第14話 初イベント
──グォォオオ!!
現実では8月10日12時、ゲーム内時間では3日目の午後0時。
レストにとって、ログイン後初めての深夜。
フィールドの様々な所で大型生物の咆哮が聞こえ。
そして、本当のイベントが始まった。
後に、多くのプレイヤーが殺されたこの日の夜を、『暴獣の宴』と言われる出来事である。
◯
現実では見られないような満天の星空と怪しく美しい三日月。
川沿いに小さなテントが張られ、焚き火と近くの石にレストが座り、メニューを見ながら呟いた。
「スタンピートイベントだったから大量にモンスターがいたのか」
レストが見てたのはメニューに載っていたイベントの告知で、木漏れ日の森でモンスターが大量発見した理由だった。
内容は8月10日から3日間までモンスターが大量発見して僅かに経験値量が上がるというイベントだ。
「イベントならしょうがないよね」
レストは遠い目をしながら、綺麗な夜空を見た。
「こんなことになっても」
レストは周囲に目を向ける。
テントから5メートル離れた場所には、大きなクレーターのある地面、半壊した河川、幹で折れた木々。
木漏れ日の森とは言えない、見晴らしの良い場所になっていた。
これをやったのはもちろん、レストである。
【宝物庫】への謝罪を負え、素材を集め、大量のモンスターを倒し、夜になる前にキャンプは川の近くだろという理由で今いる場所へ来た。
そして、夜になるとモンスターの群れが何度も襲ってくる。
【気配察知】と【視線察知】ですぐに気づいたレストはモンスターたちを迎撃した結果だ。
昼間の段階で前より多くなと思っていたが、夜の襲撃で多すぎると思い。ログアウトして情報収集しようとしてメニューを見て、今回のイベントのことを知った。
「ああ、また来た」
レストは炸裂薬を手に持ち、多数の視線と気配を感じる所へ投げた。
爆裂玉ではない理由は遮蔽物が無くて、多くの敵を倒すには炸裂薬の方が向いている。
ちなみに、レストが遠くまで投げられるのは筋力値が高いからである。
「…どっか行ったか。イベントは想定外だったけど爆発物たくさん作っておいて良かった」
レストはふぅーと息を吐き、【宝物庫】で回収したドロップアイテムのログを見ながら、宝物庫から予備の炸裂薬を出す。
FMGの夜はモンスターの強化と出現モンスターの一部変更、フィールドにいるプレイヤーへ群れで襲撃されるようになる。
今回のイベントでモンスターが増えたため、夜を出たことがないレストは知らないが襲撃回数も増加している。
レストは昼間と夜間の戦いでレベルが2上がり、爆発範囲を強化する【爆撃強化Ⅰ】、爆発ダメージを強化する【爆殺強化Ⅰ】、夜を見やすくする【夜目】を習得した。
さらに2度の襲撃がされて少し経った頃。
──グォォオオ!!
森に奥から突如として、震えるような雄叫びが聞こえた。
「えっ、なに??」
レストは森苺のジャムを作るのを止め、声の方へ向く。
そして、本当のイベントを知らせるクエストが届いた。
イベントクエスト『暴獣討伐』
内容:スタンピートの原因であるモンスターが動き始めた。各フィールドにいるの暴獣を討伐せよ。協力しても単独でも構わない。
報酬:???
「もしかして、あれが暴獣!!」
クエストを見て、レストはさっきの咆哮をしたのが暴獣だと理解する。
同時に、
「何か近づいてない」
薄暗くて目では分からないが、木が折れる音、地響きが少しずつ大きくなるのが聞こえる。
まるで、こちらに向かって来るように。
「レベル低いし、生産系のソロだから無理」
そう判断したレストは、簡易テントセットや簡易料理セットを急いでインベントリへ入れ、【隠密】を使い森の中を逃げる。
イベントモンスターということは爆発物使っても勝てない可能があり、スキル構成も戦闘スキルがほとんどないから。
「ラッキーまた、見つけた」
暗い森の中、マップを頼りに南の街がある方向ではなく、東にある緑園の草原の方向へ進んでいる。
その間、レストは襲ってくるモンスターを爆裂玉で倒すのは兎も角、目の前にある素材を拾うのは一種の病気だろう。
向かっている方向は街へ行きたく無いのと、暴獣が来るであろうルートから離れた草原よりの森の浅い場所を目指している。
だが、
「うそぉぉ、何でこっちに!!」
背後から少しずつ大きくなる破壊音と獣の声が聞こえ、マップに表示される赤黒い獣のアイコン暴獣がレストの方へ距離を詰めている。
途中から素材集めも止め、必死な形相で逃げているレストだが、視界が不自由な上に足下が悪くてあまり進めていない。逆に暴獣はレストより速く進んでいる。
「グァア!!」
「もうこっちまで来た!!」
恐怖で必死に足を動かすレスト、その背後から追いかけてくる黒い巨体動物。
そして、暴獣は雄叫びと共に巨体に相応しい腕を上げ、レストへ振り下ろした。
これが暴獣の宴。
夜のフィールドで突如発生した暴獣がプレイヤーを襲い、逃げようにも暗闇と邪魔するように大量発生したモンスターで遮られ、多くのプレイヤーに夜の恐怖を植え付けたトラウマイベントである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます