第64話 芝生の上で昼寝をしたい

 現在のFMGで植物を育てる場合、温暖な気候によってこまめな世話は必要とせず、現実時間の3日に1回は水やりをすれば育つとされる。

 だが、品質の低下や収穫量の減少というデメリットが確認され、推奨はされてない。

 するとしても、仕事で忙しい人や農業をサブにしている人だけ。

 なら、推奨されている育て方はというと、現実時間の1日に1回は草むしりや水やりも含めた世話をするというものだ。

 このやり方で品質上昇や収穫量増加、成長速度、土質の低下を防げると確認されている。

 さらに、世話のやり方次第で品質も収穫量なども上げることが可能性だ。

 例えば、水を変えるや、農薬と肥料をあげるなど、検証は済んでいないが仮説段階で有効とされている。

 それらを参考にしたレストは、“何が生えるか気になる!!”や、“育てるなら少しでも良いものにしたい”や、“農薬は出来るだけ使いたくない”という理由で、


「ふぁ~~」


 ゲーム内時間の1日に1回は世話すると決め、午前3時にログインした。

 もちろん、レストはこの時間帯に起きるため、昨日は早めに寝ている。


 ちなみに、願った後の出来事だが。

 新しい布袋作った後に余った土を回収して保管所に置いたり。

 新記録であるHP142回復される初級ライフポーション、最高MP70からMP101まで回復量を増やした初級マナポーションの在庫を各100個まで量産したり。

 何となく、マッドネスウルフの牙入り銅の片手剣(攻撃力特化)、マッドネスタートルの爪入り銅の片手剣(耐久値特化)、マッドネスラットの歯入り銅の片手剣(確率で毒微)を作ってアリスに遠隔譲渡したり。

 鋼のインゴットでバケツ、スコップ、シャベル、ジョウロ、伐採用オノ、おたま、釣り針を作って鋼の扱いに慣れようとしていた。


 テントの中で腕を伸ばしながら、あくびをしたレストは、頬を叩いて眠気を飛ばす。


「さっさと終わらせて寝よ。【神工房】」


 早く終わらせることを決めたレストが、転移後に果樹園まで走って向かったことで、日差しの影響もあり、完全に目を覚ます結果となった。

 眠気が飛んで微妙な気持ちになったが、コンパクトチェアで体力の回復しながら、【万物創造】で創り出した生命水をジョウロに入れ続ける。


「やっぱ気になる。はぁー…」


 自作のジョウロは上部が無い正方形のような形で、側面の1つに両端の鋼の棒が付いた取っ手があり。

 取っ手の逆側の側面には、木の棒出来るだけ細くしてから鋼を巻いて作った歪な注ぎ口があり、上部から覗くと側面から内側へ貫通する棒が見える。

 この注ぎ口だと全ての水を出せない欠点があるが、レストは注ぎ口の穴を潰さずに取り除く方法を知らないので、3度失敗した辺りで今は諦めている。

 なので、注ぎ口の問題と歪な部分などの改善や、ジョウロと言えば流線的な形にしたいなどのこだわりが見ているだけで次々浮かび、レストは胸のモヤモヤをため息として吐き出した。


「あっ、シャワーみたいなやつ作った方がいいかな」


 レストは途中から出した従魔の卵を撫でるのを止め、ジョウロに視線を向けたまま、思案顔で作った当初に思い付かなかった蓮口の作り方を考える。

 ジョウロの蓮口は加工がやり易い分類に入る木で、彫刻刀と錐で削って作ることを決めた。


 ある程度生命水がジョウロに溜まった辺りで卵をしまい、僅かに生えた草を抜き、余った自作の肥料を撒く。

 そして、土が唯一剥き出しと中心。可能性の種を植えた場所から螺旋を描くように水やりした。

 

「シャワーみたいなやつ作った方がいいな…。まぁ明日、じゃなくて今日作ればいいか」


 ジョウロの注ぎ口から出る水の勢いが強くて、降り注ぐ水の通った地面は抉れて水溜まりが出来る。

 それで蓮口の重要性を理解したレストは、今日のスケジュールに蓮口作りを追加し、手で濡れた地面を整えた。

 最後に、僅かに剥き出し金色の種へ濡れた土を被せる時に、レストは優しげな声音で言う。


「早く育たないで良いから丈夫に育てよ」


 この後、レストは植えた場所の近くで寝転がり、心地よい日光浴で眠気に誘われてからログアウトした。



 ゲームでは昼過ぎの時間帯である10時前にログインしたレスト。

 神殿内でログアウト場合は、ログインしても街に出現せず、神殿内のログアウトした場所へ出現することが発覚した。

 つまり、神殿へ転移後にログアウトすれば、フィールドにテントを設置しなくてもその場所へ戻ってくることが可能だということ。

 実際問題として、転移スキルは人前で使えないので意味の無い発見だが。


 あと、もう一つ発見があった。

 傾いた太陽で照らされる果樹園の一角、芝地に空いた土が見える場所。

 雑草と見るからに違う植物が生えていた。


「やっぱり、これが可能性の種か…」


 可能性の種があった場所に生えた二葉の小さな芽。

 そこを掘ってみると金色の種に毛みたいな根があった。


「良かった…」


 想像以上に早く発芽したのに驚いたが。

 なにせ植物を育てたのは小学生以来だった上に、FMGの初農業だったのだ。

 レスト無事に育てられて安堵からしりもちを着いた。


 その後、「丈夫に育てよ~」と言いながら慎重に世話をしたレストは、あのジョウロでも地面に近付けて、ゆっくり水やりすれば、地面が抉れないことを発見した。

 これにより、今日のスケジュールから蓮口作成は外れる。


 世話を終え、生産エリアに着いたレストが深呼吸して心を落ち着かせた瞬間。

 不敵な笑みを浮かべる。

 だって、今日作る予定ものはイベントの途中からずっと考えだけで、実行しなかったなものなのだから。


「待っていろよ、。今から作り出してみせるから」

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