第8話 聴けなくなった音楽

 社会人になり、平日夜九時にラジオを聴くことが難しくなりました。

 店が終わるのが8時。そっから片付けしたりミーティングでまず9時に家に居ないことが多くなり、録音しても聴く時間が無くなってしまった、録音が数日分が溜まって聴くのが面倒くさくなった、その上まだ当時MDだったので、MDのカセットだけがぼこぼこ増殖……。



 アーーもう疲れちゃった!!


 という訳で、ラジオを聴かなくなってしまいました。



 が、最初のうちはまだ過去に録音したものを聴いたり、レンタルした昔のをずっと聴いていて平気だったのに、ある時突然「歌が入っている曲」を受け付けなくなってしまったんです。

 あれだけ好きだったくるりやブラフマンですら!これは自分でも驚きでした。もう歌詞覚えちゃったから何をやりながら聞こうと惑わされることなく心地よく聞けたのに……一体どうしちゃったんだろう。

 いろんなの聴きすぎて消化不良を起こしてしまったのか。それとも最近の音楽について行けない歳になったのか。それとも仕事のストレスなどで人の声を聞くことがヤになったのか……。



 そこでポッと再浮上したのが電気グルーヴのデジタルサウンド。その中の主にインストの曲。その辺から始まっていって、歌のある曲から少し遠ざかるようになります。さらに進んでインスト曲ばかりを集めたヒーリング音楽や、映画の音楽、BGM集など、曲がメインの方向に走り出します。

 人の声がなければ曲調はなんでもOKと、まるで地球の磁場が逆転したかのようなひっくり返りよう。不思議でなりません。

 あ、ただしエンヤ様は別。あの人の声やコーラスは神々しいので聞いてて心地よさ過ぎました。



 ある日ふっと大学時代、誰かの車に乗せてもらった時かかっていた曲を思い出します。確か「イニシャルD」の中で使われてたって言ってたな……

 作品知ってる方は察しがつくでしょうか。ユーロビートと呼ばれるジャンルの音楽です。

 当時ゼミの仲間内でも音楽の話をしていたことがあり「やる気が出なくてどうしょもないときは、ユーロビートとかテクノ爆音で聴いて無理やりやる気を出さす」という人が居ました。きっとそれに似たカンフル剤を探しているような状況に私もなっていたんでしょう。

 試しにレンタルしてみました。最初聴いた時は歌も声もあるし「ん????」でしたが、何かやりながら聴いているといつのまにか曲に乗って作業が進んでいるのです!。おー、これは確かになんか知らんけど無駄に元気が出るぢゃないか!

 億劫な出社の道中も無理やりアゲてくぜぇ!


 ……ということでユーロビートという名のカンフル剤は結構威力を発揮してくれました。また大学卒業後はMP3プレイヤーが主流に。データ残量さえあれば古いのを消す手間なくたーーーくさん入れられるし、小さいし軽いし便利。他の曲もいろいろと入っていましたが、ほぼ特定の4~5曲をリピートしまくってました。

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