第12話 メインウェポン

『【自爆】を習得しました』


 レストは街の死に戻りした直後、アナウンスが聞こえた。


「…まじか」


 最後の爆発に呑まれた光景とスキル習得を知らせるアナウンスで悟り、レストが項垂れる。

 【自爆】スキルの習得方法が自爆で、あの爆発で自ら死んだことに、気がついたのだ。


「もしかして、そういうためのスキル」


 ふと、レストは創造者権限を思い出した。

 そして、【神匠】の創造者権限は、作ったアイテムの強力な効果で自ら死なないようにするためのものだと考えた。

 確かに創造者権限には、ダメージ無効や爆発に吹き飛ばされなくなる効果があるが完全に的外れ。

 このスキルは本来、PvPイベントなどで自分が作った武器を持っている相手からの攻撃を無効化するためのスキルなので、効果はあるが自爆に関して管轄外である。


「とりあえず実験かな」


 レストは【万物の創造者】にはなるべく頼らず、自力で解決する方法を探ため神殿に帰ることを決め。

 路地裏に入り、【気配察知】や【視線察知】で確認したあと【神工房】を使った。



「結論。爆発威力が強すぎる」


 場所は生産ルームの実験場。

 レストは先ほどまで様々な実験を行った。

 投擲して爆発したり、遠くから石を投擲して爆発させたり、装備無しで爆発させたり、自分の足元で叩き割って爆発させたり。

 その結果、【爆発耐性Ⅰ】【罠設置:爆弾】【罠解除:爆弾】【罠操作:起爆】【罠操作:不発】を習得する。

 レストは後半の習得したスキル構成を聞いて、思わず「爆発物は投げるのではなく、置いていけと」と溢した。


 何もしてない炸裂薬を使った実験で分かったことは。

 自爆判定されるのは爆心地から半径5メートル。

 効果範囲も5メートルだが、爆風が発生する。

 装備無しでは爆心地から10メートル離れた場所でも飛ばされ、飛ばされ方によっては死ぬ。

 装備ありだと、受け身状態で7メートルならぎりぎり耐えきれるが、油断すると吹き飛ばされる。

 自爆では25メートルの爆発し、威力も桁違いに上がる。


 普通の炸裂薬の威力を知るために、【存在改造】を使い実験もした。

 衝撃を加えると爆発する効果のみでは、【神匠】で微爆発は強化され小爆発になるので出来ず。小爆発は半径1メートルが有効範囲で、中爆発だと範囲2.5メートルが有効範囲だ。

 爆発強化小の効果は、小爆発のみだと有効範囲が半径2メートルになり、中爆発のみだと半径5メートルになる。爆発強化小は爆発応じて2倍となることが分かった。

 自爆時威力強化の効果は、小効果の爆発のみ実験は爆発強化同様に半径2メートル、半径5メートルだった。中効果では半径2.5メートル、6メートルと少しぐらいだった。中の効果は2.5倍だと分かる。

 だが、爆発強化を入れて実験すると、爆発に応じて小同士で4倍、小と大だと5倍の有効範囲となる。爆発×爆発強化×自爆時威力強化となる恐ろしい仕様だと発覚した。

 さらに、爆発が強くなれば強くなるほどダメージが上がる。爆発ダメージ上昇が付いたら、桁違いに強くなった。


 ちなみに、ここまで正確に分かるのは、実験場にあった設備のお陰である。


「でも、創造者権限使うのは負けた気がするし」


 さらに、レストは創造者権限使って実験もしている。

 ダメージ無効化状態だと爆心地に居てもノーダメだが、吹き飛ばされる。

 爆風無効化したら、吹き飛ばされないがダメージは無効化できず。

 両方使うと最強。


 創造者権限を使えばダメージを負わないが、レジェンドスキルの存在がばれやすくなるデメリットがあるので使いたくないが。

 それ以上に、駆け出しとはいえ生産プレイヤーとしての意地の問題で、工夫してどうにかしたいとレストは考えている。


「小分けにするが一番楽な解決方法だけど」


 炸裂薬を投げた時に全然思ってたのと違う軌道で飛んでいったのを、レストは思い出して言う。


「どうせなら投擲しやすくもしたい」


 それからレストは生産ルームへ行き、様々な爆発物を作り出す。

 時には爆発し、時には新たな炸裂薬を調合し、時には失敗し、時にはログアウトして情報収集し、時には強力な爆発物もした。


「……出来た」


 どうにか、レストは明日を向かえる前に完成させた。


名称:爆裂玉壱式

種類:道具 品質:3

耐性値:20/20 重量:1

効果:衝撃を加えると微爆発する。攻撃力+5。自爆時威力強化微。爆発ダメージ上昇微。爆発強化微。与ダメージ上昇微。爆発威力収束。投擲可能。自爆可能。罠設置可能。

参考:レスト作。取り扱い注意。


 創造者効果を省略し、試作で品質もまだまだだが、次回以降はこのレシピで作っていくことになる。

 実験では爆発威力収束の効果で、爆発範囲1/2倍になり、収束した分だけダメージが上がる爆弾が完成した。

 見た目は炸裂薬の液体と同じ赤色のビー玉。

 爆裂玉はレストのオリジナルレシピであり、耐爆ガラス玉と爆裂薬の液体を【錬金】の合成で作られた特殊アイテムである。

 ちなみに、特殊アイテムは微や小が付かない効果が付く【錬金】で作られたアイテムのことだ。投擲可能や自爆可能、罠設置可能などの行動に関係する効果は錬金と関係ない。


 製作方法は爆裂薬完成時に任意の試験管は爆発耐性を持つ耐爆ガラス瓶を選び。

 錬金釜へ爆裂薬の中身を慎重に入れたあと、鍛冶で耐爆仕様のガラス瓶を融かしてビー玉を作る。一瓶で5つ作れる。

 10個のビー玉を錬金釜へ入れたあと合成すると完成する。

 メリットとしては爆裂薬1つで10個の爆裂玉を作れ、【錬金の秘法】を獲得すればさらに数が増やせること。

 デメリットは【鍛冶の秘法】を獲得しない限りガラス瓶が2つ必要で、ビー玉を作るのが難しいこと。


 あと、爆裂玉壱式という名前はレストが考えたもので、素材や新たな作り方を見つけ次第、改良して行くことになるだろうからと壱式にした。


「明日たくさん作ったあと、練習してから探索に出るぞ!!」


 こうして、レストの武器が完成した。

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