第10話 出発、そして西へ
ティータは、リーナを追って北に向かうオリのために、大きな肩掛けバッグと、フェルトのコート、手袋にマフラー、ブーツ、それにブルーベリーマフィンを用意してくれました。
「オリ、リーナを助ける為に手伝ってくれて、本当にありがとう。あんたは勇気のある子だね。気を付けて行ってくるんだよ。」
そう言って、オリを抱きしめます。
オリはティータを抱きしめ返して、「わかった。」と答えました。
「シド、ディーン、北に向かう前に、西に向かってジャズとトーファーに会いに行っておいで。事情を話して、協力して欲しいって言うんだ。トーファーに乗せてもらえれば、オリの移動はぐんと楽になる。少しぐらい、ならず者がこちらに入ってきても構わないからと伝えておくれ。私とチャックが目を光らせておくからと。」
「そりゃ名案だ。確かに彼らがいれば、より安心して旅が出来る。そうしよう。」
乗せてもらう?とオリは少し不思議でした。トーファーと呼ばれた人は、とても力持ちなのでしょうか。
シドはティータの言葉に頷きましたが、ディーンはなんだか不満げでした。
「母さん、僕がいるのを忘れてない?そんなに心配なの?」
「ディーン、もちろんお前は頼りにしている。でも仲間は多い方に越したことはないさ。」
「ちぇっ。」
ディーンは、自分の活躍を取られるのが嫌なのでしょうか。
こんな時なのに、自分勝手だなぁと、オリは少し呆れてしまうのでした。
「それでは行こう。日暮れまでに、ジャズの所に着かなければ。」
「みんな、くれぐれも気を付けて。シド、ディーン、オリはこの世界に来たばかりなんだ。きちんと見てあげるんだよ。オリ、私はここで、帰りを待ってるからね。みんなで無事に、帰ってくるんだよ。」
「うん、行って来ます!」
「行って来まーす!」
オリとディーンは元気よく言って、軽やかに走るシドの後を追い、大きな木の下の赤い屋根の家を後にしたのでした。
芝生を超えて、林に入り、オリたちは細い獣道を進んで行きます。
息を切らしながら、オリはシドとディーンの後を追いかけました。
オリは、シドみたいに4本の足があるか、ディーンみたいな羽があれば良いのになぁ、と思ったのでした。
魔法の森のオリ 〜消えた妖精を探して〜 瀬道 一加 @IchikaSedou
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