第4話 大きな木と双子の妖精
家の中に入って、オリはまた驚きました。
家の中には、大きな木が生えていたのです。
木の根があちらこちらに伸びており、部屋を仕切る壁になっていました。
木は屋根を突き破って、屋根の上に緑を茂らせていたのでした。
いいえ、きっと、木の周りに家を建てたのだろうと、オリは考えました。
「さぁ、こちらへおいで。」
ティータにそう言われて案内された先は、その大きな木の内側でした。
その一には大きなかまどがあり、火が燃えていました。
その周りにはテーブルとイスがあり、そのさらに周りを木の壁が囲んでいます。
上を見れば、ぽっかりと穴が空いており、そこからは丸く、青空が切り取られて見えました。
かまどから上がる煙を見て、オリは建物の中なのに、去年の夏に行ったキャンプを思い出しました。
「さぁ、召し上がれ。」
そう言って、ティータはテーブルについたオリに、パンプキンパイと紅茶を出してくれました。
クリームのついたパイは、オリが食べたどんなものより美味しいものでした。
「オリは、ハチドリに化けたリーナに連れてこられてしまったみたいなんだ。」
「全く、あの子は!庭の芝刈りをさぼって、きつく叱ったばかりだというのに!」
「きっと、それが原因でむしゃくしゃして、いたずらを考えたんだろう。オリは私のコテージに迷い込んで、可哀想に、私に吠えられてしまったんだよ。」
「そりゃあ怖かっただろうね。怒った時のお前さんときたら、狼もびっくりの形相だ!」
オリの隣のイスに座ったシドと話しながら、ティータは大きな声で笑いました。
ティータは、オリのほうを向いて言いました。
「オリ、突然こんな場所に迷い込んで、驚いただろうね。ここは魔法の森。あなたがいる世界とは、別の世界だよ。」
「別の世界?」
「そうだよ。こんな風に、別の世界の人間をここに連れて来てはいけないのに、あの子ときたら!」
「私は、お家に帰れるの?」
「もちろんさ!リーナなら、帰り道を知っているはずだからね。きちんと言って聞かせるから、心配しなくて良いんだよ!おおい、ディーン!」
ティータが大きな声で呼ぶと、しばらくして、何かがふらふらと木の内側に飛んで来ました。
「なんだよ母さん、僕は本を読んでいたのに!」
飛んで来たのは、小さな男の子の姿をした妖精でした。
オリが最初に見た、女の子の妖精にそっくりです。
身体よりも大きな本を抱えて、見るからに不機嫌そうでした。
「ディーン、ちゃんと挨拶をしなさい。お客さんだよ。オリ、ディーンはリーナの双子の弟なのさ。すぐにリーナを見つけてくれるよ。」
「ええっ、母さん嫌だよ!僕は本を読むんだ!」
「文句を言うんじゃないよ!リーナのいたずらのせいで、オリはここに迷い込んでしまったんだ。早くしないと、家に帰れなくなってしまう!いいから早く、リーナを探しておいで。」
「ああ!なんて面倒くさい!リーナのばか、ばか、おおばかやろう!」
文句を言いながら、ディーンと呼ばれた妖精はくるくる飛んで、木のてっぺんの穴から、外に出て行ってしまいました。
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