第5話 夢渡りのエルフ
ディーンが双子の妖精の姉、リーナを探しに行っている間、ティータは窓際のカーペットの上で、この世界のことをオリに教えてくれました。
「魔法の森には、色々な生き物が住んでいるんだよ。熊やコヨーテや鹿、北に行けばドラゴンなんかもいるよ。」
「ドラゴン?火を噴くの?」
「北にいるのは氷のドラゴンだね。もっとも、私も自分で見たことは無いのだけれど。伝説の生き物だから、滅多な事では見れないのさ。」
「人間は居ないの?」
「人間は殆ど居ないねぇ。魔法使いは、数えるくらいいるけれど。たくさんいるのは私達のようなエルフや妖精さ。」
「犬や猫もたくさんいる?」
「いるよ。魔法使いやエルフは『相棒』に選ぶことが多いね。私のチャックみたいに。」
オリとシドと一緒に床に寝そべっていたチャックは、誇らしそうにティータを見上げて尻尾を振りました。
「私達エルフは、普段は村に住んでいるけれども、『相棒』を見つけた者は森を守るために独り立ちをするのさ。もっとも、私たちのように夫婦で住んでいるものもいるけれど。」
「夫婦?」
「そうさ。こちらへおいで。夫のピートを紹介するよ。」
ティータは、オリを家の奥へと案内しました。
奥にある扉をティータが開くと、薄暗い部屋の中、大きなベッドの上で、大きな何かが膨らんだり縮んだりしているのが見えました。
それから、酷く大きな音が響いています。
ティータが手をひらりと動かすと、ふわりと優しい光が壁にともりました。
オリは、膨らんだり縮んだりしていたのが、誰かのお腹だという事に気が付きました。
大きな音はいびきです。
ベッドの上に、誰かが眠っていたのでした。
「オリ、夫のピートだよ。ピートは『夢渡り』なんだ。」
「ゆめわたり?」
「そう。夢を渡って、迷える魂を見つけ、導きに行くのさ。困っている人に助言をしに行くんだよ。」
「ずっと眠ったままなの?」
「起きる事もあるけれど、殆ど寝ているね。それが彼の仕事だから。もっとも、私にはピートが休んでいるのか、夢を渡っているのかは分からないのだけど。」
そう言って、ティータは笑いました。
オリが背伸びをすると、ピートの大きな鼻と、真っ白な髭が見えました。
オリは、サンタクロースを思い出しました。
ピートは、お腹の大きさも長い髭も、サンタクロースにそっくりなのでした。
もっとも、彼は赤い服は着ていなかったのですけれども。
その時、部屋の中に何かが飛び込んできました。
「いない、いない!何処にもいないよ!!」
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