第4話 闇を見た
レストは広場に死に戻りし、冒険者ギルドで薬草を納品してクエスト達成した後、
「はぁー」
ため息を吐きながら、街中を歩いていた。
理由は単純明快。弱いモンスターに負けて、精神的に来ているからだ。
ろくな準備もせずに焦って攻撃をして、モンスターの攻撃に対しては回避もしないで棒立ち。
そもそも、製品版はβテストと仕様が違った部分があることすら、意識してなかった。
(本当にダメダメだな)
VRゲームでは実際に動いて必要があり、咄嗟に攻撃や回避行動とる必要がある。
こればかりは経験してできるようになるしかないが。
(何か悔しいな…)
戦闘にはあんまり興味が無かったとはいえ、感じるものはある。
(幸い、素材はロストしなかったし)
手に持ってなくても剣などの装備したものや、使用してないアイテムや使っても耐久値アイテムは所有権が持ち主にあるので、死に戻りしてもその場からアイテムが消え、インベントリに残りアイテムはロストしない。
これはアイテムの譲渡以外で、アイテムを受け渡せないようにするための仕組み。
ちなみにFMGの死に戻りは、アイテムのロストなどはなく、ゲーム内時間で1時間はステータスが80%まで下がるデメリットが存在する。
さらに、最初に死んでから現実で24時間以内に死ぬと、デメリットが2時間で70%+デバフ1つ、3時間で60%+デバフ2つと増えていく仕様だ。
(負けたままは悔しいから、まずは金稼いで装備とか揃えないとな…)
レストは次こそは勝つと誓い、目的地へ早足で向かった。
◯
「登録が終了しました。他にご用件はありますか」
「初級ライフポーションに関するクエストの受注と調合部屋借られますか」
レストの目的地である、生産系プレイヤーが所属する職人ギルド。
職人ギルドは誰でも入れる冒険者ギルドと違い、生産系スキルとされる【鍛治】や【調合】を持っているのが加入条件のギルド。
加入することで、生産や素材集めに必要なアイテムを買ったり、生産場所を借りたり、生産系のクエストを受けることができる。
上位のランクに行くほど、買えるアイテムが増えていく。
買えるアイテムは、簡易調合セットなどの生産セット、素材、ピッケル、釣竿など多岐にわたる。
調合部屋とは職人ギルドに存在する金を払って借りれる生産場所の1つで。簡易生産セットで作るより高品質なものを作れ、モノ作りで消費するMPが徐々に回復し、部屋にある道具などは無限に使えるなど、モノ作りするには夢のような場所だ。
他にも鍛治場、大工小屋、料理室などもあり、ギルドのランクを上げることでよりグレードが高い部屋を借りれる。
簡易調合セットで作り出しそうなレストが、調合部屋を使うのは理由がある。
現在、レストが持つ素材ではポーション用のガラス瓶と水が足りず、初級ライフポーション作りが出来ない。
でも、調合部屋で作るなら水が無限に使え、完成時に自動でポーション用のガラス瓶へ入れてくれ、それを買うより安上がりになるからだ。
この仕様は、登録中にβ版と変わらないことは確認済みだったりする。
「この中からクエストをお選びください。一番下の調合部屋はレンタル可能です」
「……このクエストについて」
レストはクエスト受ける時に出る青いパネルが出て、その中に一つ面白いクエストを見つけた。
クエスト『初級ライフポーション大量生産』
内容:調合部屋で支給される素材を使い下級ライフポーションを作る。最低10本以上。
報酬:初級ライフポーションの品質と量により金額変動。
β版では存在しなかったクエストで、素材が支給される分と調合部屋の分、ポーション本来より値段が安くなり、10本作らないと出られないデメリットがある。
「このクエスト受けようと思います」
けど、素材を買ったり、取りに行かなくても良いメリットもあるからレストはこのクエストを受けた。
「このカギであちらの部屋に使用することと部屋へ入れます。1度でも部屋から出るとクエスト終了し、カギは無くなるのでご注意してください」
「分かりました」
「他に何かありますか」
レストは受付に幾つかの質問をした後、1度ログアウトして昼食とトイレを済ませてから、カギを使った。
部屋を開けて覗くと、四畳ぐらいの広さの場所で、蛇口付きの洗面台と壁側に机と椅子が存在し。
その机の上には調合する為の道具が置かれている。
ここまでは配信動画で見たまんまの姿だったが。
「山盛りだな……」
β版で無かった部屋の中心に置かれた籠、それに大量の薬草が載せてあり、レストはやる気が萎えそうな存在感に思わず顔が引きずる。
レストが気を持ち直して部屋へ入ると。
「失礼しまー」
失礼しまーすと言い終わる前に、がしゃんと音を立てて、独りでに扉が閉まる。
受付のNPCから言われた「クエストが終わるまで出れません」が脳内再生され、あの薬草全部使わない出られないと考えてしまったから。
「開けて!!」
レストはクエストを忘れ、本気で扉を開けようとしたのはしょうがないことだろう。
「なんか怖いんだけど!!」
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