の粉末”を入れる。

 区切られて10ヶ所に粉末がある金属トレイを、ガラスを融かす溶解炉へ突っ込んだ。

 ガラスが融けた頃に取り出して確認すると、10ヶ所にある“耐爆ガラス瓶の粉末”を真っ赤な液体のようになっていた。


「うん。いい感じ」


 10ヶ所全ての場所から大きなピンセットで真っ赤なガラスを掴み始めた。

 全てのガラスが別の場所へ漏れてないことを確認できたレストは、安堵の息を吐く。

 この“仕切り板”は今までビー玉1個ずつ融かしていた作業を、一度で複数行えるようにするものだ。

 これにより一度に1個のビー玉を作る工程が、一度に20ヶ所の場所でガラス瓶2本分のビー玉を作れるようになった。

 取り出したビー玉1個分のガラスを金属の作業台に置き、ピンセットで転がして玉を作り始める。

 本来ならここで、バーナーを使って形を整えつつ、外側が冷めるまで転がし続けるのだが、今回は違った。


「ほい」


 ある程度丸まった所で“中華鍋”に投入し、転がしてはバーナーで加熱して、再び転がす。

 自身が見えるまでピカピカした“中華鍋”の中をガラスは綺麗な球体になりながら、縦横無尽に転がる。

 前までは、ピンセットを使って転がした際に付いた跡を消す時間が必要だったが。

 ある程度丸まったガラス玉を“中華鍋”に入れて転がし続けることで、ピンセットの跡は最初の分だけなので本来よりも短時間で済む。

 また、ピンセットで転がして作るよりも、傾けた“中華鍋”で転がして作った方が簡単である。

 なので、5分から最大15分掛けていた作業が2分まで縮んだ。


「最後の仕上げだぁ~」


 レストはビー玉へバーナーをもう一度掛けた後、“中華鍋”で付けた勢いのまま“玩具”の入口から突入させた。

 ビー玉はそれなりの速さで転がり落ち、転げた先の登り坂の半分だけ進んだ後、僅に傾いた登り坂の影響で下り坂のある方へ曲がりながら進む。

 それが何度か続いた後に連続の急カーブ、さらに螺旋階段のような坂。


「おっおっおっ!!」


 最後の下り坂を越えたビー玉は、“中華鍋”のような半球状の場所へ入り、クルクルと同じような場所を何度も周回する。

 ただ、回る速度は徐々に落ちて行き、円から楕円の花に進む道順を変えた。

 そして、進む力が無くなった。


「入ったぁー!!」


 レストが歓声を上げる直前。

 滑り落ちたビー玉が半球状の一番位置が低い所に空いた穴へ入った。

 落ちたビー玉は、あらかじめ置いてあった羊の布で覆った金属トレイに受け止められる。

 それを確認したレストは、満面の笑みでガッツポーズを決めた。

 “玩具”はレストが発言した通り、最後の仕上げである。

 例えるなら、“中華鍋”は手動で行う形状を整える作業の第1工程、“玩具”は自動で行う形状を整える作業の第2工程だ。

 同じような作業を二度やることで、ビー玉を限りなく球体へ近づける狙いがある。

 と言ってもそれは建前で、本音は『遊び心とロマンが溢れ出た結果』というレストの趣味だ。


「次…あっ、冷めてる。作っている間は温める必要があると」


 再び温め直したガラスで、レストは残りを作り始める。

 最終的に、炉に金属トレイを入れたまま左手で“中華鍋”を傾け、右手でバーナーとピンセットで作業をするという形で落ち着いた。

 完成したビー玉は本来の最後の仕上げである、ガラスをゆっくり冷やして歪みを発生させないようにする徐冷炉へ入れて。

 徐冷炉の経過時間短縮というトンデモ仕様で、10秒足らずで完成する。


名称:ビー玉(耐爆)

種類:道具 品質:9

耐久値:5/5 重量:1

効果:爆発耐性上昇微。耐久減少軽減微。投擲可能。罠設置可能。

参考:レスト作。


 ビー玉製造機で作ったビー玉は、自己最高の品質6を越えた品質9のビー玉を作り出し、平均品質が8~9という結果も叩き出した。


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遊び心とロマンは何かを楽しむ上で大切ですね。

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