第7話 二匹のヤギと夜の魔女

 

 オリはシドと一緒に、隣に住んでいるという、夜の魔女のところに行ってみることにしました。


 オリとシドは家を出ると、ぴょんぴょんと跳ねるように走る二匹の小さな犬の後を追いかけて行きます。


 芝生の庭を出て、森の中の小道を走りますが、オリは三匹の犬には追いつけません。


 シドたちは時折立ち止まって、オリが追い付くのを待ってくれました。


 ティータが隣なんて言うから、魔女の家はすぐ近くだと思っていたオリは、これは大変だと内心ため息をついたのでした。




 そうやってしばらく行くと、木の柵と、その向こうに青い屋根の家が見えてきました。


 柵の入り口に辿り着くと、オリは立ち止まって、息を整えながら周りを見渡しました。


 柵の内側の広い庭には、オリの肩ぐらいまでの高さの短い木が、綺麗に何列も並んでいます。


 木には、小さい青い実が沢山ついていました。




『べぇ〜〜〜。』


 と、可笑しな音がして、オリはびっくりしました。


「やぁ、コールにローズ。元気かい?夜の魔女に、占いをして欲しくて来たんだ。リーナが居なくなってしまったんだよ。」


『べぇ〜〜〜。』


 シドが話していたのは、二匹の小さなヤギでした。


 角のある少し大きい方は銀色で、角が無い小さい方は薄いオレンジ色でした。


 どちらも目の中の黒い部分が四角くて、ヤギを始めて近くで見たオリは、不思議で思わずじろじろとヤギたちを見てしまいました。


『べぇ〜〜〜。』


 と、ヤギたちはまた鳴いて、とことこと家の方に向かいます。


「コールとローズは、夜の魔女の相棒なのさ。おいで、オリ。魔女に合わせてくれるそうだ。」


 そう言ったシドの後を追いかけて、オリは広い庭を横切りました。




 銀色のヤギは扉に辿り着くと、後ろ足で立って、蹄でコツコツとドアを叩きます。


 暫くして扉が開くと、出てきたのは白いシャツの上に紺色のワンピースを着たお婆さんでした。


 灰色の長い髪を三つ編みにして垂らしていますが、オリが想像していた魔女とは随分違います。


 鼻は大きく曲がってもいないし、杖も持っていません。


 メガネをかけた顔はとても穏やかで、オリはいつも優しい学校の先生を思い出しました。




「どうしたんだい、コール。おや、そこにいるのはお隣に居候しているシドかね?」


「こんにちは、夜の魔女。その通りだよ。ここにいる、迷い込んでしまった人間の子供を助けるために、力を貸して欲しいんだ。」


「迷い込んだ?それは大変だ。どうぞ、中へお入り。」


 招かれて、オリとシドは魔女の家に入って行きました。




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