第13話 長かった…

「…痛あぁ」

「…」


 レストが神殿で爆裂玉を大量生産して投擲の練習をしたあと、【神工房】で昨日の場所に転移すると目の前に女性がいた。

 そして、お互いにぶつかり、尻餅をついたような体勢になる。

 目を瞑って声を上げる女性に対して、レストは無言で昨日の自分を叱咤してた。

 もしかしたら、このスキルの存在が芋づる式のバレる可能性があるのだから。


「…一体何が」


 金髪の女性が目を開け、青い瞳がレストを映す。

 女性は人族で約160センチ、胸元が膨れた銅の鎧、腰に銅の片手剣を下げた、ロングヘアーの綺麗な顔立ちの美少女。

 だが、無表情と抑揚のない声、いかにも寡黙といった雰囲気で、人付き合いが苦手そう思わせる。


「…大丈夫?」


 幼い容姿をしたレストに少女は、抑揚のない声で子供へ話しかけるように言葉をかける。

 だけど、レストはこの状況どう対処しようと高速で頭が回って、言葉が届いていない。


「…あっ」


 少女は、子供の見た目をしているが大人の可能性に気づく。

 あっという声でレストも目の前で、話しかけられているのに気づく。


「…」

「…」


 お互いに同じ格好のまま、見つめ合う。

 先に動いたのは少女だった。


「…あのだ「ぶつかってすみませんでした。お詫びの品です。では、さようなら」……」


 だが、レストは何か言われる前に逃げろと考え、少女の言葉を遮り。

 メニューから初級ライフポーションを取り出し、譲渡ボタンを押して渡したあと、レストは敏捷をもの言わして逃げた。


「……」


 大丈夫と声をかけようとしたら当然逃げられ、子供に無表情で怖いと言われたことを思いだし、ショックで固まった少女。


「…あの声どこかで」


 少女は何かを思い出そうとしながら、譲渡されたポーションの情報を見る。

 そして、見た情報に無表情が崩れ、目を見開いて言った。


「…幻の初級超ライフポーション」



「よし、行くか」


 街から離れ木漏れ日の森まで全力ダッシュで逃げて来て、さっきの反省とこれからのことを決めたレストは森の中を進む。

 さっきの反省とは、転移してくる所を見られた事と高い効果のポーションを渡したことだ。これからは個室の宿で転移し、パニクってもアイテムは渡さないようにすると反省した。

 これからのことは、もしかしたらあの少女が異常に強力なポーションのことを周りに教えている可能があるので。少なくとも第2世代が来て、少し経つまでは街へ戻らずにフィールドの探索とレベリングも兼ねて旅をすると決めた。


「おぉ、モンスター発見」


 レストは森に入ってすぐにモンスターを見つけた。

 ビッグマウスLv1とアイコンが出た宿敵を。


「距離的に大丈夫だな。そぉーいっと」


 10メートル離れた所からこちらに近づいてくるネズミへ、早く試したいレストは赤いビー玉を投げつける。

 爆裂玉はネズミの顔に当たり、木を巻き込んで2.5メートルの範囲爆発した。


「どうだ!!」


 爆風を耐えていたレストが爆心地へ目を向けると、大きなクレーターがある。

 さらに遠くに、赤色のHPバーがなくなったネズミがいて。ちょうど光の粒子になって拡散し、ドロップアイテムを残し消えた。

 レストの視界に映る緑色のHPバーと青色のMPバー、その下にある黄色の経験値バーが少し増えていて。


「やっと勝てた!!」


 サービス開始から10日かけて、死なずにモンスター討伐に成功した。

 どう見ても過剰な威力の爆撃だったが。


「ドロップ品も初ゲット!!」


 レストはドロップ品鼠の毛皮に手を伸ばし、触れた瞬間に、メニューが勝手に開いた。


「【宝物庫】さん自動回収機能付きだったとは…」


 メニューには『【宝物庫】でドロップアイテムの自動回収しますかYes/No』とテロップが出ていた。

 レストの中で、他のスキルに比べて地味だと思っていた【宝物庫】に、隠された機能があり驚いた。


「これ使うとバレるかもしれないし」


 ドロップアイテムが無くなる現象を見られたら他のプレイヤーに何か勘ぐられるかも知れない、と考えるが。


「…でも、それ以上に爆発で飛ばされたモンスターの所までドロップアイテム回収は面倒!!」


 爆心地から50メートル飛ばされた鹿の所まで行き、これからも爆発の度に取りに行きたくないと思い、レストはYesを押す。


「そうだ、ユニークスキルですと言えば良いじゃん」


 だが、レジェンドスキルに比べてユニークスキルは劣るが、世間一般的には1つでも持っていたら有名プレイヤーである。

 現在ですら獲得者は5人も越えてないのだから。

 レジェンドスキルというレジェンドスキルと6種類のユニークスキルを持っているプレイヤーであり、知り合いのプレイヤーの居ないボッチプレイヤーであり、ゲーム世界に閉じ籠ってろくに情報収集をしてないプレイヤーが結論付けた。


「うん??送り先…」


 自動回収の送り先候補としてインベントリ、宝物庫、保管所があった。そして、色々操作している内に気がついた。


「何かパッとしないとか言ってすいませんでした」


 レストは【宝物庫】に謝る。

 【宝物庫】は神殿の保管所へアイテムを送れ、逆に保管所にあるアイテムを取り出すことができ、実質無限にアイテムが持てる。

 パッとしない所か、このスキルもレジェンドスキルに相応しい強力な機能を持ったスキルだった。

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