第9話 運営さん本気出し過ぎ
「【神工房】」
卵を撫でて精神を回復させたレスト。
せっかく得た力なのだから使わないと勿体ないよねと考え、今日1日は【万物の創造者】で色々試すことに決めた。
【万物の創造者】は神工房内で使う予定だ。
スキル発動と共に、レストを金色の光が包むと次の瞬間、別の場所へ転移する。
「………」
数十秒経ち、ふぅーと息を吐いたレストは、
「間違いました。失礼しました。【神工房】」
【神工房】でさっきまで居た宿屋に戻る。
「いやいや、何あれ。工房っていうか別物じゃん!!」
ヤバいスキルだと知っていたので、心の準備はしていたが予想外だった。
思わず大声で言ってしまうほど。
「あれ、ぜぇーたい」
レストが転移した先には白い世界があった。
正方形の白タイルが敷かれ、両側の空高くまで伸びた大きな白柱群が道を示すように先まで続く。
「エンドコンテンツ枠だろぉーー!!」
行き着く先には壮大で、隅々まで緻密に作られた美しい白亜の大神殿。
全然、工房じゃなかった。
○
「さて、行くか」
再び、神工房へ来たレストは神殿内の探索を行うことに決めた。
マップの使い赤線を辿りながら、4ブロックに分けられた神殿内の最初の場所へ進んで行く。
「マップは進めば埋まるのか」
本人は知らないが運営の仕業である。
分かっていたら面白くないという理由で、マップ機能が大雑把になり、おすすめの順路が記し、自分の力でマップを埋めていく仕様にアップデートの時にした。
そして、住居エリアにある扉を開けると。
「何で和風の家が!?」
目の前には、木と白塗りの壁に屋根が付いた和風の門。
レストがノックをして「失礼します」と言いながら入ると。
鯉が泳ぐ小さな池と中央に桜の木がある庭。
古き懐かしい、和風屋敷と呼ばれる建物があった。
そして、ぽかぽかした日射しと心地良いそよ風。
庭を一望できる縁側。
そっと置かれたお茶とおかき。
そっと手に取りお茶を飲み、おかきを食べる。
「もしかして、住居エリアって全部このクオリティ」
進んだ先には、何処かの秘境にある温泉旅館、エルフが住んでそうな家の形をした木、崖の上に立つお城、薄暗い森の洋館など、理想的な家からネタ枠の建物まで目白押しだった。
「洋館にメイド服と執事服があるなんて」
備品もネタ満載だったと記しておこう。
次にレストが来たのは生産エリアと呼ばれる場所だった。
「何故に近未来風」
コンクリートみたいな床、ガラス張りとメタリックな壁、天井にある光源の白い光と床や壁にある青線の光が。
ガラス越しに見える生産設備も、光る赤線や見た目が。
道中あった理由不明な生体認証が。
そして、薄暗い部屋の中心に、光線で書かれた神殿がある空島が空中に映し出されていた光景が。
映画やテレビで見る近未来だった。
「色々あるな」
尋常じゃない生産設備を見て、目を輝かせたり。
生産設備以外にもスキルやアイテムを使用する広大な実験場。
素材やアイテムを保管所。
家電が置かれていた倉庫。
たくさんの車とバイク、飛行機や船などが置かれた乗り物置き場。
最後に、
「ロマンだ」
解説付きで展示場を彷彿とさせる場所。
変形するロボット、空を飛ぶエアボード、スイッチで起動するビームサーベルなど、SFをゲームで再現したものがあり。
完全に運営の趣味を感じさせるものがゴロゴロしていた。
「MPが足りない。…でも下手に上げると」
レストは葛藤の末、今回は諦める。
さらに次は、自然エリアと呼ばれる場所へ着き、色々な所を回る。
草原と川がある場所。
森と海がある場所。
湿地と湖がある場所。
山脈と洞窟がある場所。
凍土と氷河がある場所。
熱帯と密林がある場所。
砂漠と荒野がある場所。
など様々な環境があった。
「まさか、神工房で死に戻りすると思ってなかった」
レストは雪原地帯で雪に埋もれて窒息で死に、溶岩地帯で全耐性超を過信して燃え死んだ。
そして、神殿の前で死に戻ってくる謎仕様。
「牧場、農園、果樹園、花園、養蜂場、養蚕場とかもあるのか」
それでレストはふと思った。
「草原とか薬草あったし、他の場所でも素材集めれるから、生産するにはこの上なく良い環境だけど。これ外に出る必要無くない」
自然エリアは栽培で植物、養蜂と養蚕で素材、従魔などのモンスターを育てる牧場があり。
さらに、森や草原などに自生する植物、洞窟内には鉱物、海や川には魚、果樹園や農園には木の実など、完全に素材の段階から作りに入った仕様となっている。
神殿内には快適な家があり、高レベルな生産設備があり、暇なとき遊べる施設あり、自給自足ができる場所があり。
完全に引きこもり製造機と化していた。
でも、レストはもう一つ脳裏に横切る。
「モンスターがいないから、レベル上げ出来ないか」
【万物の創造者】、神工房の設備はMPを使ってするものが多く、MPが足りない。
その他にも、モンスターから得るドロップアイテムもないので、今のままだと途中で詰むことは確実だ。
そもそもレベルを上げられないから、スキルも手に入らず、使えない設備が出てくるだろう。
「この設備使いたかったら、外でレベル上げる必要あるか。それに猫飼いたい」
そもそも、レストにはペットを愛でながらモノ作りをするという願望があった。
和風屋敷で猫を撫でながら過ごしと思ってしまった。
なら、育成系スキルの【使役術】を育てて、【テイム】で従魔を増やしていく必要もある。
【テイム】したあとはここの牧場や好みの環境がある場所で生活させ、自生するエサを食べ生活することができるので、テイマーには理想的な場所となっている。
さらに、育成系スキルの【栽培】や【養蜂】も出来るので、そっちもやってみたい欲に襲われる。
ちなみに、赤線を辿って来たので住居エリア、生産エリア、自然エリアも全部回りきれていない。
「ここの素材集めて、戦うためのアイテム作るか」
レストは強くなることを決め、最後の秘密エリアへ進んだ。
そこは一面真っ白な何も無い場所で、何をするのだろうと考えていると時間差でメニューが開く。
「……」
本日、レストは何度目か分からない絶句をする。
運営が反応を見るために仕掛けた時間差で出てきたメニューは、このエリアの説明が書かれていた。
「神工房が一番ヤバいスキルかもしれない」
ここの正式なエリアの名前は、メニューにカラフルでデカデカと書かれた“趣味エリア”とされる場所。
そして、
『一覧に載るインテリアや内装を設置し、雨や温度などの環境を変え、一つのエリアを自分好みにカスタマイズして自分だけの理想的な場所を作ろう』
と説明が書かれている。
インテリアは人形から家、ビルや戦闘機、山からクレーンゲームまで、探せば見つかるキリがないぐらい膨大な量あり。
自分で一からデザインすることも可能。
環境設定は快晴や星空、暴風に無重力まで様々な環境が用意されており。
強制レベル1やステータスオール1、開始条件と終了条件を決めたりして、ミニゲームも作れる。
運営の参考設定も用意され、遊園地、ゲームセンター、海底都市、魔王城、無重力体験、スキル体験などあり。
もはや運営も遊んでいるしか思えない、操縦して戦うロボット格闘ゲーム、宇宙を題材にした戦闘型レースゲーム、理不尽な弾幕を避ける回避ゲーム、トレジャーハンターになって謎解きする脱出ゲーム、ゾンビが徘徊する都市を脱出する銃器ゲームなど、異常にクオリティが高いのが揃っている。
他にも細かい設定があり、随時アップデートされる謎仕様。
「これ完全に別ゲーだろぉーー!!」
つまるところ、【神工房】は運営の遊び心がたっぷり詰まった、小さな世界を作ることができるスキルだった。
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全耐性Ⅹ→全耐性超へ変更しました。
すいません操作ミスで書き直しに戻しました。
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