第8話 星空の占いとリーナの居場所
オリとシドを家に招き入れると、夜の魔女は二人をソファーに座らせて、ブルーベリーのジャムを入れた紅茶を振舞ってくれました。
庭に沢山なっていた実は、どうやらブルーベリーだったようです。
「それは大変だ。ティータには、火事を防いでもらった借りがある。喜んで占うよ。」
シドの説明を聞いて、夜の魔女はにっこり微笑みます。
オリは、ホッと溜息をつきました。
これで、リーナが何処にいるか分かって、無事におばさんの家に帰れます。
だけどもオリは、こっそりと、もっと魔法の森に居たいとも思っていました。
喋れる犬のシドやチャックや、エルフのティータやピート、その子供の妖精リーナとディーン、それに沢山いると言う他の動物のことも、もっと良く知りたいと思ったのです。
でも今は、オリは何より魔女の占いに興味深々でした。
ティータが言っていた、『面白いもの』とは一体何でしょう?
「それじゃ、早速占うとしよう。」
そう言って、夜の魔女はすい、と人差し指を振りました。
するとどうでしょう。
みるみるうちに周りが暗くなり、夜のようになりました。
そして真っ暗になった中に、キラキラといくつもの光の粒が見え始めました。
光は夜の星空のように、頭の上に沢山–––いいえ、横にも、後ろにも、足の下にも見えます。
オリとシドと夜の魔女は、まるで星の光る夜の空に浮いているようでした。
オリは下を見て、高いところから落ちた時の、お腹がひゅっと浮く感覚を覚えました。
しかし手で探れば、そこには確かにオリが座っているソファーが有ります。
オリはどきどきしながらソファーにしがみ付いて、辺りを見渡しました。
暗い中で目を凝らしてみれば、シドもソファーの上で身体を引くくしていました。
どうやらシドも、始めて夜の魔女の占いを見るようです。
「ほっほっほ。怖がらなくて良いんだよ。これは私の作り出した幻だからね。こうやって、星の動きを見て占うのさ。さて、いたずら者の妖精リーナは何処に居るかな?」
夜の魔女がまたすい、と人差し指を振ると、周りの星たちがひゅん、と移動しました。
「きゃあっ!!」
と、オリは思わず声を上げてしまいます。
まるで、自分が夜の空を飛んだような感覚だったのです。
オリはまた、お腹がひゅん、と浮いた感覚を覚えました。
地面が見えないというのは、何て心許ない感覚なのでしょう。
やがて星たちの動きが止まると、オリとシド、そして夜の魔女の丁度真ん中あたりに、いくつかの明るい星が光っていました。
小さい星がたくさん光る背景に、明るさの違うそれぞれの星が輝く様子は、とても綺麗で、オリは怖さも忘れて見惚れてしまいました。
「ふぅん……?うーん、これは……うーん、可笑しいねぇ……。」
夜の魔女は、その星に照らされた顔をしかめながら、うんうん唸っていました。
「どうしたの?」
我慢出来ずに、オリは夜の魔女に声をかけました。
その後もしばらく黙り込んでしまった夜の魔女は、たっぷり考えてからやっと口を開きます。
「大変なことになった。リーナはどうやら、拐われてしまったみたいだよ。」
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